中学時代レギュラーになれずに、草サッカーチームに入るも追放されて異世界で無双します

第28話 死闘の終わり。サッカー対ゴブリン編、試合終了です」

信治はコーナーで一人ボールをキープしているシュタールの援護に行く事にした。

シュタールはボールを取られないと思っていたのだけど、最後の最後に手を抜いて負けるのは嫌だった。信治はもう後悔を味会うのは嫌だったのだ。

俊足で逆サイドまで信治は走って行く。シュタールはゴブリンのボランチ二人に囲まれていて懸命にボールをキープしている。

「シュタール」

信治はシュタールに声をかける。

その声を確認するように、ゴブリンのボランチたちは一瞬こっちを見る。

そして、シュタールへの圧力が少し、ほんの少し弱まった。

シュタールはゴブリンを背負ったまま、ヒールでパスを出す。

信治は必ずそこにいるとシュタールは信じていた。

信治もその思いにこたえる。

確実にトラップすると背後から、襲い掛かって来たゴブリンの右サイドハーフをターンでかわした。そのままドリブルをしていく、シュートを決める事は簡単だった。

だけど、ゴブリンの主審が得点を認めない可能性がある

それに何かカードを出して試合を止めて、得点を取り消すかもしれない。

それなら時間を稼ごう。信治はそう思った。

ゴブリンの右サイドハーフとボランチたちは懸命に信治を追いかけてくる。

信治は追い付かれる前に王子にパスを出した。

そのまま王子を信じて走る。

パスが来ると信じて。

王子はホブゴブリンのセンターバックを背負って、信治にパスを出す。

ゴブリンのボランチたちは足が止まりかけていた。

信治はわざと速度を落とし、ホブゴブリンの右サイドバックと対決を行う。

切り返しの貴公子発動。

簡単にゴブリンの右サイドバックを抜く事ができた。しかし、もうポジションの事をなど言っていられないゴブリンの右サイドハーフとゴブリンのボランチたちは信治からボールを奪おうと寄って来る。シュタールはフリーの位置にいるけど、パスは出せそうになかった。

ゴブリンたちの思惑通りに左のコーナーに追い詰められていく。

ゴブリンの右サイドバックと右サイドハーフに囲まれる。

信治の望みでもあった。

もう信治の中には、初めてのスターティングメンバー、初のフル出場、初めてのアシスト、初めてのゴールそのような感情は無かった。ただ仲間のための試合が終わるまで、いやなん秒でも良いから、時間を稼ぐ。それしか頭に無かった。

ゴブリンたちを背中に背負い、ボールをキープする。

ボールを奪うために、信治の足を必要に削りに来る。

だけど、信治はアダマンタイトのスキルが発動している事もあったが痛みを感じていなかった。

必要に足を削られる。

それでもゴブリンたちの足はボールに届かない。

「サイドバック、ショルダーチャージぎゃ。人間事ボールを外にだすぎゃ」

そう声が聞こえると、信治は突然、背中に衝撃を受けて、吹き飛ばされる。

しかし、信治はすぐに立ち上がりピッチに戻る。

ボールはタッチラインを割っている。ゴブリンサイドのスローイングだろうと思い、どう守備を行うか考えていると、ゴブリンの主審も腹心もゴールキックを指している。

信治は背中の痛みや削られた足の事など関係が無い様に、自分の守備位置に戻っている。

審判の怒号が響いた。

「ゴブリンが逆転するまでアディショナルタイムは続くぎゃ」

信治は足や背中の痛みなど関係が無い。

まだ走れる。

勝つまで戦うと決めている。

ゴブリンの左ボランチがボールをセットする。ゴールキックは必ずしもゴールキーパーが蹴らなくて良い。精度の高いボールが蹴れるゴブリンの左ボランチが蹴る事にしたのだろう。主審の笛がなる。

ゴブリンの左ボランチがボールを蹴る。

ボールはまっすぐにペナルティエリアに飛んでくる。

センターバックのスミスがゴブリンのゴールキーパーと競り合い、ボールを弾く。

ポジショニング良いナターリアがボールをセカンドボールを拾う。

「シュタール、信治お願いなの」

「任せて」

シュタールはうなずいている。

自分たちの足を信じてボールをチェイスするのだ。

高い位置にいるゴブリンの右サイドバックがボールを拾うと動く。

シュタールと信治がいなくなったスペースを生かすべく、ゴブリンの右サイドハーフは動かなかった。

ホブゴブリンのサイドバックがボールを拾い、ボランチにパスを出そうとして不用意な動きをした瞬間だった。

シュタールがボールを奪い取る。

ドリブルよりキックの方がボールは早く進む。

だけど時間を消費できるのはドリブルの方だった。

信治とシュタールの共通した意識だった。

第四の主審である天使を見る。黒い板を持ち上げている。

そこには減っていく数字が書かれていた。

2分２１秒。

あと少しだ。

シュタールのコースを妨害すべく、ゴブリンのボランチたちがシュタールに向かって走って行く。

「シュタール。こっちだ」

シュタールに声をかけると、シュタールは信治へのパスを選択する。

信治はボールを奪われない様に即座に王子にパスを出す。

ホブゴブリンを背中に背負ったまま、正確なパスがホブゴブリンんのサイドバックが開けたスペースに出る。信治はパスが来ることを信じて走っていた。

軽くトラップするとドリブルでタッチライン際を駆け上がっていく。

ゴブリンたちは一瞬混乱していた。

自分がマークすべき対象が分からなくなったのだ。

「サイドバック戻るぎゃ。ボランチも追いかけるぎゃ」

審判の怒号でゴブリンたちは役割を思い出し走り始める。

そうするとシュタールへがフリーになる。

信治はまた王子への横パスを選択する。

その信治達に追いつくが、急には止まれない。

そしてボールはシュタールに渡る。

「ええぇい、右サイドバックは左サイドバック、右ボランチはドワーフのマンマークに付くぎゃ。急ぐぎゃ。パスを出させるんぎゃないぎゃ。左ボランチは豚へのパスコースを消すぎゃ」

「豚じゃないおー。許さないおー」

王子が怒っている。

「痩せてからでなおすぎゃ」

王子が漫才をしている間にも時計の針は進んでいく。

シュタールはドリブルを急がない。

シュタールはマークに来たボランチを完全にかわして、信治にパスを出した。

シュタールは一気に走るスピードを上げてゴール前に向かって行く。

必死にゴブリンの右ボランチは追いかけていくけど、足は止まりかけている。

第四の審判の掲げている数字が浮かぶ板を見る。

残り

１分を切った。

また切り返しで、ホブゴブリンの右サイドバックを抜く。

抜いた後でも懸命にゴブリンの右サイドバックはついてきた。

信治の右側に走り、パスコースを消すつもりなのだ。

パスコースを消すだけが目的では無かった。

「デスブロゥ」

ホブゴブリンの裏拳が信治の顔を捕らえる。

信治は痛みを感じなかったが、衝撃で後方に吹き飛ばされる。

その瞬間シュタールにパスを出していた。

もちろんゴブリンの主審はファウルを取らなかった。

シュタールの足元にパスが通る。

シュタールは時間を使うためにゴブリンの右ボランチとの一対一を選択する。

信治は立ち上がると、タッチライン際を走っていく。

痛みなどなど関係ない。

信治は勝つためにできる事は全てすると言う決意を持っている。

第四の審判の持っている板を見る。

残り３２秒。

「シュタール、パス」

一体一をしていた、シュタールから信治にパスが渡る。

タッチライン際をまたも駆け上がっていく。

ドリブルの速度を上げていた分、またもやコーナーに追い詰められる。

「バカな人間だぎゃ。右ボランチも行って囲んでホブゴブリンショルダーチャージをお見舞いするぎゃ」

「何度も同じ手は喰らわない」

そう言うと信治はホブゴブリンをターンでかわすと、フリーになったシュタールにパスを出す。そして、ターンの勢いのままゴールエリアに走って行く。

残り

残り４秒。

ゴブリンたちの守備の空白。

フリーのシュタールからフリーになった信治にパスが通る。

そのまま信治はシュートを打った。

ボールはゴールに吸い込まれて行く。

その時、第4の審判である天使が笛を吹いた。

ゴールを宣言するホイッスルだった。

続けて、試合終了のホイッスルも吹かれる。

「試合終了は主審の判断ぎゃ」

「ゴブリンが勝つまでアディショナルタイムの話ですか？それを聞いて、決めました。天使としての権限であなたの審判資格の停止と試合の終了を宣言します」

「判断が偏ってるぎゃ」

「ご自分のレフリングを思い出してください。資格はく奪を申請しても良いんですよ」

「分かったぎゃ。試合終了ぎゃ」

そう言ってゴブリンの審判は試合終了の笛を吹いたのだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く