第47話敵軍師(ヘッドコーチ)荒れます

練習試合に来た地方騎士団の軍師ヘッドコーチが怒鳴っている。

同じ言語をしゃべるから作戦は丸聞こえだなと信治は思っている。

なんにせよ、エクスとUJIZANEに頼りきりのチームには、勝ち目は無いだろうと信治は思う。

「これ、郭図かくとよ。戦術が丸聞こえであろう。お主が落ち着くのじゃ」

「これは公主様、指示は冷静にな」

「かしこまりました。公主様。指示を出します」

「UJIZANE殿、トップ下の位置で起点になってくだされ、トップ下のジョン殿は

右ウィングの位置へ、泰朝殿は高い位置をキープしてくだされ。失点をせずにカウンター攻撃に全てをかける。後残り5分失点するなよ」

郭図だって?もしかして三国志では策謀を巡らせればかなりの確率で負ける軍師じゃな無かったか?家を滅ぼした戦犯者だったと思う。三国志が好きでゲームも好きだったから印象にある。

しかし郭図の声を聞いてから攻撃パターンが変わると思った。自警団は中央部でのUJIZANE対策をしていない。そしてUJIZANEは起点のパスを出せる。これはまずいと思った。

そして口に出す。

「アレックス、UJIZANEのマーク頼めますか?」

アレックスの快活な声が信治に聞こえる。

「任せておけ、ジョーンズ、スミス、敵フォワードは足の早さとフィジカルの強さがある。ファウルに気をつけろてくれ。信治ジョンはウィングとして動くはずだからクロスを上げさせるなよ」

「了解」×3

信治はサムズアップをする。

どんな敵でも抜かせない。

ピー

試合の再開を告げる審判の笛が鳴る。

UJIZANEがボランチにボールを回し、後ろに引きさがっていく。

UJIZANEもパスコースを作りながら、自陣深くまで下がっていく。

アレックスはUJIZANEをマークするためにディフェンスラインを引っ張りながら敵陣に侵入していく。信治は泰朝との間合いを気にしながら、ディフェンスラインについていった。雪は高い位置でエクスを見ている。

信治は地方騎士団は攻撃を仕掛けるつもりも無いのかもしれないと思った。

前半に2点失点しても立ちなおせるチームになっているのかもしれない。

タフなチームなのだと思う。

今まで前線に張り付いていたシュタールがボールを追う動きを始める。

王子はでフェンスラインに張り付いていた。王子は本来はクリエィテブな仕事を本来は担当しているが、勝つためには何をすべきかも理解している。王子も勝ちたいのだ。

ここにちょっとした自警団のスキが生まれえた。右センターバックからパスが出てUJIZANEがボールに触れる。高く右足を上げてボールを蹴り、本来なら考えられない距離のパスを出した。アレックスの頭を通り越して泰朝の元へのパスへ繋げた。

泰朝はボールを長くけり、ボールを追いかけるように走っていく。

スミスとジョンソンは反応に遅れた。そして足の早さも上旬的な早さしかない。

信治はマークを考えずに、泰朝の予想進路に向かって走っている。

環も持ち前の体力で全力疾走して戻ってくる。終了間際に失点とか、失点したくないとか信治も環も思っていなかった。とにかくボールを取る。考えているのはそれだけだった。ゴールキーパーのジュリアは間合いを図っている。信治は何とか泰朝に追いつく事ができた。ジュリアは詰めて抜かれたりループシュートを打たれたらたまらない。ゴールを離れるとロングシュートにも対応できない。

また泰朝が大きくボールを蹴りだした。

泰朝が蹴りだしたボールにスライディングタックルをする。そのボールを奪いにきた地方騎士団の左ウィングに触られる前に環がボールに触れる。

環はボールを右サイドのタッチラインを割る。そこにやっとセンターバックコンビが追いついてきた。

「助かった」

スミスが信治たちに話しかけた。

「カバーしあうのは当然の事ですよ。スミスさん。敵のロングスローに気をつけましょう。陣形を整えないと」

信治は答える。

「そうだな」

ジョーンズが返答する。

「まだ勝った訳じゃない。戦おう」

「環さん助かりました。カバーありがとうございます」

「良いのよ、サイドバックは走ってなんぼでしょ」

そう知ってサムズアップをしてくれる。

「環さんこそナイスクリアです」

そう言ってサムズアップを返した。

「むぅ、試合は面白いのになんだか腹が立つの」

「まぁなぁナターリアさん。この試合の後でみんなで遊びましょう。きっと楽しいですよ」

「信治、試合が終わったら楽しい事いっぱいしようね。それまでナターリア達のカバーお願いね」

それを聞いて、信治は確信する。サッカーはチーム競技なのだと。

さぁ地方騎士団の右サイドバックのスローイングで試合が再開される。

ロングスローにも警戒だ。ディフェンダーは失点に関しては無限責任なのだ。どんなミスも許されない。そう信治は自分に言い聞かす信治だった。

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