第27話  ドリブル

「いいか、フォワードとゴールキーパー、相手のディフェンスラインでボールをチェイシングして圧力をかけるぎゃ。ミッドフィルダーはこぼれ球をゴール前に押し込ぎゃ。サイドバックは走って相手のディフェンスラインに数の優位を得るぎゃ。センターバック二枚は抜かれてはならないぎゃ。サッカーは1分で1点取れるぎゃ。必ずかつぎゃ。人間の行うプレーで怪しいのは全てファウルにするぎゃ。試合再開ぎゃ」

そうゴブリンの審判は言い切ると試合再開の笛を吹いた。

信治は審判の声が聞こえたのでゴブリンの右サイドバックと右フォワードを数的不利だし警戒しないといけないと思っている。数的不利な所でプレーした経験は無い。

アレックスの怒号がフィールドに響く。

「シュタール、信治、ボールを奪い取ったら、攻撃して時間を使ってくれ。王子はゴブリンどものセンターバックに圧力をかけてくれ」

「仕方ないお」

そう言うとゴブリンのセンターバックに向かって走り始めた。

ゴブリンはボールをボランチに戻すと、ボランチの一人がドリブルをしてきた。

王子をマークしなく良くなって、人間側のボランチをバイタルエリアから引き出すためのドリブルだった。

雪がチェックに向かう。

「こっちぎゃ」

ゴブリンの右サイドハーフが叫ぶ。

圧力を受ける前にゴブリンのボランチはゴブリンの右サイドハーフにパスを出した。

その瞬間、俊足を武器とするシュタールがゴブリンの右サイドハーフのチェックに行った。ゴブリンの右サイドハーフはかわそうとするが、シュタールにボールを奪われる。

それを見ていた信治は、指示道理にシュタールのサポートに回る。

タッチライン沿いを走り、シュタールに声をかける。

「こっち」

シュタールは即座にパスをくれた。

信治は軽くトラップを行うと、ドリブルを始めていた。

ゴブリンの右サイドバックは待ち構えている。

信治は時間を使うために技とスピードを落とした。

信治は自分の間合いに飛び込ませて、そしてドリブルでかわすつもりだった。

ゴブリンの審判が叫ぶ。

「右サイドハーフと右ボランチはボールを取りにいくぎゃ。早くするぎゃ」

そうだと言う表情でゴブリンたちは信治に寄ってくる。

「信治、こっちなの」

ナターリアの声が信治に届く。

体が自然と動いていた。

ナターリアの声は信治の後方、タッチライン沿いから聞こえて来た。信治は包囲される前にタッチライン沿いによってきたナターリアにヒールでパスを出していた。

ナターリアは完全にフリーになっているシュタールにパスを出した。

シュタールは自分の俊足を生かしてドリブルで上がっていく。

「サイドバックもボランチも戻るぎゃ。急ぐぎゃ」

完全に体力が尽きて、何と走るゴブリンの右ボランチと足の速さが売りの右サイドハーフはシュタールを追いかける。信治は包囲が解けたのを確認してまた前方に走り出す。

「信治頼んだのー」

ほとんど仕事が無かったゴブリンの右サイドハーフ以外、足が止まりかけている。

そんなゴブリンたちを追い抜いてシュタールのサポートに信治は徹する事にした。

心の折れたゴブリンたちの心をさらに追い詰めようと思っていた。

ボールをキープしたり、パスを回したりしてゴブリンたちを走らそう。守備の事を考えて、王子とシュタールと俺でボールを保持しよう。

信治はそう考えている。

ゴブリンたちは何とかシュタールに追いつきそうだった。

シュタールはそれを感じると王子に向かってパスを出した。そこからシュタールは右サイドに流れる。信治はピッチの内側に切り込んでいる。

ゴブリンの右サイドバックはスペースを消す動きをしてディフェンスラインに入る。

ゴブリンの右ボランチは何とかシュタールを追いかける。ゴブリンの右サイドハーフは王子に向かって行った。

それらの動きを確認した王子はホブゴブリンのセンターバックを背負ったまま、信治にパスを送った。ゴブリンの右サイドハーフは信治を追いかける展開になる。信治はドリブルでゴール前に向かう動きをする。ホブゴブリンのセンターバックとホブゴブリンの右サイドバックは信治をマークする動きをした。信治は囲まれる前に王子にパスを出す。

するとゴブリンたちは王子のマークに向かう。王子はフリーになったシュタールにボールを回した。シュタールもドリブルでタッチライン沿いをドリブルする。

ゴブリンの主審はシュタールからのいる位置からのパスは必ずオフサイドを取る。

だからわざとボールをキープした。時間を使うためだった。

ゴブリンのボランチ二人がボールを奪い行く。

シュタールは時間をゴブリンたちに背中を向け、コーナーでボールをキープしていた。

ゴブリンたちの足はボールに届かない。

ゴブリンたちにとって冷酷な事に時間だけが過ぎていく。

第四の審判である審判は黒い板に数字を浮かべて、掲げた。

アディショナルタイムは3分だった。勝利まであと少しと確信する信治だった。

                                続く 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る