第32話 円さんの膝枕
第32話
信治は目を覚ました。後頭部に弾力ある感触と柔らかい感触を感じる。
背中には固い感触。温泉から引き揚げられ温泉の床で寝ているらしい。
目の前には紺色に包まれた突起と心配そうに見守ってくれている円さんの顔が見えた。
ぼんやりとした思考でなぜ、円さんの水着はスクール水着なのだろうと思った。
「円さんの水着はスクール水着なんだね。バスタオルはどうしたのかな?」
「バスタオルは信治さんの頭を支えるために頭の下にしいています。スクール水着は露出が少ないからです。みんなみたいに自信を持って体を見せられないですから。それ以上は恥ずかしいから聞かないでください。私は環お姉ちゃんと違って鍛えてないからです」
「頭のバスタオルをありがとう。わざわざ膝枕してくれているんだね?」
膝枕、そう信治は膝枕をされている。
「それも逆にサッカーしているから、聞かないでください。固いし太いから」
それにしても、円さんの顔が胸で見えない。
スクール水着、胸、やばい、膝枕、状況的にまずいと信治は感じた。特に下半身が。
信治は円の視線の先を見てみた。
それを察して円はうつむく。
「うれしぃような、恥ずかしいような、お姉ちゃんと違ってまだ私未成年だから・・・」
じっと股間を円さんは見ている。
「ぷよぷよのお腹で、固い太ももなのに、恥ずかしいです」
「えっと、」
どう返すか迷い言葉を言いよどむ。
「もしかして女の子なら誰でもいいのですか?それはちょっと失礼です」
この状況だったらご飯三杯はいけるで?
頭の中に謎の関西弁が浮かび上がる。
お前は誰だよ!
信治はあわてて言う。
「違うよ。円さんみたいなかわいい人に膝枕されたら理性が飛ぶよ」
信治は意味不明だと思いながら素直な気持ちを言ってみる。
「本当ですか?私かわいいですか?」
「うん。とてもかわいいよ」
「初めていわれました。私はかわいいですか?」
「うん。女の子にこんな事言うのは初めてだけどかわいいよ。でもなんで膝枕されているのかな?」
「それは雪ちゃんが信治さんにぶつかって、信治さんが意識が失って、雪ちゃんの代わりに膝枕しています。雪ちゃんが頭を高い方にした方が良いと思うと言って、代わりに膝枕をお願いされました」
「そうなんだ。私は恋愛とかする前に交通事故にあって死んでこの世界にきましたから、恋愛事とか男性の事とか経験とか無くていいと言ってもらえてとてもうれしいです」
「・・・男の人にかわいいと言われたのは初めです」
「かわいいのは事実だと思うよ」
「卑怯です・・・」
顔を赤らめて、円は言う。
しかし、余裕の無い信治は気づかなかった。
「ん?何かな?」
円は声を絞り出すようにして言う。
「・・・私の方がのぼせてきました」
「そうだね。回復してきたし温泉から出よう」
この状況から脱出できてほっとする信治だった。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます