第30話 温泉、信治くらくらします

競技場から村の中を抜けて、村はずれに向かう道を雪と信治は歩いていた。

「雪さん、どこに行くのかな?トレーニング施設じゃないみたいだけど?」

信治は疑問を口にする。

それに対して、雪さんは優しく微笑んだ。

「ふふ、温泉があると言いましたよね?温泉に入って体を温めてからストレッチをするのが習わしなんだそうですよ。私も温泉い入るのは好きですからね。信治さんはお嫌いでしたか?」

「日本人だったから温泉は大好きだよ。でも変えの服装とか下着とか持っていないよ」

この時、信治は何も考えていなかった。

「温泉のある施設に着替えと水着とタオルが用意されています。いきなり召喚して試合を行うと言う方々も多いですからね。それに隣接してトレーニングルームと体育館がせっちされています。体育館でストレッチはするんです。温泉ではフルーツ牛乳とコーヒー牛乳が飲み放題になっています」

信治はふと疑問にも思った事を口にする。

「温泉なのに水着を着るのかな?」

「海外の文化から来られる方々には裸で入ると言うのも抵抗がありますし、それに恥ずかしいですからね」

女性同士でも恥ずかしいとかあるのかな?とか能天気に考えていた。

話しているうちに施設が近づいてくる。日本の古びた旅館みたいな建物だった。

「へぇ、趣があるね。いい感じだね」

「そう言ってもらえると、私もうれしいです。それに実は天然温泉なんですが、鉄やコンクリートを大量生産できなくて、木造やレンガ作りの建物が多いんです。この世界は近代サッカーをしますが、私たちの言う所の中世ヨーロッパくらいの文明レベルみたいですね」

雪さんは扉を開けて、信治に入る事を促した。

「さぁ、入りましょう。ちょっと恥ずかししですけど楽しんでくださいね」

建物の中に入ると番台があり、一人の女性が座っている。髪の毛が長く美しい栗色をしている。20代の中頃に見える。細身の女性だった。全体的にスラァとした女性だった。

女性が信治の事を観察していた。

信治はそれを少し恥ずかしく感じる。

信治が戸惑っていると、雪さんが番台に座る女性に声をかけた。

「アイリスさん、この方は信治さんと言います。信治さん用のタオルと水着と着替えを用意してくれますか?」

「もうできているよ、ちょうど在庫にあったからね」

「信治さん、アイリスさんからいろいろ受け取ってくださいね、私は着替えに行ってきます」

信治は番台に近づくと、アイリスに声をかける。

「信治と言います。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします、信治さん。これが服装一式です。温泉に入る時は水着を着用して、必ず腰にタオルを巻いてださいね、宗教とか文化とかいろいろ違う人々が集う世界ですからね。温泉楽しんでいってね」

思わせぶりに微笑むアイリスさんに疑問を感じながら、信治は言われた通りに、着替え温泉に向かう扉を開けた。

広く開けた世界。中央に温泉があり、周りを板塀がかこっている。

突然、横から声がする。

「はろー、信治君」

横を見るとナターリアさんがいた。隠れていたようだった。

「ナターリアの体見たい?信治君なら良いよ」

そう言って体に巻いたバスタオルの胸元に右手の人差し指を入れる。

「みたい?」

信治は興奮して頭に血が集まり爆発しそうだった。

ばっと、オルの前が開かれる。

そこには薄緑をしたビキニが現れる。

サッカー選手らしく消えられた腹筋を持ちながら、どこまでも柔らかく大きな胸。

そして、鍛え上げつつも女性らしいウェストから繰り出される魅惑の腰つき。

信治は何も考えられずに、ひたすらナターリアの体を見ている。

「こらナターリア、あんたは前世のハニーにしか素肌を見せないのじゃ無かったのか?

この痴女」

信治は声のする方にると、環が桶を持って立っていた。

もちろんバスタオルを体に巻いている。

バスタオルの上からでも分かるスリムな体形だった。

アスリートの理想を体現した様な美しいボディラインをしている。

「信治君、カバー」

そう言うが早いか信治の背後に隠れるナターリア。

隠れるのとほぼ同時に冷たい水が信治にかけられるのだった。

信治は思った。不運な後には幸運が、幸運の後には不運が訪れるのだなと。

                        

                              続く

          

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