リアル桃太郎

 おばあさんとおじいさんはその赤ちゃんを桃太郎と名づけ、大切に育てた。


 身体の成長が早い。それが身に染みてわかる。他の人とはまるで身体が違う。まだ少年の僕は青年になろうとしていた。

したいことが見つけられないまま、毎日長い夜を超えていく。自分が誰かわからなくなって、毎日広い海を眺めてる。僕は15になった。

何の目的もないまま生きながらえてきた。ずっと何かを探している。

     「僕は誰なんだ?」

そんな時に外国から帰ってきた人が高らかに言う。「この暗い影の海を超えた先に鬼ヶ島という島がある。そこはまさしく鬼の住む地獄だ」

血が騒ぐという言葉の意味がよくわかった。 

僕は何のために生きてたきたのかまだわからないけど、それでも鬼は昔から人間の悪役だ。

そう考えると自然と拳に力が入った。

「おじいさん、おばあさん。僕は鬼退治に行ってくるよ」

「夢を探してこい。桃太郎。」      「行ってくるよ、おじいさん、おばあさん。」

幸せになりたかった。ただ、それだけ。

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