第3話

学校でも、先生が銀の犬には注意しろと授業の前に言われた。

みんな、その話で持ちきりだった。

かずが、「俺見たんだ、山の上に大きな犬が走って行ったところ。」

「こわ〜い。」

「家のおとうも見たけど、早くて追いつかなかったって…」

俺はみんなが話しているのを、目をつぶって聞いていた。

朝の約束を思い出しながら…


学校が終わりみんなと別れて、約束の場所についた時。

(乗れ、背中に乗るんだ)

(うん)

俺は、言われるがままその背中にまたがり、首の毛を掴んで、覆いかぶさるようにするか、しないか、もう、空を飛んでいた。

いや、飛んでいるように見えるだけで、こいつは、走っているだけ?

たぶん、皆には見えない速さだろう、あっという間に、山の裏の断崖絶壁の真ん中あたりの鍾乳洞の入り口でおろされた。

「ここは?まるで別世界だな。」

「そうだ、まだ人間には知られていない、私達は、ずっと前からこの鍾乳洞に住んでいる、海底の中に繋がっている、仲間の中には泳げるものもいる。陸と海で過ごしているが、最近海が人間たちに荒らされすぎて、色々調べている所なのだ。」

「俺は、あおい。なんと呼べばいい?」

「皆には、ブーど呼ばれている。この国の王の息子だ。」

「ブーは、何か知りたいの?」

「人間達が、何をしようとしてるかを探っている。昔も1度何箇所か原子力発電所をこちら側に作り出し、その地域に住んでいる我々の仲間が殺されている。」

「えっ、人間に?殺されてる?」

「そうだ、人間は知らないが、色々な形で我々の住んでいる場所で、開発を勧め勝手に、工事をして海底の岩を崩したり、液体を流したり。住めないようになってしまう。」

「これ以上、これからの開発が進むなら、人間達と戦争をしなくてはないと思っている。」

「そんなの、駄目だよ。」

「だから、あおいの助けが必要なんだ。」

「俺が何をできる?どうすればいいの?」

「私達の仲間になって欲しい、そして、人間と海犬(かいけん)の間を繋いでほしいのだ。」

「俺が?いいけど、俺で出来るかわからないよ。まだ、子供だし。頭もそんなに良くない。

「あはは、それは、あおいが決めることじゃない、君は選ばれた、必ずやってくれるし、我々と話せるのは、数少ないのだ。」

「そうなの?あっ、だからあの時妹たちには聞こえなかったんだ…」

「そうだ、普通の人間は、獣の鳴き声にしか聞こえない。あおいは、特別なんだ。」

「俺って、凄いんだね。あはは、でもどうしてだろ。」

「綺麗な心を持っている。ただ、それだけだ。」

「いや〜、そうか俺嘘つけないんだよね〜。それかな?」

「そうだ、それだ。」ブーは、微笑んだようにして、鍾乳洞の奥に歩き始めた。

「待ってよ〜、そういえば母ちゃんたち心配するかも。」

「大丈夫、分身を行かせてあるから。」

「ひや〜、本当に?どんな技?凄いんだね、ブーの家族もいるの?子供は?」

あおいは、ブーに海犬の質問を弾丸のように浴びせた。





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