第2話 プロローグ2

「前回のあらすじ。

殺人の罪を犯した奥田圭(25)は超絶ハイパーエクセレント美少女管理者シエルに竜飛岬の断崖絶壁へと追い込まれる。

『ふえぇぇえ、圭お兄ちゃん! 転生してにんげんさんの役にたってくださいですぅ~』と」


「ちょ、そこ! 話しを盛るな! そんな事実はねーよ! つかお前幼女じゃないだろっ!」


「いいツッコミですね、さすがこの私が見込んだ男です」


「てか超絶ハイパーエクセレント美少女って……」


「ゴホン、元気も出たところで転生の前に軽くレクチャーしておきましょう」


「超絶ハイパー……」


「なにか意見のある人は挙手してください、但し発言は認めません」


「そこはツッコんだらダメなのかっ!」


「さて、冗談はさておき、転生についてですが。

すでにご存知の通り、奥田圭さんは現在死んでいるので地球時代のことはすでに前世扱いになります。

その前世の罪、言い換えれば宿業を背負っての転生です、もうわかると思いますがルール上この転生で人間族になることはできません。

他族、つまりは魔族として転生してもらいます」


「魔族?その世界は魔族がいるの?」


「いますよ、ありきたりですがエルフやドワーフもいますし、女騎士にオークや女騎士に触手スライムの組み合わせも可能です」


「そんな偏った情報いらねーよ!」


「あと悪役令嬢はいないので安心してください」


「うん、そういう発言はやめてね、各方面に訴えられるから、わりとマジで」


「とりあえずですね、この世界で事を成そうとするとそれなりに力が必要になるんです。

人間は弱いから不便ですし、一番能力が高くて立ち回りの自由度がそこそこって存在になると魔族が適役なんですよ。

目には目を、歯には歯を、魔族から人間を守るには同じ能力の魔族、という等式です」


「今さらりと聞き流すところだったけど、その魔族が人間側を攻めてる状況ってことなの?」


「はい、1200年くらい前には勇者的な人間がいたのですが、魔族の長である魔王を討ち取ってから今までわりと平和だったんですよ。

ところが最近新しい魔王が魔族の台頭に立ったようで、魔族の動きが活発化する中、平和ボケした人間側に対抗できる手段がないのが実情です」


「なるほど、だいたいの状況は把握しました」


「本来なら超絶チートスキルを持って転生させたいところなのですが、各種族の能力の範疇を超えた存在を創るのは世界の理に反してしまいます。

なので私ができることは強い魔族としてあなたを転生させることぐらいなのです」


「そういう理由ならしかたないですね、魔族しか選択肢がないことに納得です」


「いいのですか? 魔族に転生ということは人間にとって一番の敵としての存在になるということですよ?

こちらの意思が通じなかったり、忌み嫌われる存在として扱われたりもするでしょう。

それでも人間を助けなければならない、それがどれだけの苦行かわかりますか?」


「それもひっくるめての罪滅ぼしって言いたいんですよね、罪に対する罰だと」


「驚きました、そこまで理解しているんですね。

では過酷な世界に行く前にひとつ、罰としての呪いを付与します」


「呪い?」


「挫折し自らの命を絶とうとしても、宿業を断ち切るまで死ぬことができない呪いです」


「死ねないってのは呪いになるのか? ご都合主義のチートスキルじゃないの?」


「捕らえ方は人それぞれですが、不死というのは体験して初めてわかる恐ろしい呪いです。

それに奥田圭さんは一度『死ぬ』という経験を持っています。

全てを諦めて死んでまたここに来て転生する、という選択肢があるとそれに甘えてしまうかもしれません。

場合によっては『生きる』ことより『死ぬ』ことのほうが楽なこともあるんです。

だからそういう逃げを排するための呪いなのです」


「そういうもんなのか、俺にはよくわからん」


「それともうひとつ、この世界には固有スキルがあります、経験値的なポイントを使用して取得可能です。

魔力を使用する魔法系スキルから身体能力系のスキルまで様々です。

また同じ種族でも個人の素質によって取得できるスキルは千差万別です。

システム的なものは実生活のなかで理解してください。

さらに付け加えると奥田圭さんのスキルは宿業を影響を受けたものになります」


「それはつまり罰としての要素が入った厄介なスキルってことか?」


「ありていに言えばそうなりますね、取得してからのお楽しみです。

まあ、手を加えるのは私なんですが」


「なにそれ、不安しかないんだが……」


「奥田圭さんの場合は魔族などを倒した経験値と人間側に対する善行がポイントとして取得されます。

人間のために何かをする、その度合いによってポイントが加算されます。

そして取得ポイントの累計によって魂のランクが罪人からいいほうに上がります。

ブルー。イエロー。グリーン。レッド。パープル。シルバー。ゴールド。プラチナ。

この8段階です、プラチナまで上り詰めたら罪業消滅となります。

プラチナ目指して頑張ってください。


あと最後にこれだけは守って下さいってルールです。

人間を殺すのはご法度です、もし殺したらポイントがごっそり減ります。

持ち点がながったらマイナスになったりもしますのでご注意を」


 なんかゲームっぽいシステムだな、だけどある程度の自由度は高そうだし、魔法やスキルというのは正直ワクワクする、というか若干の憧れがないと言えば嘘になる。

 魔法や剣のファンタジー世界、マンガや小説の中だけだと思ってたけど、実際あるところにはあるんだな。

 だが今の自分が浮かれていい立場などではないと理性が重くのしかかる、そう、俺は一人の少女の命を奪った。

 本来許されることのないその罪を償うために俺は行かなければならないんだ。


「あ、ひとつ聞きたいんだけど、殺さずルールはエルフやドワーフといった者にも適用されるのか?」


「ええと言い方が足りませんでしたね、魔族以外の知的生命種族全部、と思ってください」


「えーとそれはつまり、人間に敵対する種族がいたとした場合、それは敵って認識でいいの?それとも殺しちゃダメなの?」


「線引きが難しいので単純なルールでいきます。

例えばですが、人間の中にも万死に値する極悪人はいますよね、でも殺したらダメです。

更正させるかそれがダメなら隔離するか、対処法はいくらでもあります、つまりはそういうことです」


 なるほど、なるほど。基本的には人間側に立つけどケースバイケースで対応すると。

 難しいかもしれないな、今話しに出た通り人間の中にも殺人鬼や極悪人はいる。

 そんなのから人間を殺さずに救うのも目的に含まれるってことか。


「どんな世界かは行ってみないとわからないけど、状況によってはかなり厳しい縛りになりそうだな」


「さて、以上でだいたいの説明は終わりです。

ここまでの話しを踏まえて、奥田圭さん、本当に異世界に行きますか? YES OR NO」


「YESで」


「わかりました、それと細かい指示やヒントはそのつど必要に応じて手紙を出します。

それでは御武運を」



 その瞬間、奥田圭の意識はブラックアウトした。

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