第23話 ナターリアのロングシュートとシュタール激走
試合再開の笛が鳴る。ゴブリンフォワードたちはゴブリンのボランチまでボールを下げる。時間を作っておいて、ボランチを除いた全員がゴール前に走りこむつもりなのだ・信治達のチームはディフェンスラインの後ろにリベロとしてアレックスをいれたファイブバックで守りを固めている。ゴブリンたちの審判はゴブリン側のオフサイドの反則を取らないのは分かっているからだ。ボランチの位置にはナターリアと雪が固めている。二人とも足元の技術が優れていて、空中戦と言えば普通の力しか持たないけど身長の低いゴブリン相手には十分だった。王子が前線にいて、ボランチに圧力をかけているのだから、ボランチは一人しか信治達のチームのボランチにプレスをかけられない。円のプレーを見てしまったのだからサイドハーフとサイドバック達はサイドハーフとボロランチに対してマークを継ぐけなければいけなかった。
左サイドに入っているシュタールも本来はフォワードだからゴールを狙えるのだ。サイドバックを自由にすれば、サイドハーフと組みサイドからの攻撃を受ける。ゴブリンたちはリスクが高いがハイプレスさえかかれば、逆転できると信じていた。もちろんゴブリンの主審が取るファウルを信じていた。両者に取って負けらない戦いなのだ。
ゴブリンのボランチはバイタルエリアでは競り合いができないので信治のいるサイドにボール蹴りこんできた。比較的身長のあるホブゴブリンの右サイドバックとゴブリンのフォワードとエースの右サイドハーフのゴブリンがいるからだ。
信治の元にボールが来る。
信治は三人に囲まれるが、身長のギャップがあるのでファウルを受けない限り、空中戦には自信があった。
「ナターリア」
信治はそう叫ぶと、ナターリアにボールをヘディングで渡す。
「ありがとう。信治。ゴブリンは疲れればいいの」
そう言うとゴールに向かってボールを大きく蹴りこんだ。
「シュタールお願い、追いかけて」
ナターリアはそう叫ぶ。
「やれやれ、任せろ」
そう言うとシュタールは走っていった。シュタールを含むドワーフ族は俊敏性に劣るが、長距離を早く走る持続力が優れている。
そして、諦めない限り、何度でも走れる体力を持つのがドワーフ族である。
そいてシュタールのメンタルは崩れない。
マークがフリーになったシュタールは恐るべき速度で走り出した。
シュタールが走りだした事に気づいたゴブリンのボランチたちは一斉にゴール前に戻る。
もしゴールにボールが入らなくてもシュタールが走りこめばシュートされる恐れがある。
ボールがゴールに入る前にクリアしなければいけないし、シュタールよりも早くボールを拾わなければならないのだ。
ゴブリンのボランチたちは高い位置を取っていたために、長距離を走るのが得意なシュタールと競争を繰り広げる事になった。
他のゴブリン達にも動揺が走る。
「ボランチを信じるぎゃ。必ずロングフィードはくるぎゃ!」
ボランチの圧力を受けなくなった王子がこっそりゆっくりとゴブリン側の陣地に入っていくのも信治は見えた。信治は自分の仕事はゴブリンのフォワードと右サイドバックとサイドハーフをマークする事、自分たちの守りに貢献する事だと思っている。
何度でもボールを放り込んでくるが良い。
全て跳ね返してやる。
そう信治は決意していた。
続く
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