少女たちの前夜祭
第29話 大きい方が良いですか?
「やった!勝った!」
信治は叫ぶと同時に背中からグランドに倒れた。
初めてのスターティングメンバー、初めてのフル出場、初めのクロスに、初めての得点、初めての勝利、興奮が治まらなかった。そこの雪がやってきた。倒れた信治を覗き込むようにして見ている。
「お疲れ様です。怪我とか無いですか?初めての異世界でのサッカーはどうでしたか?」
「雪さん異世界のサッカーは最高だよ!」
「私はこの世界で初めての試合で勝利した時はそうでした。立てますか?」
「もう少し、こうしていたい。だめかな?」
「えぇ、いいですよ。私も少しお付き合いしてもいいですか?」
反対のサイドにいた円と環も信治の所にやってくる。
「雪さんありがとう。試合の事を話そう」
「ふふっ。信治さんはサッカー楽しんだみたいだね。これからチームメイトとよろしくね」
円が信治の顔を覗き込みながら、微笑む。
「初戦で出来過ぎじゃない?信治さんは大活躍だったね、でも一緒に戦ってくれてありがとう」
そして最後にナターリアがやってくる。
信治の股間を見ながらナターリアは言った。
「女の子に囲まれて信治、すごい興奮しているの!パパと異世界来る前のハニーのしかしらないけど、大きいね」
「何の話してるの?」
「外見が少女だからって、前世の記憶消える訳じゃないのに、恋愛や結婚をしていたんだから、信治君の大きさ分かるでしょ」
「いやいや、なんの話?」
環がとがめる様にナターリアに話しかける。
信治は気づく。
「これはサッカーの試合が終わっての生理反応だよ」
「ナターリアさん、人生は人それぞれですから話にださなくても良いじゃないですか?」
「たしかに前世の旦那より大きい」
何の話かつかんだ環がつぶやく。
「えっ何の話、環おねえちゃん」
きょとんとした表情で円さんが話す。
「円は分からなくていいの」
「試合の後に男の子が興奮するのは分かるの。でも信治の純情さん見てるとついつい話したくなるの。それとナターリアの胸見る?大きい方が良いでしょ?」
「こらナターリア、何下品な事言ってるの?」
環が怒る。
「いやー、環のおこりんぼ。サイドバックの機能美を体で体現している環が嫉妬しているの!でも素直な気持ちは素直に出した方が良いと思うの。だってこの世界でいつ消えてもおかしくないから悔いを残さない様にしないといけないの。」
「だから、人の話を聞きなさい」
そう言って、ナターリアを掴もうとする環だが、するりとかわして逃げ始める。
一瞬でトップスピードに乗るナターリア。
「信治さん。今日はありがとう。ちょっとナターリア待ちなさい」
そう言って、ナターリアを追いかける環。
こちらも数歩を歩んだだけでサイドバックとして必要な最速のスピードに乗る。
「信治さんは大きい方が好きですか?私は自信がありません。温泉は期待しないでくださいね」
円さんは赤面をしたまま、ダッシュでロッカールーム向かって行った。
「大きい?何の大きさだろう。それにしてもみんな元気だね」
女性との恋愛経験の少ない童貞の信治には分かりかねる事だった。
「改めて今日はありがとうございます。いつも右サイドで攻守ともに果たさなければいけなかった仕事が楽できました。もうそろそろロッカールームに戻りましょう。汗が乾いて冷えてくると思いますよ。それとストレッチしましょう」
そう言って改めて手を差し伸べる雪だった。
信治は差し出された雪の右手を掴むと立ち上がるのだった。
「それとこの村には温泉が湧いているんですよ、自警団専用の温泉もありますから楽しみましょう」
「それは楽しみですね」
深い事を考えずに返答をする信治だった
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