第42話 オコなの? オコです


 翌日、朝食もそこそこに圭とリーゼは、ブラウン服店に来ていた。

 開店まではまだだいぶ時間があるので、店に客はいない。


「昨日はね、作って持ってくるって言ったんだけどさ。

よくよく考えてみたら、俺のスキルのこと話しちゃったんだよね。

だったら目の前で出しても同じだと思ってさ。

ここでパンツとブラ生成するよ」


「そうですか、出来立てホヤホヤを頂けるんですね」


「うん、それでね、一つ聞くんだけどさ、長さの単位って何が一般的?」


「長さですか、メートルだと思いますけど」


 やっぱりそうか、時間の単位が地球と同じだったから、どうかと思ったけど。

 この世界に創造主がいるとしたら、かなりのめんどくさがりなんだろうな。

 ある意味助かった。


「メートルだよね、センチメートルもわかる?」


「わかりますけど、それが何か重要なのですか?」


「うん、今からブラの規格について説明するから」


 圭はブラのサイズについて、細かくメリッサにレクチャーした。

 ブラの規格はカップ数とアンダーの組み合わせだと。

 カップ数とはアンダーとトップの差が10cmでAとし、2.5cm増えるごとにB→C→Dと上がって行く。

 例えばC70ならトップは70+10+2.5+2.5で85cmとなる。

 なんでこんな知識があるかというと。

 採寸のスキルを覚えたときに、頭の中に知識が流れ込んできたからだ。


「なるほど、わかりました、ややこしいですけど、カップとアンダーの組み合わせだけ品数が必要なのですね」


「うん、そういうことになる。

アンダーは多分だけど一番多いのが65・70・75の3種類。

カップはC・Dが多くて次にB・E、そして少数でAとF、G以上はめったにいない」


「そうですか、勉強になります!」


「とりあえす今考えたのはBからFまでの5種類を、各アンダー3種類ずつ、つまり15種類だね。

これを20枚ずつで計300枚用意してみるよ。

それでAの人用にはスポブラをサービスで100枚用意するよ。

これがそのスポブラね、ホックがないタイプのブラだ」


「これがその、スポブラと言うのですか? これも初めて見ますね。

簡単な作りと言いますか、これならうちの工房でも簡単に作れますよ」


「だろうね、胸の小さいリーゼが気に入ってるから、Aカップの人はそれがいいと思うよ。

それで色はどうする? 各種20枚ずつの計算だけどさ」


「色はパンツと同じで5色を各4枚、それの15種類で300枚、これでお願いします」


「わかった、さっそく作るよ」


 パンツの時と同じように15種類のブラを、白、赤、ピンク、青、グレーと4枚ずつ、手から出していく。

 ちゃんとサイズタグが付くように意識した。

 これだけ種類が多くなると、サイズがわからなくなるからだ。


「よし、これでブラ300枚完成!

あとはスポブラだな同じ5色20枚ずつでいい?」


「はい、それでお願いします」


 そしてスポブラMサイズ100枚と、さらにパンツ300枚。

 全部で700枚のパンツとブラを出した圭。


「あの、本当にこのスポブラはサービスで頂いてよろしいのですか?」


「ああ、お試しだ、売れるようなら次からは卸値で買ってもらうよ」


「ありがとうございます、それでは代金のほうですが。

600枚の大銅貨の半分なので、ちょうど金貨1枚です、お受け取りください」


「ああ、確かに、受け取った。

あと遊び心でもう一つ、服をプレゼントするよ」


 そう言うと圭はメリッサの手を取り、服生成のスキルと使った。


「なななななな! なんですかこれ!」


 メリッサに直接着せたのはMサイズのスチュワーデスだった。

 コスプレジャンルとしてはスチュワーデスと呼ばれているが、現代ではキャビンアテンダントと呼ぶのが普通だ。


「うん、なかなか似合ってる、それを仕事着にしてみたら?」


「むむむっ、これはなかなかの仕事ですね、このデザイン、今までにないものですよ!

こんな高級なの頂いてよろしいのですか! もう感動ですよ!」


「ああ、パンツ伝道師専用の服、ってことで、他人にあげちゃダメだよ。

予備でもう1着出しておくよ」


 今度は手からスチュワーデス服を出した。それと自動的に収納されたメリッサの仕事着も返す。


「大事にします! 家宝にしますっ!」


 感動しているメリッサを見ていると、わき腹をツンツンと突かれた。


「ねえ、ブルーレット、今の何?

私以外の、女の人に、すごく良さそうな服あげてたけど、どういうこと?

しかも手から出したよね、それも魔法なの? 

私そんな話聞いてないんだけど」


 なんかムスッっとしてご立腹のリーゼ。


「あ、いや、その、説明するの忘れてた!

ゴメン! 実は服も作れるようになったんだよ。

限られたデザインの服だけどね。

リーゼにもなにか服を出そうか?」


「うん、あれよりいい服出して、服を着せてもらうのは2番目だけど。

パンツとブラは一番目だったのに、服は2番目に着てあげる」


 うわー、めっちゃ笑顔だけど、目が笑ってないよリーゼさん。

 ぶっちゃけ怖いよ!


「あ、あの、リーゼ様、一旦宿に戻って着替えましょうか」


「どうして? ここで服着せてよ、何か問題でもあるの?」


「そうですよね、何も問題ないですよねリーゼ様」


 ダメだ、宿につれて帰ろうとしたけど却下された。

 ここでスチュワーデスより良い服を出せと、リーゼは言っている。

 お父さんの裁量が試されてる! 誰か助けて!


「わかったよ、それじゃとっておきの可愛い服だ」


 リーゼの手を握った圭は、服を生成した。

 ミニスカメイドだった。


「おおおおおおお! なんですかそのめっちゃ可愛い服はっ!」


 リーゼよりも先にメリッサが反応した。


「そうだろう。可愛いだろう、なにせリーゼだからな。可愛いに決まってる!」


 自分の姿を確認するリーゼ、フリルスカートの丈が短いのに気付いて戸惑う。


「ちょっとブルーレット、このスカート短くない?

なんかスースーするし、その、落ち着かないよ」


「それがいいんだ! 生足! 見えそうで見えないパンツ!

全てが完成された美なのだ!」


「わかる! わかりますよ! これはもう芸術ですよ!」


 バカ2人がそこにいた。


「とにかく、その格好で『ご主人様』って言ってみて!」


「え? ご主人様?」


「はうっ、萌える! 萌え殺される!

鼻血つゆだく味噌汁お新香付きだコンチクショー」


 朝っぱらからバカ2人に囲まれて、ひたすら可愛いと連呼されるリーゼ。

 嬉しいというよりは、意味不明なテンションについて行けず、戸惑いのほうが勝る。


「リーゼ、可愛いよリーゼハァハァ」


「これはもう、お持ち帰りしたいレベルですねハァハァ」


 その後、セーラー服、チアガール、巫女、体操服と着せ替え人形にされたリーゼ。

 不機嫌どころの騒ぎではなく、いつのまにかバカ2人のテンションが移り、バカ3人になっていた。


「ふう、楽しかった」


「なかなか、良いものを見せていただきました、眼福の極みです」


「いろんな服があるんだね、これ全部貰っていい?」


「ああ、全部リーゼにあげるよ」


 とりあえず、リーゼの機嫌が直って良かった。

 お父さん頑張ったよ!


 明日また来ると、挨拶もそこそこに店を出る圭とリーゼ。

 リーゼにあげた服を欲しいとメリッサにせがまれたが。

 あげてしまうとまたリーゼが不機嫌になるかもしれないから、丁重にお断りした。


「さてと、どうしようか。リーゼ、領主の屋敷って場所わかる?」


「うん、知ってるよ、行くの?」


「そうだな、今日は偵察に行くだけだ、場所も知りたいしね」


「わかった、少し歩くよ」


「オーケー、案内頼む」


「はい」


「ん?」


 リーゼは手を差し出した、意味がわからず圭は首をかしげる。


「手! 手繋いで!」


「ああ、手繋ぎたいのか、ほら、これでいいか?」


「うん」


 手を繋いだらニコニコ顔になったリーゼ、ちなみに服はセーラー冬服だ。

 秋も終わりに近付き、日中はまだ暖かいが、朝夕はだいぶ冷えてくる季節。

 出した服の中でリーゼが選んだのは、一番暖かそうな冬服だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る