第19話 第三の事件! やつはマフィアの幹部
◾尚子
私たちはエレベーターで最上階へ向かう。チーンという音がなってドアが開いた。
エレベーターを降りた正面には大きな扉が邪悪な雰囲気をまとって立っていた。
しかしそれよりも先に目に飛び込んできたのは、
「伊藤……ッ!」
血だらけの伊藤の亡骸だった。
手には抵抗した際に使用したと思われるリボルバー式拳銃が握られている。
口を抑えて後ずさっていくハートの背中をさすってやり私は無言で伊藤のリボルバーを手に取った。
シリンダーには残り2発が残されている。
私はそれを制服の内ポケットに収納し、
「開けるぞ」
「……うん」
「はい」
扉を押し開けた。
そこは何もない大きな広間で奥には白革のイスに腰をかけた中肉中背のグラサン男が葉巻を咥えて座っていた。
私は中にズカズカと入っていって、
「貴様か? うちの伊藤を
男は口いっぱいに葉巻の煙を吸い込んでそれを鼻からゆっくり全部吐き出してから、
「伊藤? 誰だそいつ。ああ、あのカッパみてーな
そう言いながら部下に灰皿を持ってこさせ葉巻を灰皿の上に置く。
「それなら俺が始末した」
「なぜだ」
「なぜ……? それはお前をおびき出すために決まっているだろう。この裏切り者」
男は立ち上がってネクタイを直す。
「貴様……組織の人間だな?」
「ああその通りだ。クリスのアホの引き継ぎでお前を殺す任務をたまわっている。あとついでにクリスも殺すがな」
男がそう言うと、その背後から、銀の短髪と瞳が印象的な幼くも美しいガイストの少女が現れた。
男に対して私は、
「山中はどこだ?」
「もう1人のやつか? そいつは殺さずに向こうの部屋で眠らせている」
「そうか」
少しホッとした。しかしすぐに眉間にしわを寄せ。
「テメェー、覚悟はできてんだろうなァ? その糞を積み上げたみてェな髪型を崩される覚悟をよォ?」
ハートが周りに複数の火炎弾を形成していく。
「ほほう。少しは面白いこと言うじゃねーか」
男のガイストは周囲に小さな竜巻を複数配置する。
「やれホワイト!」
男の指示でガイスト――ホワイトはハートが放った火炎弾を小さな竜巻により打ち消した。
「もっとだ! もっとたくさん撃て!」
「やってるってば!」
ハートは次々と火炎弾をつくって発射するがホワイトの風でそれらは全て揉み消されてしまう。なるほど畜生! 相性が最悪だ。
「弱い弱い。暇過ぎて、一服ができるほどだ」
男は余裕そうに今度はタバコを取り出しライターで火をつけた。アホめ。
「私たちの前で火を使うのはやめておいた方がいい」
ハートはガイスト能力でライターオイルを気化させ巨大な炎を形成し男に直接攻撃を仕掛ける。
男はすぐにライターを投げ捨て、
「ただ煽るためにこんなことをしたわけではない。お前のハートの能力は炎を操る能力か。ホワイトとの相性は最高だな。やはり大したことはない」
と言った。
私はフッと鼻で笑い、
「違うね」
と。
「ハズレか……それはすこし残念だ」
男はホワイトを自らの近くに抱き寄せ銀の髪の毛を撫でながら、
「1つ教えてやろう。とても簡単で猿でもわかるようなことだ。人は怒ったときに弱くなる。常に冷静でいることが大事なんだ。俺もボスの下について長いが部下が死んだらそりゃあ悲しい。泣き叫びたくなるくらいな。だがそこで腹を立ててはいけないんだ。常に冷静に……冷静にだ」
男は私に同情するかのような物言いで挑発してくる。
「冷静でいられるかよッ! ハートッ! あれでいくぞ!」
「あれだね? わかった!」
ハートはポシェットの別のポケットから、黒い粉の入った円筒型のケースを取り出しその蓋を開ける。
だが、
「っ!?」
ハートの背中から急に血が噴き出した。ハートは怯んでケースを床に落としてしまう。
ホワイトがハートの背後で小さな竜巻を発生させそれを圧縮したものを背中に発射してきたのだ。なるほど
「おお! なんて清々しい気分なんだ。俺は丁度ストレスが溜まっていた。そう主にお前とクリスのせいでね。だが今こうやって戦ってまるでサンドバッグを相手にしているようで、いいストレス発散になっているよ。いやしかしサンドバッグというのは間違いかな? なぜなら君たちは殴りすぎると死んでしまう、サンドバッグ以下のゴミクズなのだからなァ!」
「このクソ野郎ォ! ぶっ殺すッ!」
私は激昴した。私のかわいいハートを傷つけやがって。
「女のくせに汚い言葉を使いやがって。人に殺すって言うのはそいつの心が弱いことを示す何よりの証拠だ」
男がそう言うと、ホワイトは私とハートの周りにいくつかの竜巻を作って、それを圧縮した。
それを見てハートは、ポシェットの中から黒い粉の入ったケースを取り出し、蓋を開けて中身を周りにばら撒いた。
ハートは強化爆薬を一気に爆発され爆風で鎌鼬を消滅させる。
続いてホワイトは巨大な竜巻を作り出す。男はそれに何かを投げ入れ、ホワイトは竜巻を私とハートに向かって一直線に飛ばしてかた。
「パチンコ玉だ。当たれば痛いでは済まないぞ」
竜巻の進行速度は速くはないので避けられないものではない。
私たちは円を描くようにして回避すると竜巻は追尾してきた。ホワイトはさらに新たな竜巻を次々と放ってくる。
そして私とハートは竜巻に周囲を囲われてしまった。
To be continued!⇒
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