第66話 空へ


 伝えることを全て話した圭は2人を連れて街を歩いた。

 遅めの朝食を露店で取ったあとは、ブラウン服店に顔を出した。

 いつものように600枚のパンツとブラを納品し金貨1枚をもらう。


 散歩がてら街の東の外れにある川に来た3人。

 川辺でのんびりと陽に当たる。

 日に日に秋も深くなり、いよいよ冬が迫ろうとしてた。

 それでも日中の日差しはポカポカと温かい。


「たまにはこういうのもいいねー。

最近あれこれと忙しくてのんびりできなかったからね。

思えばゆっくりできたのは牢屋の中くらいだよ」


「あはは、それはのんびりって言わないよブルーレット。

でもそのおかげで私はノームさんに会えて嬉しかったけど」


「あの人なんか変わってるよね、しゃべり方も上品だし」


「ノームさんて元は貴族の令嬢だったらしいよ、旦那さんと駆け落ちしたんだって」


「え? そうなの?」


「うん、違う国の貴族で、旦那さんはその屋敷に出入りしてた庭師だったみたい。

身分が違うからって親に反対されて、駆け落ちしてこの国に来たって言ってた」

 

「駆け落ちですかにゃ、ロマンですにゃー」


「そうだ、昨日の夜ね、新しくスキル覚えた、覚えたくないけど覚えた」


「スキルってまた変な魔法?」


「うん、今度もドギツイ変態魔法だ、正直話したくないくらい変態だ。

助けてくれ、俺、この魔法だけは使いたくない」


「で、どんな魔法なの」


「説明するのもしんどいけど、さらにそれを使う勇気が俺にはない」


「いいから早く教えてよ、気になるじゃん」


「魔法ですかにゃ、ご主人様の魔法は凄いですにゃ、見たいにゃ!」


「まず一つ目はね、パンツとブラのデザインが変わった」


 圭は手からパンツを何枚か出した。

 花柄、ストライプ、水玉、イチゴ柄、そしてレースの飾りが付いたパンツなど。

 そもそもパンツのデザインなんてリアルで見たことない。

 ボキャブラリーが乏しい圭にはあまり良いデザインが思いつかなかった。


「凄い! 凄いよこれ、かわいい!」


「いつものパンツと違うにゃ!」


 女の子2人は喜びながら、出されたパンツを手にとりまじまじと品定めする。


「このスキルはね、わりとまともなんだよ。ここまでは……。

そして2つ目のスキルはこれだ」


 圭は手から白いパンツを出し、それを大きくした。

 両手で広げた1m以上ある巨大パンツ。

「にゃー! 大きいですにゃー!


「なにこれ、意味不明すぎるんだけど」


「うん、俺も意味不明すぎて困ってる、こんなスキルいらないよね」


「なんていうか、変態にさらに磨きがかかった感じだね。

これ、どのぐらいまで大きくできるの?」


「わかんない、やってみるか」


 圭は巨大パンツをさらに大きくした。

 その大きさ、川辺に広げたれたパンツは10mくらいになった。


「キモイねこれ」


「キモイですにゃー」


「うん、俺も正直この場から逃げ出したいくらいキモイね」


「このパンツ、飛ばしたらさらにキモイよね」


「飛ばす? これを? 本気で言ってるのかリーゼ」


「言ってみただけ、冗談だから本気にしないでねブルーレット」


「飛ばす……。いや、まてよ……。

そうか! わかったぞこいつの意味が!」


「うにゃ? パンツが飛ぶんですかにゃ?

凄いですにゃ、乗ってみたいですにゃ!」


 圭の思い付きをいち早く理解したのはミミルだった。

 10mの巨大パンツの中央にミミルが陣取る。


 ためらいなく圭はそのパンツに使役の魔法をかけた。

 今、人類初のパンツによるフライトが始まろうとしていた。

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