リアル桃太郎

 いつからこんな暗い世界を見るようになったんだ。

 財宝を鬼が盗むところを村人は見ていない。

不自然に殺され、苦しめられた犬、猿、雉。

おばあさんの血の気の入った日本刀。

僕が生まれた時おばあさんとおじいさんは泣いていた。あの涙は美しくなかった。そうだ、

なぜ、桃から出てきたのが鬼である僕なんだという涙だ。僕は鬼だった。人より成長が早い。そして、あの島に見覚えがあった。

       “何が正答?"

「おかえり、桃太郎。」おばあさんとおじいさんは偽物の笑顔をこちらへ向ける。

「どうして、どうしてなんだ?おばあさん、おじいさん。なぜあんなことをしたんだ?」

「何を言ってるんだい、桃太郎。」

「財宝を盗んだのも、鬼を無惨に殺したのも、犬、猿、雉を苦しめたのも、全部、全部、、、、、、」

村人達が僕の元に駆け寄り、僕を英雄だと称える。鬼退治をし、村人達の財宝を奪って帰ってきたと。だめだ、だめ。こんな醜い話でも幸せに思ってしまう、人に認められ、英雄になることが。



これが桃太郎の隠した全ての"嘘"。

     ずっと生きる意味を探していた。



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