第5話 恨む

盗賊団の拠点がある街へと向かう最中、逢春は男の口から驚くべきことを知らされた。


逢春を連れ出した男は盗賊団の頭領だった。この若い頭領は名を子墨といい、老若の隔て無しに全ての仲間からその名で呼ばれ親しまれ、そして慕われていた。


また、子墨は州の長官に何らかのツテがあるらしく、逢春の村への襲撃は前々からタルチネの慣習を「先人の言葉を悪用した奇習」と捉えていた長官からの指示で行われたと話した。

あくまで合法的に逢春の生まれ故郷は焼かれ、逢春の家族や見知った人々は肉塊に変えられ、逢春は汗と精液の臭いに満ちた部屋から脱出する機会を与えられたのだ。


「悪いが、恨まれてもこちらが正義なんでな」


逢春の頭をクシャクシャと撫でながら子墨が言う。

逢春はされるがままになりながら、何故「恨む」という言葉を使われたのか理解できなかった。

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