第4話 タルチネの終わり
逢春がタルチネに選ばれて3年と半分程が経ったある夜更け、突然にして彼女の生活に終わりが訪れた。村に盗賊の集団が乗り込んできたのだ。
家々にかけられた火から熱風が吹き荒びあちらこちらから悲鳴が上がる中、小屋に乗り込んできた男─右半面が痣で赤黒く染まった若い男は布団の上で呆然と突っ立っている逢春を見るなり「タルチネとかいう奴か」と悪辣そうな笑みを浮かべ、身動き1つ取らない彼女の身体を抱き上げて小屋の外へと出た。
久し振りの外界は血生臭く騒がしかったが、それより星も見えぬほど暗い夜空を火の粉が舞う様にこの上ない美しさを覚え、逢春は夢中で空を見上げた。
盗賊団は破壊と奪取の限りを尽くした後、米や金品など数多の戦利品を抱え、屍の山と化した村を出た。逢春は自分を小屋から連れ出した男の戦利品として扱われ、男を背にする形で馬に乗せられた。
盗賊団の拠点へと向かう間、逢春は男から「あんな小せえ村じゃ馬なんぞそうそう見らんじゃろ」だの「怯えんでいい、良くしちゃるけん」だの声をかけられたが、彼女は自分の両脇から伸び手綱を握る男の骨張った手を、何を思うわけでもなくぼんやりと見つめるのみだった。
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