第02話 はじめての下校デート ②
放課後、と言っても入学式の日はさすがに新入生は昼には下校でき、敦と安眞木は学園を後にし、隣町へと来た。
「で、どうすんの」
先ほどの会話が恥ずかしかったのか、隣町まで敦とは、話そうとはしなかったがさすがに我慢できなくなったのか、安眞木は口を開いた。
「どうすんのって、どこか行きたいとこはないのか?」
「あんた、バカ? こういうのは男子がリードするべきでしょ」
安眞木は呆れながら敦の胸を人差し指で突く。
「いや、だって俺はデートなんて初めてだしよ」
それもそのはず、敦は彼女が出来た事はない。だがそれは安眞木も同じことであった。
「まあ、でも私も初めてだし誘ったのは私だからね」
「とりあえ――」
どこかよさそうな場所がないか携帯で調べようとした時、急に安眞木に手を引かれ路地裏に連れていかれる。
(何だよ、急に……てか、この体制)
急な事で敦が驚くのも無理はない。路地裏に引っ張られたかと思えば両手で顔を覆われ彼女の胸に抱かれる形で安眞木は路地裏に隠れたのだ。
ほどよく鼻孔をくすぐる甘い匂いに、女性特有の胸の膨らみ、そして彼女の胸は鼓動で高鳴っている。だが、その胸の高鳴りはこの体制からではなく、先ほど路地裏に引っ張られる寸前に俺は二人がデートしている所を見てしまっていた。だから、安眞木のこの胸の高鳴りは、まだ黒河を諦めきれていないのだろう。
「むがっむがががが」
「……! 変態!」
安眞木は顔を耳まで真っ赤にし、胸を押さえながら敦をビンタする。
「へぶっ!」
なんとまあ、理不尽なビンタ。でもまあ、おいしい所はゲットしている。
「あ、ごめん。私の所為なのに」
「なに、気にするなよ。あ、そうだゲーセンいかねーか」
「…………」
「どうした? 嫌いか? ゲーセン、あそこなら楽しめるしぬいぐるみも取れるぞ」
「ねえ、何で敦はそこまで私に優しくできるの?」
理由、そんなの考えてなかった。ただ、一つ言えるとするならば。
「私ってばわがままだよね、さっきも一人で勝手に敦を巻き込んで、ビンタして、酷い女って思うよね」
また、泣きそうになる安眞木。
「また、泣きそうになってるぞ。安眞木、お前が黒河を諦めきれにように俺も黒崎を諦めきれないんだ。だけど、俺が挫ける前に挫ける安眞木を見てしまう、俺は、そんな安眞木は見たくないからどうせなら楽しもうかなって」
黒崎に手が届きそうとは思ったことはないけど、夢を見たいとは思った。だけど、結局それは叶わなくなってしまった。今は目の前に同じ境遇の
学園を出る前に言われた言葉が頭からも胸から刺さりすぎて離れない。
『私の心を溶かしていってよ』、全く忘れられないセリフになりそうだ。
それからは敦と安眞木はゲームセンターに行き、レーシングゲームや格闘ゲーム、音楽ゲーム等を一頻り《ひとしき》遊びまわった。
「ね! 次アレやろうよ」
安眞木が敦を引っ張りながらやってきたのは、デートで一番といっていい程、定番のプリントシール機ではなく、その横に隣接しているクレーンゲーム機だった。
「なになに、敦期待しちゃった?」
「まあな」
赤くなるで顔で安眞木を見れなくなり、他を向きながら頭を掻く。
「そ、そっか」
それを見た安眞木も伝染したらしく赤面した。
「あ、あのさ。大事にするからコレとってよ」
安眞木がクレーンゲーム機の正面にたった所にはクレーンゲーム機の中でも安い値段では取れないような機種だった。
「お前、これって」
「うん、ネックレス。大事にするからさ、お願い」
こんな安物でもいいのだろうかと思ってしまうが安眞木にとっては大事な事かもしれない。腹を括ろう。
(何とかもってくれよ、俺の諭吉ィィィ!!)
クレーンゲーム機を開始して二時間、ようやくネックレスが取れた。
(よかった、あと残り千円が二枚だ)
「やったぁ、ねえ付けていい?」
取れた瞬間、安眞木は飛び跳ねるように喜んでいる。
「ね、どう?」
「うん、似合ってる」
「えへへ、そうでしょう」
本当に似合っている、ネックレス一つでこんなにも変わるなんて凄いや。
「最後に撮っていこうよ」
安眞木が指をさしたのは、先ほどスルーしたプリントシール機だった。
「お互い、初デート記念って事でどうでしょうか」
「筒がましくその恩恵頂戴いたします」
「あはは、何よその口調。それじゃあいこ」
プリントシール機に入ってすぐお金入れようと敦は財布を取り出した瞬間、安眞木が咄嗟にお金を投入した。敦が出すつもりでいたが『今日のお礼』という事で安眞木がお金をだした。
それからといもの安眞木がデートプランを選んだ為、恋人繋ぎやハグの写真を撮らされ、最終的にはキスが出たが流石にそこまでは出来なかった。
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