第18話 第三の事件! いざ新宿歌舞伎町

◾隆臣


 翌日の昼前。

 今後の組織による襲撃に備えて、俺たちは警視庁を通して魔法関連専門の警察機関である魔法管理機関――通称MMOに出動要請を出した。

 一度警視庁を通してからでないとMMOは動かないしMMO内での手続きや準備もあるからすぐには出動してくれないだろうが、MMOが動くとなると非常に心強いのは確かだ。


◾尚子


 私は学園高等部の生徒会長であるためゴールデンウィーク前半は生徒会の業務で日程が埋まっている。

 周りに注意を払いながら登校したが特出するような出来事は何もなかった。

 手早く仕事を済ませ同級生から遊びに誘われたが適当に断って早々と帰路に着いた。

 秋葉原駅に着いてハートと自宅方向に歩いていると、



「お嬢ォオオ!」


「ん?」



 前方から原田が走ってきた。



「どうした原田」


「?」



 ハートも首をかしげる。真紅の髪の毛がふわっと揺れる。



「お嬢、ハートちゃん! 大変なんです! 落ち着いて聞いてください」


「まずはお前が落ち着け」



 原田は大きく深呼吸して、



伊藤いとうが……伊藤がッ!」


「伊藤がどうした? またクソでも漏らしたのか?」



 冗談めかしく言った私に、しかし原田は真剣に、



「……殺されたんすよ!」



 と、叫んだ。



「何言ってんだお前? 私たちはお前の冗談に付き合っていられるほど暇じゃないんだ。お前だってわかっているだろう」



 私はハートの手を引いて再び歩き出した。



「冗談じゃないんです! さっき山中から電話があって変なガイスト使いに襲われて伊藤が殺されたって報告を受けました。伊藤と山中は武器商人と交渉するために新宿に行ってましたから、もしかしたら山中ももうすでに……ッ!」



 原田は決して冗談を言っているようには思えないし山中がそんな不謹慎な嘘をつく男ではないと私は知っている。



「行くぞ、新宿に」


「ほんとっすか!?」


「ああ。これ以上身の回りのやつに死なれるのは迷惑なんだよ」



 私はハートの小さな手をぎゅっと握ってしまった。



「……」



 ハートも無言で強く手を握り返してくれた。温もりが心地よい。


◾尚子


 秋葉原駅に引き返しちょうど帰宅ラッシュの時間帯だったので、ハートには霊魂化して体の中に戻ってもらい私は原田と共に中央線で新宿へ向かった。

 そして伊藤と山中が訪れたと思われる一番街に到着する。

 ネオンが煌々と輝く不夜城を思わせる一番街を歩いていくと原田は立ち止まって、



「住所ではこのビルのはずです」



 そこはかなり大きな雑居ビルだった。



「行くぞ!」


「うん!」



 ハートは私の背後から出てきて、元気よく返事した。

 3人でビルの中に入ると、



「んだてめーら?」


「あんコラ?」



 ビルの1階に2人の男がだらしない格好で酒を煽っていた。



「このビルがなんだか知ってて入って来てんのかぁぁぁあああああん?」



 男の1人がそう言って私の肩を掴んでくる。酒くせェなこのくそジジィ。



「お前らなんてこの俺様にかかれば……ぐへぇぇえええ」



 ――パパンッ!



 乾いた音と共に2人の太ももから血が噴き出した。



「い、いでェェエエエ!」


「ああああああ! 血ッ! 血だぁああ!」



 原田の右手には拳銃が握られている。



「姉貴とハートちゃんに触れるやつは何者だろうと容赦はしない!」



 私は2人の男に近づいてしゃがみ、



「幹部はどこだ? 答えろ」


「幹部? 何のことやら……?」



 男は目を泳がせた。



「シラ切ってんじゃねーッ!」


「じゃねーぞっ?」



 私は叫びハートも便乗して炎の玉で脅してくれる。



「お、お前……ガイスト使いか!? お前の後ろにいるそいつはガイストだな!? それなら俺らは知らねー! 本当だ! 信じてくれ!」



 私は立ち上がった。



「知らない? どういうことだ? じゃあなんで貴様らはこんなところにいるんだ? 貴様らは幹部の部下じゃあねーのか?」


「ち、違う! 俺たちはただここに住まわせてもらっているだけなんだよぉ!」



 男は必死こいた様子で言った。



「そうか、わかった。貴様らにはもう用はない。行こう」



 そう言って2人の男に背を向けた瞬間、



「なーんてなぁ! テメェーはバカか!? 俺たちは敵だァ!」



 2人組は拳銃を取り出して私とハートに発砲してきた。

 だが、私はため息をついて、



「はぁ。素直に口を割れば痛い目に合わなかったものを、貴様らはバカを通り越して……ザコだな」



 飛んできた銃弾はハートの能力によって融解され続く小さな爆発によりあらぬ方向に飛んでいった。



「あ、当たってない!?」


「バカなッ!」



 男たちは狼狽している。



「もう1発もらいてーのかァ? それとも爆死してーか?」



 私はドスの効いた声で言ってみる。



「わ、わかったよ! 教えるよ! 今すぐ教えるから! 命だけは!」


「ここの最上階だ! そこだ! そこにいる!」



 男達は簡単に幹部の居場所を吐いた。



「そうか。ありがとう。教えてくれた礼に命だけは助けてやる。命だけはな」



 ――パンッ! パンッ! パンッ!



 私が頷くと、原田は再び男たちに向けて何度も発砲した。



 To be continued!⇒

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る