第6話 盗賊街での夜
『盗賊街』と呼ばれるこの街は北部にある四合院造り(※1)の邸宅を中心拠点として、全体が盗賊団の住居となっていた。仕事を終えた盗賊達は各々自宅に戻り、誰かの夫として、恋人として、父として、兄弟としての時間を過ごすらしい。
逢春は中心拠点たる邸宅の西廂房(※2)に住居を与えられた。この邸宅の東廂房(※3)には子墨が住んでおり、子墨の女になったことを悟った逢春は夜、裸体に羽織1枚で自身の寝床に横たわり子墨の訪れを待ったが、いつまで待っても子墨は来なかった。
来いと言いたいのか。そう察した逢春が東廂房に行くと、戸の向こうから吐息混じりの弱々しいイビキが聞こえてきたので逢春は拍子抜けし、踵を返して草木の植えられた広い院子(※4)の中を漂うように歩き回った。それから西廂房の前にある長椅子に腰掛けた時、心臓の異様な高鳴りと吐き気を感じたことで、自分が緊張していたことに気づいた。
少し風に当たって落ち着こう。逢春は履物を脱ぎ、草木の香り漂う空気を胸いっぱいに吸った。
※1 四合院…中国の建築様式。中庭を中央に設け、その東西南北に1棟ずつ建物を配置している。
※2 西廂房…建物西側に設けられた住居。
※3 東廂房…建物東側に設けられた住居。
※4院子…中庭。
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