第6話 第一の事件! いざ生徒会室へ

◾隆臣



 俺たちは魔術学園の制服に身を包み、品川駅から上野駅までの区間を山手線で行き、上野駅からは少し歩いていつもどおり学園に登校した。



「じゃあ放課後、高等部の噴水の前にで待ち合わせな」


「はい、わかりました」


「りょーかーい」


「おっけー」



 俺の言葉に凛、エース、ジョーカーは頷いた。

 短い会話を終えて俺は高等部の校舎の中に入った。



「おっはー品川君」



 玄関で声をかけてきたのは、



「おお、石沼か」



 同じクラスの石沼いしぬまかなで。茶髪ショートがよく似合う美人な女子生徒だ。



「珍しいね、こんなに朝早く」


「まあな。5、6本はやく乗ったから。てかその包帯……怪我したのか?」


「あ、これ? ちょっと火傷やけどしちゃってさ、ははは」



 奏はそう言って笑った。



「そっか、お大事にな。あ、1つ聞きたいんだけど、石沼って豊園尚子と仲良かったよな?」


「うん、初等部の頃からずっと同じクラスだからね。それで尚子がどうかしたの?」


「べつに大したことじゃないんだけど、あいつ最近様子が変だったりしてなかったか? なんか隠し事してる……みたいな」



 すると奏は急にニヤニヤし出した。そしてからかうように、



「うーん、特に心当たりはないかなぁ。ねぇねぇもしかして、尚子に惚れたの?」


「んなんわけあるかッ!」



 食い気味で全力否定する。奏はそんな俺にやわらかくほほえんで手を振りながら、



「んじゃまた教室で! ……おっ! アンナ、おっはー!」



 と。

 そしてクラスメイトの赤毛長髪の女子生徒に元気よく挨拶して、そのまま教室の方に消えていってしまった。

 俺は今まであまり尚子のことは気に止めていなかったが、クラスでの様子に特におかしいところはなかったような気がする。

 今日はよーく観察して不振な点を見つけなければな。


◾凛



「みなさまごきげんよう」



 わたし、ジョーカー、エースの3人に挨拶してきたのは同じクラスの十六夜いざよい七海ななみちゃんです。

 黒髪の一部と瞳が金色なのが印象的でとってもかわいらしい容姿をしています。

 その隣には、いつもモジモジしている七海ちゃんの双子の妹の四谷よつやちゃんもいます。四谷ちゃんは髪の毛の一部と瞳が銀色になっています。

 この2人はわたしの親友なんですっ!



「おはようございます。七海ちゃん、四谷ちゃん」


「おはよ!」


「おはよー」



 わたしに続いてエースとジョーカーもあいさつをしました。



「ところで今日は並々ならぬ表情をしていますことよ? 何かおありでして?」



 七海ちゃんはそう尋ねてきます。



「べつに。大したことはじゃないわよ」


「ほら曇ってるし、テンション上がらないだけよ」


「うんうん」



 七海ちゃんはとってもお節介焼きです。そして第九感ではありませんが

 たしかに今日は尚子さんのことで気持ちがそぞろですが、表情に出ていたなんて。



「ふーん」



 とわたしたちの顔を一瞥して、



「その気持ちとてもよくわかりますわよ。天気が悪いと気分が滅入りますわよね」



 と頷きながら言う。



「それじゃあ私は日直なんで」



 エースはわたしとジョーカーの手を引いて歩き出しました。



「そうですわね。わたくしたちもこれから風紀委員の仕事がありますから。ではまた教室で」



 七海ちゃんは笑顔で言って四谷ちゃんと一緒にわたしたちとは逆方向に歩いていきます。



「ふぅ、悟られなくてよかったね」


「そうだね」


「まったく……サザエさんとスピードワゴンもびっくりなお節介焼きだわ」



 エース、わたし、ジョーカーは口々に言いながら職員室の方に向かいました。




 放課後になりました。

 わたしたちは隆臣と待ち合わせた高等部の噴水に中等部を通り抜けてやってきました。

 普通、同じ学園内でも初等部の生徒が高等部へ来ることは滅多にないので、好奇的な視線が集まっています。



「おい見ろよ、初等部のやつらが来たぜ?」


「誰かの妹か?」


「けっこうかわええやん」


矢田やだが喜びそうだな」


「矢田ってあの8組の?」


「そうそう。あの四皇・ガチロリコンの」



 なんて会話も聞こえてきます。



「うう、やっぱり高等部は怖いよぅ」



 わたしは肩をすぼめながら高等部の中庭を歩きます。



「大丈夫よ、凛。あなたには指一本触れさせないから」


「私も守ってあげるからねっ」



 そんなわたしをジョーカーとエースは励ましてくれました。

 実際、ジョーカーやエースが能力を使って一般人と戦ったら大怪我を負わせることは間違いありません(とはいえここは魔術学園なので相手も能力持ちなことが多いので、お互いに怪我することは免れません)。

 そのためガイストや上級感覚覚醒者、魔法使いが能力や魔術を不必要に使用することは国の法律や世界の条約により制限されていています。校則ではそれよりもさらに厳しく禁止されています。

 なので、そう容易にドンパチが起きることはないし、もしそうなったとしても月級ムーンの魔術師である鬼瓦おにがわら先生や陽級ソレイユの上級感覚覚醒者の鬼塚おにづか先生に関係者が全員しばかれるだけです。



「うん、2人ともありがと。でも学園内で能力は使ったらダメだよ。鬼が出るからね」



 そんなこんなで隆臣よりもはやく噴水前に到着しました。

 噴水の真ん中には、学園の誰もがそれが何者なのか知らないヨーロッパ系の美少女の石像が立っています。



「2人は知ってた? この学園にある3つの噴水の女の子の石像はみんな違う人なんだよ」


「知らなかったけど、それがどうしたの?」



 と、ジョーカー。



「特になんでもないんけど、初等部にある像はジョーカーに似てるなって思ったの」


「そうかしら? わたしあんな顔してる? そしたらあんたにも似てるってことよ?」


「たしかにけっこう似てるかも」



 そう呟いたエースにわたしは、



「中等部にある像はエースに似てると思うの」



「え? そうかな?」



 エースは小首を傾げた。ポニーテールが振り子のように揺れます。かわいいです。



「うん。ちょっとだけね」



 そんな会話をしばらくしていると、



「悪い、遅くなった」



 隆臣が走って噴水前までやって来ました。



「いえいえ、気にしないでください。わたしたちも今来たんです」



 わたしはにっこり笑って答えます。



「それじゃあ生徒会室に行こう」



 わたしたちは隆臣の言葉で生徒会室のある高等部部室棟へ歩き出しました。



 To be continued!⇒

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