少女たちの前夜祭 月夜の妖艶 ナターリア編
信治は早足でナターリアとの待ち合わせの噴水広場に来た。
村の人々、男性の視線を集めている。
水色の胸元があいたキャミソールのミニワンピースを着ている。
褐色の肌に似合っていて、信治の股間はおらなんだかわくわくするぞと主張し始める。
でも信治はナターリアの所に行かねばならない
勇気を振り絞り信治はナターリアに近づいて声をかけようとする。
屋台でつけられたライトの魔法が間接照明となって、ナターリアの褐色の肌を暗いのに逆に際立たせる。胸のサイズにぎりぎり合うサイズの服がこれしかなかったのように胸の谷間を見せつける。足はサッカー選手らしくとても美しい。信治は息をのんでします。
そこをナターリアは見逃さない。
そして信治もナターリアも気づかないできたが、人影に隠れてそのシーンを見逃さなかった環もいる。
信治の前に来るとこう言った。
「信治、女の子を待たせるのはいけない事なの。嫌われたかと思ったの。とても不安だったの」
見上げるナターリアの切なげな視線が信治の視線と絡み合う。
「ごめんね。ナターリアさん」
「許してあげない」
信治は混乱した。所詮鋼の魂と肉体を手に入れたが、女性との付き合い方のチートをもらった訳じゃない。無粋だけど聞こうと信治は決意する。
「どうしたら許してくれるのかな?」
「こうするの」
信治の左横に並び、左腕を両手でつかみ、ナターリアの豊かな胸を押し付けてきた。
童貞だし無リポ。
信治は自分の語彙の限界と鋼の意思が崩壊するのを実感した。
さらにナターリアは信治の耳元でささやく。
「これからナターリアの事、ナターリアと呼んで欲しいの。無理だったら強固の時だけでも・・・」
信治は決断する。童貞だけど女性にここまで言わせてはいけない。
「いいよ、ナターリア。屋台見て歩こう」
「うん。信治♪」
周りがざわづいている。
リア充め。もげろと殺意に似た厳しい視線が飛んでくる。
信治は早足になりそうな自分を押しとどめ、ナターリアの歩調に合わせる。
話題が浮かばない信治にできる事はそれくらいだった。
「ふふ、信治緊張してるね」
からかう様にナターリアが微笑む。
「これだけの美少女と連れ添うとね。緊張するよ」
信治は早口でまくし立てる。
「それは仕方ないね。でもありがとう。ナターリアの事美少女と言ってくれてうれしい」
ナターリアは信治の左腕をぎゅっと抱きしめる。
豊かな胸が信治の左腕に押し付けられる。
そ、素数を数えるんだ。そっすうってなんだ?
メディック。メディック。
信治の中の理性と肉体制御をつかさどる部門は混乱に陥っている。脳内でメディックすなわち衛生兵を読んでも誰か助けてくれるはずもない。
そんな混乱の中でナターリアは唇を一瞬ゆがませる。
「あっタイ焼きの屋台があるの。ナターリア好きなんだ」
「いいよ。食べるの久しぶりだよ」
ナターリアの笑みを見れず、タイ焼きを買いに行くと言う理由ができたためにひとまず信治は安心をした。
「早く、早く」
ナターリアさんはとても幸せそうな笑みを浮かべながら、信治の腕を引っ張る。
ナターリアに急かされてタイ焼き屋の屋台につく。
信治は僕は幸せなだなぁ。神様ありがとう。
「おじさんの粒あんのタイ焼き3つなの。おつりはとっといて」
そう言ってポケットから5シルバー銀貨を取り出した。
「あいよ、ちょっとしたサービスだ。炎を司る聖霊よ、わが願いに耐えたまえ、再加熱」
タイ焼き屋で在庫として並べられているタイ焼きが見る見るあたたって行くのを信治はびっくりした表情で見ていた。再加熱されたタイ焼きを袋に詰めている間に信治は我に帰った。
「お金出すよ。格好つけさせて」
「ふふ、ありがとう。ナターリア誘ったのだからナターリアが払うの。常識だよ」
そう言ってナターリアはタイ焼きの入った袋を受け取り、大切そうに信治に渡した。
「温かいね。温かいうちに食べたいけど、この人込みだと食べるのも一苦労だね」
「良い場所を知ってるの。人も少ない静かな場所だよ」
「良いよ。そこに行こう」
「また信治との左腕組んで良い」
「良いよ。どこに行くのかな?」
ちょっとだけ慣れてきた信治だった。
「こっちなの」
そう言って信治を教会の方向に連れていく。
人込みをどんどん押しのけて教会についた。教会の中で食べるのかなと思っていると教会に併設される鎮守の森に連れていかれた。
「お待たせ、ここのベンチに座って食べるの」
鎮守の森は整備されたう森でちょっとした公園だった。人気がまったくない。
「静かだね。でも木々の間から月明かりに照らされてきれいだね」
「そうなの。でも少し怖いかも。手をつないでいてもいいかな?」
どちらからともなく信治の左手とナターリアの右手が繋がれる。
信治は頭が爆発しそうなほど照れている。
ナターリアは全て計算通り勝ったと思っている。
ごくり。信治は唾を飲み込んだ。
突然、ナターリアは信治の方に切なげな視線を向けて、尋ねる。
「信治はナターリアの事嫌い?」
ぎこちない表情で信治は返した。
サッカーの女神様ありがとう。この時の信治は底抜けに舞い上がった阿保だった。たけわだった
「嫌いじゃないよ」
それでも返せる言葉はこれだけだった。
「それじゃ好きってこと?信治に本当の気持ちを教えてほしいの」
「分からない。でも嫌いじゃないことは確かだよ」
「今信治の事を見て、考えるだけで心臓がどきどきしているの」
「・・・僕もナターリアを見てどきどきしているよ」
「ナターリアは処女だけど、前世の記憶を覚えているの。だから信治に初めてをあげたいの」
「それはだめだよ」
「なんで?好き同士なら良いんじゃないかな?」
そういってナターリアは信治に顔を近づけてくる。
そしてナターリアはささやいた。
「今下着付けてないの?今すぐ抱いて?信治の事が好きなの。答えを聞かして」
「だめだよ。ナターリア」
ぞくぅ
ナターリアの左手が信治の愛馬を触る。
だめぽ。
「うふふ、体は正直なの。こんなにもナターリアの事が好きなんだね」
突然、月明かりが途切れる。
「このおバカ」
その一声とともにナターリアの頭が叩かれて、無理やり信治から引き離される。
「痛いの、環。この覗き魔、変態。ナターリアは愛を確かめたかっただけ」
「明日試合なのに疲れちゃうでしょ。信治も大人だからこれくらいの誘惑に負けちゃダメよ」
「ふー環さん。助かったよ」
「助かったと言う割には興奮していらっしゃられるみたいですけど」
「これは仕方ないんだ」
「それくらい分かるわよ。信治の宿舎の前で待っている円の所に行ってあげて」
「環さんの時間じゃないのかな?俺じゃダメだったかな?」
「そういう訳じゃないわ。この色情狂に説教をしないといけないからね」
「色情狂じゃないの。こんな戦乱の時代なら思いを遂げないといつ会えるか分からないの。好きな人に好きって言える時間は限られているの」
「それは同意するわ。でもね時間とか空いての気持ちとか考えろと言っているの」
「信治、ここは良いからね。今度、色情狂から助けた分と私の時間は返してもらうから安心してね。ちょっと長くなるかもしれないけど、円の事頼んだわよ」
そう優しく環は微笑んだ。
「はい」
信治は月明かりに照らされた森を後に、自分の宿舎に向かって歩き始めた。
続く
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