トトカルチョ

「ねぇ、何でサッカースタジアムに連れてこられなきゃ行けないんですか。」

 エリカが不満そうに口にする。全く意味がわからない。

「何処でも着いてくると言ったじゃないか。」

「いや、私たちは逃げていたでしょ。あれ、私の勘違い?」

 実際のところ、宿舎を命からがら逃げ出した。マダムは仕事を忠実にこなしていた。銃声を聞いたマダムは、ケツ持ちのマフィアに連絡し、すぐに応援が駆けつけて来た。それをリボルバーで牽制しつつ逃げていたのが、だいたい1時間前の事だ。

「いいや、合っているよ。ただそれはサッカーを見逃す理由にはならないさ。」

「だから、どういう意図か、説明を。」

「はぁ?サッカーを見るのに理由はいらないだろ。あえて言えば、今日この時間にキックオフの笛が鳴るからだ。それ以上の理由はない。」

「まさか、考え無しにサッカースタジアムに来たと。そう言いたいのですか。正気ですか。」

「不満そうな顔をするな。休憩がてら軍資金を稼ごう。それに社会勉強にもなる。」

 俺はエリカの手を引きスタジアムへと入った。もう1つの手の中のサッカーくじを強く握りしめた。


 When you walk through a storm

 Hold your head up high

 And don't be afraid of the dark


 スタジアムに入ると人々が歌っていた。


 At the end of the storm

 Is a golden sky

 And the sweet silver song of a lark


 俺も一緒に口ずさむ。


 Walk on through the wind

 Walk on through the rain

 Though your dreams be tossed and blown


「ねえ!ちょっとは説明してよ。何なのこれ。」


 Walk on walk on

 With hope in your heart

 And you'll never walk alone


「お前も唄ってみろよ。ユルネバは良い唄だからさ。」


 You'll never walk alone


 Walk on walk on


 With hope in your heart


 And you'll never walk alone


 You’ll never walk alone


 キックオフの笛がなった。試合結果については触れないでおこう。そこは重要ではないからだ。負け惜しみでは、ない。

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