リアル桃太郎〜鬼ヶ島の戦い編〜

ヤグーツク・ゴセ

リアル桃太郎

  

   ずっと生きる理由を探している。

 

 昔、昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいた。毎日、おじいさんは深緑が侵食した暗い山に芝刈りに、おばあさんは青く透き通った川に洗濯に行く。

  


 重い湿った声が聞こえる。

「覚醒せよ。お前が全てを変えるんだ。目覚めろ。」


 ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると上流地域から

ドンブラコッコ、スッコッコ

ドンブラコッコ、スッコッコと大きな淡くて濁りかかった翳りを持つ桃が流れてきた。

「これはこれは何かを秘めている桃じゃの。おじいさんに見てもらおうかの」


 おじいさんは古い傷の入った背中にしばを背負って帰ってきた。すぐにその桃を見て、

「これは何かを秘めているの。」

おばあさんはおじいさんの同意の元、血の気の入った日本刀でザッと桃を切った。すると、中から出てきたのは、まさしくただの赤ちゃんのようであった。何かを秘めているのは勘違いであったか。でも、何故か涙が出てくる。これはどうしたことかの。


 初めて見たおばあさんとおじいさんはなぜか泣いていた。僕を見て泣いていた。なぜ僕は生まれてきたんだ。壊される。

生まれ堕ちていく。ずっと身体の中で声がしている。崩される。生まれ朽ちていく。

「お前は孤高の英雄となるのだ。」

 

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