第4話 事件の予感! 地下空間
◾隆臣
外周を見て回っていた俺とエースは中央の方に戻った。
「ここが異常な空間ってこと以外、特に何もわからなかったよ。そっちはどうだった?」
エースはほっぺに指を当てながら凛とジョーカーに尋ねた。かわいい
仕草だなあ。
「えっと、この十字架の裏に文字が彫られているのを発見しました」
凛の報告で俺たちは十字架の裏に回り込んで彫られた文字を見た。
「なんて書かれてんだ? これもドイツ語か?」
「読めないんですか?」
凛は小首を傾げた。それにともない白銀のツインテールがゆったりと揺れている。
「読めるわけないよね。俺生粋の日本人だもん。英語すらままならない日本人だもん」
「おかしいわね」
ジョーカーは空中で足を組みあごに手を当てて言った。
「逆に2人は読めるのか?」
「わたしもドイツ語は読めません。でもわかります」
「は?」
意味がわからん。何を言ってるんだ凛は。
「そのままの意味です。文字は読めないけど意味はわかるんです」
「頭でも打ったか?」
「打ってませんっ! むぅ〜」
凛はほっぺたをぷくーっとフグみたいに膨らませた。
本気で心配したのに怒られちゃったよ。
「とにかく読み上げますね。ここには『背中を押せ。そこからすべてが始まる』と書かれています」
「うん、意味わからん」
俺とエースは頭上にクエスチョンマークを浮かべる。
「残念ながらわたしたちも真意はわかりません。でも墓石の裏にこんなことを刻むなんて罰当たり、イタズラではやらないでしょう。きっと何か意味があるのかもしれません」
「ふーん」
俺は凛の話を聞きながらおもむろに墓石に触れようとした。
しかし瞬間、
「ッ!?」
体が突然後方に吹っ飛んで壁に叩きつけられた。
「隆臣!?」
『っ!?』
エース、凛、ジョーカーが驚いて声を上げた。
「急に吹っ飛ばされた!? 大丈夫!?」
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
エースと凛が俺の体を支えながら声をかけてくれた。ちびっ子2人に支えられるなんて……情けないぜ。
「背中を強く打ち付けただけで特に外傷はなさそうだ」
「ならよかったわ。けど、一体何が起こったの? わたしや凛が触れたときには何も起こらなかったのに」
ジョーカーは浮遊しながら考える人の体勢でさらに深く考え始めた。
「私はどうかな?」
と言ってエースが墓石に触れようとした瞬間、エースもこちらに吹っ飛んで来た。
なんとかエースを受け止める。エースが軽かったので俺も無事で済んだ。
「怖かったよぉ〜っ!」
俺にぴったり密着するようにエースは涙目で俺の胸に抱きついてきた。
エースの頭をやさしくなでなでしてあげる。
エースはぎゅーっと俺を抱きしめて離さない。まるでコアラの赤ちゃんのように。
「大丈夫だエース。俺が守るから」
「うんっ……ごめんね隆臣」
エースは腕で涙を拭ってにっこり笑った。
よかった。元の調子に戻った。
「にしても奇妙だな。ジョーカーと凛は大丈夫だったのに、どうして俺たちは吹っ飛ばされたんだ?」
本当に謎が深すぎる。
「エースの第九感なら何かわかるかもしれないわ」
ジョーカーはエースに提案した。
「わかった。やってみるね」
エースが頷くと夜空色の瞳が美しい空色に変わった。
ガイスト能力や魔術とは別にもう1つ特殊な力がある。それは五感が進化した上級感覚というものである。第六感は直感、第七感は憑依、第八感は同化、第九感は超感覚(超能力)となっており、エースは第九感を所有している。
「っ!? こ、これは……っ!」
「どうしたエース」
俺の問いかけにエースは額に汗を浮かべながら、
「あの十字架の周りだけおかしいんだよ! こんなの見たことない! 魔力粒子の密度と量が尋常じゃない。それなのに魔力流が発生しているわけでもない。これは一体……」
魔力粒子とは、魔術を行使したりガイストが能力を発動するときに必要なもので、空気中の分子のように小さくて肉眼では見えない。
魔力粒子は普通、魔力濃度の濃いところから薄いところへ粒子が移動して魔力流を生み出す。
あの墓石の周りは魔力濃度が高いらしいが、この空間には魔力流が一切発生していないのは奇妙すぎる。
「やっぱりとんでもない魔術が起動していたのね。戻ってこのことを和也に報告しましょう。そして明日、和也ともう一度ここに来て、詳しい調査をするべきだわ」
ジョーカーの提案に全員が賛成し、今日の調査はこれにて終了した。
To be continued!⇒
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