第31話 やれやれ温泉も楽しめないけど、ある意味幸運です
やれやれ酷い目にあった。
水をぶっかけられた衝撃で冷静になれた信治はそそくさと温泉に入り、誰も来ない隅の方でのんびり過ごしている。
しかし、いや、でも時間ができるとナターリアさんの水着姿を思い出しては赤面している。
今の世界と他の人がいた世界では年齢とか外見とか変わる事もあるけど、結婚していたのは反則だよと童貞の信治は思うのだった。
やばい。人妻の水着を見たと言う妙な感情が湧いてきた。
ぶくぶく。信治は顔を温泉に沈める。
それにしても湯煙で今の姿を見せなくて良かった。
信治の頭の中はとりあえずナターリアさんの水着姿で頭がいっぱいだ。
ちゃぷん。
ちゃぷん。
頭をお湯につけていた信治は近づく音に気が付かなかった。
信治が頭を上げるのと同時だった。
何か弾力があるものに頭が当たる。
「きゃ」
女性の驚いた声が聞こえる。
そして信治の頭を抱える様にしてとまる。たぶんこけないためにとっさにつかんだのだと信治は思った。頭の上に柔らかい何かが当たる。たぶん、大きい。
「すいません。誰か当たりましたか?眼鏡を外していて良く周りが見えなくて」
何か良い香りがする。頭が白くなる。
「雪さん手を離して。信治です」
手を離してくれいないと信治のあそこは大変な事になる。温泉を汚す訳にはいかない。
「信治さんでしたか。どうもすいません。温泉中は眼鏡を外すので壁に手を当てて進むんです。温泉の一番深い位置にあるこの場所は私の秘密の場所なのですよ」
「それは知りませんでした。ここをよそにいきます」
でもすぐには動けない。あれが大変な状態になっている。湯煙で視界が悪いのと禁止の雪さんでも腰のあれが大変な事になっているのを見せる訳にはいかない。
「いいえ、信治さんと少しお話がしてみたいのですが、ダメですか?」
「良いのですか?」
「ええ。そんな方か気になります。サイドバックのお仕事は大変なのは知っていますからね。私も一時期サイドバックにコンバートされていた事もあります。ハーフとはまた違った大変さがあって、って、私またサッカーの話をしていますね。どんな方か積極的に知りたいと思いました
」
信治は思う。逃げるチャンスをみすみす逃した上に、ピンチが続行する自分がお調子者である事をこの上、呪った事は無かった。
そのお調子者の本能が雪さんの胸元をがん見している。
刺激が強いよ。信治の心の叫びだった。
「うん。でも個人的に話すのは、難しいかもしれませんね。いろいろな人がいろいろな事情で、異世界に来ていますし、もしかしたら私と信治さんも違う世界や時代から来たのかもしれませんね。信治さんのいた世界や時代はどんな感じでした?」
「地球と言う世界で、日本と言う国で暮らしていたよ。この世界で一日過ごしただけなのに妙になつかしいよ」
「ふふ、たぶん同じ世界でくらしていましたね。私は1998年くらいで記憶が途切れています。環さんやナターリアさんはサッカーを続けながら長生きをしたみたいですね。私もそうですけど、プロリーグで活躍して見たかったですね。今を楽しめているから好都合化もしれませんね」
「そうだね。俺もサッカー止めてから、コンプレックスを持っていたよ。でも、みんなが望んで仲間に入れてくれたから、コンプレックスは少し解消されたみたいだよ。読んでくれてありがとう」
「こちらこそ、チームに入ってくれてありがとうございます。ちょうどフォワードとサイドバックとセンターバックの三人が別のチームに引き抜かれて、人数的にぎりぎりだったんです。新しく作る地方騎士団、えっと地区選抜チームの主要人員になると聞いています。私たちが選ばれなかったのは自警団の基幹人員を残しておくためと言うためだそうです。前線が崩れたら意味がありませんからね」
「そうなんだ。お互いにとってちょうど良かったんだね」
信治はオウム返しにしか話せなくなっていた。雪さんの魔性の谷間とナターリアさんの水着姿しか頭に思い浮かばなかった。
「雪さん、アレックスさんが国上げる報告書の事で軽いミーティングあると言っていたよ」
助かった。少しくらくらする。のぼせたのかなと?と信治は自分に都合の良い様に考えていた。
「円さん、すぐにいきます」
「信治さん、こちらからお誘いしていたのにごめんなさい。報告書を上げる作業は大切なので今からいかなければなりません。また機会があればお話ししてくれますか?」
「はい」
そう言って雪さんは近くの岩につかまって立ち上がろうとする。その時、岩と間違えて信治の左肩を掴んだ。岩ほど固くなく、滑りやすい信治に左肩は拍子抜けするほど簡単に、雪さんの右手を滑らせる。
「あぶない」
そう言ってとっさに信治は雪さんを抱きかかえる。
信治の顔面にやわらかい物がぶつかると同時に温泉と女性の水着姿でのぼせ上った信治はいとも簡単にブラックアウトするのだった。
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