第7話 存在意義

 玉座の父から剣を抜き、床へ下ろした。

 それから、城の広場から続いていた――兵士の墓地へと埋めた。


 姉と、その婚約者らしき相手も、隣に埋めさせてもらった。その二人を運ぶ時、広場で他に手を繋いだ人間を探したが、他には誰もそんな人間は居なかった。


 王様とその家族も、その近くの、少しだけ丘になった場所に埋葬した。丸太を組んだだけの、簡単な十字架に、あの王族の証である『鈴の紋章』を掛けた。王様はその首飾りを二つ付けていたので、勝手だとは分かっていたが、それを拝借して父の墓にも掛けさせてもらった。姉のほうも、王様の家族が身に付けていたいくつかある内の指輪を二つを借りて、互いの薬指に納めた。


 最後に墓を作り終えたのは王家のもので、それを作り終えたところで日没を迎えた。本当は、夜通しでも町のほうにいる皆――僕の家族とあの侍従らの墓も作りたかったが、既に、肉体的よりも精神的に疲労が困憊していた。


 たった数時間にして、身内が全て亡くなったこと。

 父から受け継いだ誇り、それを認めてくれる者が居なくなったこと。


 そして、僕が殺した――あの男の言葉がこびりついていた。


 墓を作ったこと、首飾りを掛けたこと、指輪をはめたこと、それらの全てがまるで『今、生きている自分を保つための理由』に感じてならなかった。知らず知らず内に僕は姉の復讐を果たし、それを後に知ったものの、それを知った時に得たものは、塵と芥のような小さな汚れた“満たされ“と果てのない“虚無“だった。


 こんなことして、何が残る······。


 奪うことでしか『生きている』と感じられなかった奴の言う通り、僕の心には、が――孤独と共に棲み着いていた。

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