第3話 来年への小さな期待 -身体測定-
いつの間にか寝ていたようで、外を見るともう暗くなっていた。
しかも結構、汗をかいていたので、下へ降りてお風呂に入ることにした。
俺の家は、2階建てで、1階は主にリビングやお風呂、そして2階には、両親の部屋2つと俺の部屋、そして空き部屋がひとつある。
俺は基本、お風呂は長湯はしないでサッとシャワーだけ浴びて出るので、今日も8分ほどで出た。
その後、作り置きしてある晩御飯を食べるため、温める。
今日はカレーのようだ。
両親は共働きで、2人とも帰ってくるのは21時を過ぎることがほとんどだ。
休日はみんなで食べるのだが、平日は基本的には作り置きしてあるものをひとりで食べている。
そして俺は、晩御飯を食べ終わったら自分の皿を洗って、さっさと部屋に篭ってしまうので、平日は全員が揃うことはあまりない。
今日もいつも通り、誰もいないリビングでひとりカレーを頬張る。
しっかりと噛みながら、やっぱり我が家のカレーは他のどのカレーよりも美味しいな、と思った。
翌日、いつも通り7時のアラームで目を覚まし1階へと降りる。
ちょうど降りたところで「あら、セイちゃんおはよう。もう朝ごはんできてるから、顔洗って食べちゃいなさい。お母さん先行くわね」と母さんが靴を履きながら言う。
俺は「わかった。いってらっしゃい」と母さんを見送って洗面所で顔を洗い、寝癖を直してリビングに向かう。
父さんはもう出たようで、俺ひとりだ。
テーブルを見ると、卵焼きにソーセージ、納豆と味噌汁が置いてあった。
最近は、納豆は臭いから嫌だと同級生の間では人気がないみたいだが、我が家では毎朝食べる。
美味しいんだけどな。
食べ終わり、再び時計を見ると8時になっていた。
俺の高校は登校時間が9時と、少し遅めなので家を出るのも少し遅い。
また、学校までは大体徒歩で20~30分だから、8時15分くらいに出るとちょうどいい時間に着く。
俺はもう一度自室に戻り着替えと準備をして、今日も予定通りに家を出た。
人がまだほとんどいない静かな道を風に当たりながら歩く。
外はもうすっかり暖かくなり、春だなと改めて思う。
歩いているとスマホがメールを知らせる。
誰かと確認すれば、貴大だった。
開くと、『朝練終わった。今日ついに身体測定だな、伸びてるかな』とかいてあった。
そういえば、木曜日以外の平日はバスケ部の朝練があると言っていたことを思い出し、『お疲れ。どうだろうな。お前はスポーツしてるし、まだ伸びそうだよな。』とだけ返した。
俺は、もちろん伸びてたらとは思うが、何もしてないからあまり期待はしていない。
ただ、琴葉に追い越されることだけはごめんだ。
またいじられる。
歩いているうちに人が増えてきて、いよいよ学校に着いた。
そして教室に入るなり、「おはよう青磁!今日一緒に回ろうぜ!しきも一緒にいいよな!」と貴大が少しテンション高めに挨拶をしてきた。
しきとは、
ラノベが好きだそうで、話しやすいので、貴大と3人で一緒によく連む。
本人は自分の名前が女の子ぽくてあまり好きじゃないというので、もじってしきと呼ばれている。
あだ名は本人的には気に入っているようだ。
そして、回るというのは、この高校の身体測定は、カードを持ちながら検査項目ごとに分かれている教室に行くというやり方なので、仲の良い子と回ることが多い。
順番などは特になく、全部受けさえすれば、どこから、誰と回っても問題いないそうだ。
あれこれ話しているうちに時間になったので、ぼちぼち回りはじめた。
身長が1番気になるところだが、多分これが1番混雑するだろうということで、3人で話し合い、歯科や聴覚など空いているところから回ることにした。
そして狙い通り、最後に行った身長・体重は並ばずにやることができた。
ひとりずつ測り、3人が全員測り終わったとこで、「せーの!」という貴大の掛け声でカードを見せ合った。
結果。
貴大、181.4cm
しき、174.5cm
そして俺は…169.7cmとなった。
まぁ期待はしていなかったが、いざ数字を目にするとなかなか凹む。
しかもこの3人の中では最小だ。
「まぁ、こんなの誤差だろ!ちゃんと測れば170絶対超えてるよ!多分!」
多分なのか絶対なのかどっちなんだい。
確かに、身体測定は姿勢やその人の測り方でわずかでも違いが出る。
少数単位ならなおさらだ。
それでも、この数字だけでいえば、170を超えていないのは事実なのだ。
やっぱり凹む。
少し体を動かすべきか、などと考えながら今年の身体測定は終了したのだった。
この後、琴葉と帰ることになったのだが、結果を伝えたらいじられたのは言うまでもない。
それどころか、琴葉も伸びて、気付けばもうすぐ並びそうなくらいの身長差となっていた。
「…来年に期待だ」
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