第5話 事件の予感! 意外なやつが
◾隆臣
三鷹和也さんは警視庁や魔法関連の特殊警察機関であるMMO(魔法管理機関)で毎年魔法マテリアルの講習を行っているので警視庁やMMOには顔が効く。
警視庁やMMOが今朝地下の調査を行い危険がないことが証明されたので、和也さん同伴のもと俺たちは翌日の放課後に神田明神の地下へやって来た。
そこで俺たちは目を疑った。
「どうしたんだい?」
和也さんが尋ねてくる。
「このお墓……荒らされているんです!」
凛が答えた通り、目の前にある十字架はきのう見たものとはまるで印象が異なっていた。
印象が変わっただけで十字架自体に変化はなく、その周りを美しく彩っていた花々や装飾品が今や見る影もない状態になっていたのだ。
焦げた装飾品やカスになった花々から考えるに燃やされたのだろう。
すると、
「この空間に
文字通り目の色を変えたエースがそのように分析して俺たちに教えてくれた。
エースの第九感は視覚の進化ではなく厳密に言えば脳の機能の進化で、思考をいくつかに分割しそれぞれに高速演算をさせることができるのだ。スーパーコンピューターみたいなもんだな。
分割高速演算思考の応用性は非常に高く、今回のように空気中の魔力粒子やそれを構成する素粒子をも視認することもできる。
エースは続けて、
「残滓粒子の濃度がかなり薄くなってるから犯行時刻はおそらくきのうの夜中くらいだね」
と言って髪の毛を耳にかけた。ちくしょう! エースはこの仕草をよくやるけどやっぱりかわいいぜ!
このままエースや凛、ジョーカーの一挙一動を観察してかわいい仕草を新たに見つけたいが、そんなわけにもいかない。
魔力粒子は
また残滓粒子とは、魔法やガイスト能力の行使などにより消費された魔力源由来の魔力粒子が変化したもので、文字通り残りカスになったものだ。
ちなみにガイスト自体は故人の
そしてエースは自身の第九感――分割高速演算を利用して残滓粒子から固有の体内由来の魔力粒子を割り出し、それに該当する人物を特定することができる。
「なるほどな。つまりはきのうの深夜、ここにガイストが来て墓を荒らしていったってわけか。墓石自体は結界で守られていて無事みたいだが」
俺は今のエースの話を端的にまとめてあげる。
エースは俺ににこっと笑ってきた。ありがとうってことだ。
さらに分析を続けていたエースは今度は目を大きく見開いて驚愕の表情を浮かべた。
「うそっ! そんなっ! こんなことが!」
「ありえない! あの人がこんなことをするなんて!」
「おい、大丈夫か?」
俺はエースの肩をおさえて落ち着かせようとする。
「やばいんだよ隆臣! やばすぎるの!」
「まずは落ち着け。それから話せ」
100mを全力ダッシュしたあとのように息を切らせるエースは、なんとか大きく深呼吸をして昂った気持ちを落ち着ける。
「あのねみんな、驚かないで聞いて欲しいの。今からわたしが言うことは信じられないかもしれないけど、わたしもとても信じられない。いや、わたしたちだけじゃない。きっとこんなこと誰も信じないと思う」
エースは少しの間を開けて続ける。
「犯人はね……東京魔術学園高等部生徒会長の
『…………』
エースの言葉は沈黙を生んだ。
それもそのはずだ。豊園尚子といえば人当たりがよく学業優秀かつ運動神経抜群で理事長の
そんな尚子がこんなことをすると信じる人がいるだろうか? いない。
以前にエースが学園内の人物を第九感を使って調査した結果、魔術学園だけあって、やはりたくさんのガイスト使い及びガイストがおり、尚子もガイスト使いということがわかっていた。
しかし、まさかあの豊園尚子が、何が目的かはわからないが他人の墓を荒らようなことをするとは失望よりも驚きの方が断然強い。
その話を聞いていた和也さんは、
「それは本当なのかい? エース」
と、静かに尋ねた。
「わたしの第九感は絶対記憶もできる。一度覚えた残滓粒子の素粒子配列は絶対に忘れないよ。だから間違いなくこれをやった犯人が豊園尚子だって断言できる」
エースの言葉を疑う余地はない。だってエースの分割高速演算に狂いはないから。
「あの野郎がこんなことするなんて考えられねぇ。でもエース、俺はお前を心から信頼している。お前を信じるぜ」
「わたしも隆臣と同意見です」
「わたしもよ」
凛とジョーカーも俺に賛成の意を示してくれた。
「うむ」
和也さんも頷き、
「エースの言うことは確信的だろう。でも今一度、万が一のことも考えて本人に確認して欲しい」
と。
俺、エース、凛、ジョーカーは和也さんの提案に賛成し、明日豊園尚子に会いに行くことになった。
To be continued!⇒
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