第10話 ゴブリンの3枚刃
ゴブリンのゴールキックから試合は再開される。
ゴブリンのキーパーは明らかに雪に向かってボールを蹴った。
眼鏡をかけていて、空中戦が弱い事をしっているのだろう。
しかし、ゴブリンは競り合いに行かずにセカンドボールを拾おうとしてた。
ゴブリンのフォワードがナターリアへのパスコースを消しているので、信治の所に雪はヘディングを折り返した。
そして、ある程度の距離を取ってゴブリンの右サイドハーフと右ボランチがいる。
信治は一対一でゴブリンに負けるとは思っていない。
だから単純に左サイドライン沿いを駆け上がろうと信治は考える。
ゴブリンの右サイドハーフはそのために信治から見たサイドラインに誘導し、右側へのパスコースを消し、半身状態でいる。まるでドリブルするためのコースを開ける様にして。。
信治はドリブルを開始して、ゴブリンの右サイドハーフを抜き去る。
そうすると、即座にゴブリンの右サイドバックと右ボランチが迫ってきた。
いつものスピードじゃ無いと信治は思う。
キープをして、味方にパスを出そうと信治は考えた。
それは最悪の選択肢だった。
ゴブリンの審判が叫ぶ。
「トライアングルデスタックルで殺すぎゃ」
審判の叫びがフィールドにとどろくと信治の右足を狙って、ゴブリンの右サイドハーフとゴブリンの右ボランチと右サイドバックが同時にスライディングタックを行ってきた。
信治は逃げるコースを探した。
その瞬間、信治の右足を痛みが襲う。
頭にはスキル発動:アダマンタイト発動の文字だけ出ている。
「ゴブリンのスライディングは3枚刃だぜ」
「死ね。役立たず」
「人間は血祭だ」
しかしゴブリンたちの声は聞こえるが明らかにファウルなスライディングを受けて、その予想外の事で地面に倒れこむ。
痛みに耐えながら、審判を見るとなぜかアドバンテージを見ていた。
信治は急いで立ち上がろうとする。
しかし、雪さんがこぼれたボールを奪い、大きく外へクリアをしていた。
そこでニタニタ笑ったゴブリンの審判がやってきた。
そして、信治の前でホイッスルを吹き、二枚のカードを提示した。
ブルーカードとキュアカードだ
「分かるか?混沌神様の眷属の攻撃を受ければ、地面に倒れ、苦痛に呻かねばならない。混沌神様への冒涜行為のペナルティと優しい審判の俺様からの優しい、治療の命令だ。10分間破壊神様に祈りを捧げると良い」
「そんな、ファウルは」
信治の方をアレックスが掴んだ。
「イエローを出されると厄介だし、審判に従おう。ジョーンズ、サイドバックの経験があったな?攻撃は良いから左サイド守ってくれ。俺がセンターバックの位置に入るよ。雪さん、左ハーフの位置に行ってくれ。みんなダイヤモンド型の4-4-2で戦おうぞ。雪さんパスを散らして欲しい。王子トップ下でのポストプレイは頼む。一人足りないがシュタールはボールをチェイシングしてくれ」
「あんまり痛いのは嫌だお」
「くく、ゴブリン側のフリーキックでスタートだ。さっさとお前は出ていくといい」
信治は後悔の念で下を向いて歩いていた。僕のした事はチームをひっかし回し、ピンチを作ったと言う事だと信治は思い込んでいた。
しかし痛みは無い。
信治の元に治癒魔術師と看護師のお姉さんがやってくる。僕はがやってきて薬草を足首に張ってくれて、包帯でテーピングしていた。信治は治療はそこそこに試合を見入る。
ゴブリンのセンターバックが二人上がっている。
サイドバックも高い位置にいる。壁は二枚、王子とシュタールだった。
ベックが親指で方向を修正している。
ナターリアと雪もディフェンスに入っていた。こぼれ球を拾う位置には円がいる。
ぴー
試合が再開された。
ボールがゴブリンの右サイドハーフがけりこんだ。フォワードに合わせるボールだ。
アレックスがボールをはじき返す。右サイドにこぼれたボールを円さんが広いにいく。
ペナルティエリア近くに集まっていたゴブリンの集団はボールに反応できない。
円はドリブルで上がっていく。
お世辞にもうまいとは言えないドリブルだけど絶妙のタイミングとポジショニングでサイドライン沿いをドリブルしていく。
王子とシュタールが一斉に走り出している。
王子は遅いけど。
信治はそう思いながら試合を見ている。
しかしゴブリンのディフェンシブハーフがスライディングタックルをする。
あっさりとボールをサイドラインに出される。
ゆっくりと環がスローイングをするためにボールの側まで来る。
その時間の間にそれそれが自分のポジションにつくのだった。
それからフォワードが一人いないチームとは思えないほど安定した試合を行って信治は辛くなった。せっかくサッカーができるのにまたのけ者かと。
調子に乗っていた自分は追放されても仕方ないのかもしれないと思う。
ゴブリンの攻撃の主軸である右サイドハーフは雪が一対一で食い止め、ゴブリンはボールをボランチに戻す。そこには王子がいてなんとかパスコースを消そうとする。
苦し紛れにだされたゴブリンの左サイドハーフへのボールは、円とゴブリンの
左サイドハーフとの一対一で、ゴブリンの足に当てて、スローイングを得る。
自分は無能じゃ無い。嫌無能かもしれない。
だけど頼ってくれたみんなのために走りたい。
自分と自分に期待してくれた人達を裏切りたくない。
もう自分に失望して腐りたくない。
諦めて腐るのは簡単だ。
だけど・・・
だけどそんな自分は認めたくない。
チームの様子をみて落ち込んでいた信治はもう一度チームの為に走りたいと思うようになった。
みんな真摯に試合をしている。個人の活躍とかじゃなくて、自分にできる事と。
それに左からのサイド攻撃の枚数を増やすべきと感じる。王子が抑えられている以上、雪さんだけで試合を作るのは難しいと信治は思からだ。
もしそこに俺と言う槍があれば?
みんなのために走れるのなら?
俺がみんなの為になる事は?
転生してまで、無能を感じて終わりたくない。
だれかのためにサッカーをしたい。
その複雑な想いを胸に信治はサッカーの神に祈りを捧げている。
チートを授かって無能を決して認めたくない僕の実力を発揮するには、目をつむる。そして一心不乱に祈った。
信治は強く思う。
サッカーがしたいと。
続く
誤字脱字を発見しましたので加筆修正を加えました。
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