第4話 気づかぬ本心
今年も順調に過ごしていき、あっという間に5月になった。
ここまでは順調だったのだが、ここにきて第一難関、学生の醍醐味ともいえるイベントがある。
そう、文化祭でも体育祭でもなく、、、。
中間考査だ。
俺はもともと勉強はそんなに得意ではない。
学年でたぶん中の下くらい。
だから大体こういう時期は琴葉に勉強を手伝ってもらったりしていたのだが、今年はクラスの友達とやるらしく少し参っている。
そこへ、後ろから「ちょいちょい、俺のことをお忘れでは?」と貴大が声をかけてきた。
貴大は確かに成績は学年243人中、大体50位くらいには入っていたと思う。
是非とも教わりたいところなのだが、貴大は高身長、スペックもいい、故にまぁまぁ人気なわけで、漫画のようなモテっぷりではないが、男女ともに人気があり、なんとなく誘いを受けづらいのだ。
まぁでも、せっかく誘ってくれているんだし、断る理由もないので、「わかった、いいよ」と返事をした。
すると、「それじゃ、俺の家でやらない?図書館だとしゃべれないし、飲食禁止だし、わからないところも聞きづらいし」と提案してきた。
確かに、図書館は静かで集中しやすいが、わからないところを聞こうにも、声を出せば響いてしまうため、不便さも感じていた。
貴大の家は、俺の家より少し離れてはいるが、「俺は構わない」と答えた。
俺は、「でも、毎日お邪魔していいの?」と聞く。
その問いに「まぁ、いいよ。ただし、お菓子とかは持って来てな」と貴大はグッドポーズをする。
そして放課後、約束通り貴大の家で勉強会をすることになった。
ただ、2人というわけではなく、あのあと、しきも誘って3人でやることになった。
まぁ大抵、勉強会というと、なんやかんや話に夢中になって、勉強に身が入らなくなるということになりがちだが、予想に反して集中できた。
貴大は思っていたより教えるのがうまくて、とてもスムーズに理解することができた。
将来先生になった方が良いのではないだろうか。
イケメンでわかりやすいとか、もう無敵教師だ。
それに、しきも何気にと言ったら失礼かもしれないが、頭がよく、俺が一番教えられていた。
勉強を始めたのが大体17時頃、気づけば時計は19時を回っていた。
勉強もいいところで終わったので、やっぱり雑談タイムになった。
話を切り出したのは、貴大だった。
「なぁ、何度も聞くんだけどさぁ、ほんとに琴葉とは幼馴染み以上の関係になることはないのかぁ?」
またその手の質問かと思いつつ、「だからぁ、そんなことはないって」と返す。
何か美味しい話を聞き出そうとしているのか、何かと質問攻めをしてくる。
その都度否定していると、「じゃ、じゃあ僕が狙っても、いいんだね?」という声が部屋に響いた。
それを言ったのは、なんとしきだった。
少しの間、部屋が沈黙に包まれた。
そしてその沈黙を破ったのも「実は、前から気になってはいたんだ」というしきの言葉だった。
「前に、二人と櫻井さんの3人でいるところを見てから、一目惚れだった。青磁さえ良ければ、機会をくれないかな」という。
「今まで、青磁と櫻井さんはそういう仲なのかと思って諦めるつもりだったけど、そうじゃないならいいよね?」
「ちょ、お前それは、、、」と貴大が何か言おうとしていたが、「わかった」と俺は返事をした。
なんだか少し強い口調になった気がしたが、「ただ、あいつが無理と言ったら無理だからな」とも。
貴大は、なんだか腑に落ちないような表情をしていたが、「もう知らないぞ」とだけ小声で言われ、この日は解散となった。
帰り道、しきの言葉を思い返していた。
その度に、なんとも言えない気分になる。
嫉妬?いや、あくまで琴葉は幼馴染であり、嫉妬するとしても、それは多分幼馴染として。
——妹を嫁に出す兄のような感覚なのだと、この頃の俺は思っていた。だがこれが後々、全員の関係性が大きく変わってしまう要因になるのであった——
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