少女達の前夜祭 お祭り前のお祭り騒ぎ 朝食編
信治は指定された食堂にいる。いつも朝食を食べる
「おはようございます、信治さん」
白いブラウスにベージュのロングスカートをはいた円さんが挨拶をしてくれる。頭にはスカーフを巻いている。白いブラウスから主張する胸は温泉での出来事を思い出させる。
「おはよう、信治」
環は緑色のチェック柄のスカートと白いワイシャツを着てその上から緑色のベストを着ている。仕事は無いけど、書記官の制服みたいなものだと、信治は環に言われた事がある。
「二人ともおはよう」
どことなく二人とも楽しそうだった。
「信治、おはようなの」
少し遅れてナターリアが店に入ってきて、元気よく挨拶を信治に送る。
「おはよう、ナターリア」
「ナターリアちゃん、おはよー」
「二人ともおはよーなの」
そうナターリアが言うと、信治の左横に来て、体を傾け、信治の横顔を見て話しかける。
「ねぇ、信治、左側の席に座っていいかな?」
信治の鼓動は高まる。ブラウスにズボンをラフに履いただけだけど、大胆にデコルテラインを見せて、胸の谷間をちらちら見せようとする。
信治はその姿と声を聞いて、返事が遅れる。何も考えられなかった。女の子の胸に触ったのは何年だろう。そもそも触った経験無かったわ。
と信治の脳内は冷静さと感情と下心で大混乱している。
「何を朝から言っているのよ。変態」
「ナターリアの事、嫌い?」
切なげな視線で信治を見るナターリア。
「良いよ。座って」
「じゃぁ、ナターリアの事好きなのかな?」
「えっと」
返事に困る信治。
「信治さんの右隣り私が座るね」
円さんは高らかに宣言した。
そして席に着く。
「ナターリアの事どう思う?」
「そんな事より、私とお話しませんか?」
会話に割り込む様に円が話し出した。
「思う以上に円は強敵なの。この方法で落ちない男はいないはずなのに。」
内心で助かったと思う信治。
「ありがとう。円さん」
「えへへ、、どういたしまして」
にっこり微笑む円だった。
信治はナターリアさんのセクシーも良いけど、円さんの柔らかい笑顔も素敵だなと思う。
また食堂のドアが開き、信治さん、遅れてすみませんと言う雪の声が信治の元に届いた。
「おはよー。雪さん。これで全員そろったかな?」
円卓で信治の正面に座り込む雪。
髪の毛がきれいに整えられて、優し気な雪の微笑みが美しさを引き立たせていた。
信治はちょっと見つめている。
「・・・」
「・・・・・・」
「あの、信治さん?顔に何かついているのでしょうか?そのじっと見つめられると恥ずかしいのですが」
「きれいだなって・・・ごめん。何言っているんだろう。でもきれいなのは本当だよ」
「照れるじゃないですか」
「信治さん、長髪が好きなんですか?」
「信治にはナターリアがいるのに、この浮気者。信治はナチュラルプレイボーイなの」
「はいはい。朝食にしますよ。マスター。自警団朝食を5つお願いします」
「おう。朝食5人前だな」
豪快そうなおやっさんがオーダーを受け付けてがオーダーを受け付けてくれた。
「料理ができるまで、前夜祭をどう回るか決めましょう。せっかくのお祭りですし、どんな屋台を回るか決めましょう?」
「円、食べすぎはダメよ。明日の試合はタフな試合になるはずだから、体脂肪率は敵よ」
「もうお姉ちゃんは気にし過ぎだよ」
「ねぇ、信治。今夜ナターリアと二人っきりで前夜祭回らないかな?」
「ナターリアずるいよ私も信治さんと一緒に回りたい。お姉ちゃんもそうだよね?」
「私はいいかな?でも二人っきりになるのがナターリアだけだと不公平かな?」
「そうですね。環さんの言う通りですね。前夜祭は45分ごとの交代で回るのはどうでしょ?」
「それが良いわね。公平だしね」
「後は順番ですね」
「じゃんけんにする?くじ引きにする?」
「くじ引きの方が良いの!ナターリアは強運だからね」
「自分で言う物でもないでしょ」
そう言って環さんは鉛筆と小さなメモ用紙を胸ポケットから取り出した。
「そのメモ用紙はいつも持っているのかな?環さん」
「えぇ、書記官の仕事がいつ起こるか分からないから一応ね。でも紙がもったいないから、一枚の紙を切って四枚に分けるわね?」
そう言って環は折り目を付けて四枚の紙を切り分けて、メモ用紙に数字を書いていく。
それをシャッフルすると、環さんは四枚のくじを軽く握りしめた。
「誰から引くのかしら」
「もちろんナターリアからいくよ」
そう言ってナターリアはくじを取る。
「次は私が引くよ、お姉ちゃん」
円が引いた。
「残り物には福があると言いますし、私が引きますね」
「残りが私ね、それじゃいっせいのでーで」
「一番は私ですね」
雪が冷静に言う。
「二番なの。せっかく一番取って約束をやぶるつもりだったのに」
「それだけはさせないわ。私が三番ね」
「四番だけど良かったのかな?」
四者四声の声がする。
「明日試合だし、信治君の守備にかかっているのだから無理をさせたらだめよ。私たちは自警団で優先的にいろいろしてもらっているからね」
信治は環さんが引き締める声を聞いて、やっと今晩の大変さを理解した。
「それじゃ何時からするの?」
「最後は花火をみんなで一緒に見たいですから16時からの開始で良いと思いますよ」
雪が口にする。
ナターリアの方を見ながら環も口を開いた。
「ナターリアと信治を二人きりで花火見られるのももやもやするし、最後はみんなで花火を見ましょうか」
「行動パターンよまれているの」
「信治君と私で二人で見る花火もいいなぁ」
「こら円、口から本音が漏れているわよ」
「ごめんなさい。お姉ちゃん」
「リア充勇者様、朝食プレートお持ちしました」
いつも豪快なおやっさんの声が低い事に信治は驚きと恐怖を感じる。
カートに乗せられたお盆から朝食を載せたお盆を出して並べていく。
朝食は食パン二枚、目玉焼き、大盛りサラダ、ソーセージ、水だった。いつも食後にコーヒーを出すのがこの店の自警団向けのモーニングの決まりである。
一通り食事を配り終えた後、おやっさんはカウンターに戻る。
「いただきます」
信治は両手を合わせていただきますをする。円や環も雪も同じ動作をする。
「信治、いつも朝ごはん物足りなくない?。白いご飯に高たんぱくなもの食べないと体維持できないと思うわよ。でも稲作していないのよね」
「南方ではしていると言う噂です毛ね。パンもおいしいですよ。でも食料の大量生産をしていた世界から来ると感覚が最初狂いますよね」
「うん。都会ではケーキ屋さんもあるみたいだけど、お菓子作るのも大変だよ。砂糖が手に入らないからね」
「ナターリアも食事は困るよ。バナナとか食べたいときあるよ」
「でも前に砂糖を手に入れた時に円が作ってくれたやせうま?だっけおいしかったわよ。良くレシピ覚えていたよね」
「大豆と小麦を栽培している農家さんがいたから、分けてもらって黄な粉と小麦粉の塊を作れたよ。たまたま砂糖が手に入ったからね。前にテレビでしていたのを覚えていたよ」
「今回の報酬に追加で砂糖をもらうようにする?」
「お姉ちゃんさすがにむりじゃないかな?試合は楽しみだけどね」
「ふふ、楽しみにしているのは良いわよ。私も闘志を燃やしているからね。雪はどうかしら」
「もちろん頑張りますよ。今回の作戦で重要な役目をもらっていますからね」
「信治はどうかな?ナターリアにボール渡してくれたら、円にパス出すからね。だからセカンドボールの事は任せてね。活躍したら信治からナターリアにご褒美くれるかな?」
「えっ?僕にできる事なら」
「ダメよ。信治。それがナターリアの手なんだから」
「こんな戦乱の世の中じゃいつ死ぬか分からないもん。好きな人に甘えられるのも一瞬なの。だから正直に生きて行くの」
「生前結婚していたから納得しなさいよ」
そんな不毛なやり取りとしていると食事が終わり、食後のコーヒーの時間になる。
おやっさんが来てお皿を下げて、コーヒーを配膳する。
「信治は勝つつもりあるかな?」
信治は自分の気持ちを確認してみる。
ふつふつと湧き上がる勝利への渇望がある。
「この一か月猛練習をしてきたから勝ちたいよ」
「ポジショニングは任せてね。あんまり早く走るのは得意じゃないけどロングフィードは受け取ります」
円が静かに言う。
「右サイドは任せておきなさい。ふー。試合前のコーヒーはおいしいわね」
「うん、ナターリアも好きだよ」
「うん、でもナターリアさんが言ったこの瞬間を大切するのも大切だよね。でも最後まで一緒に戦って勝とう」
「もちろん」
「最後までお付き合いします」
「信治さん一緒にがんばろうね」
「ずっと一緒と言う事はナターリアとの結婚してくれるの?プロポーズは早いの?まずはデートから」
「この既婚者が!」
環さんの容赦ない突っ込みが入る。
みんなが笑顔になった。
信治はこの幸せと充実感を守るためならどこまでも走れると思うのだった。
続く
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