第11話 無双が始まります。
びし、何か切り裂くような音が信治の側でする。
横を見てみると魔法陣が地面に書かれていて、魔法陣から真っ白な肌と中世的な顔して二枚の羽根を持つ黒い服をきた存在が現れた。
首からホイッスルをかけて、右手には黒い板を持っている。
何?
誰だ。
信治はびっくりして試合中である事を忘れる。
「あなたの願いは通じましたよ。私はサッカーの女神に使える天使で第四の審判です」
天使は優しく微笑みながら答える。
いきなりの登場で試合は止まっている。
天使は冷静に告げた。
「この試合は女神の名によって行われる種族間公式試合になりました。第四の審判を天使である私が努めます。主審の判断は尊重しますがおかしい事はおかしいと伝えます。それと時間の管理と得点に関する判断は私が行います。その判断する能力とスキルは併せ持っています。ゴブリンの主審は信治さんを入れてスローイングの開始を宣言してください」
ゴブリンの主審はびっくりしていると言うか、いやそれ以上に恐れている感じを見せている。
「て、天使、もちろんだ。試合をコントロールする。細かい所まで文句はつけるなよ。主審様だからよ。そこの人間は入れ。」
「信治さん、サイドハーフをお任せしても良いですか?」
信治はバツの悪そうにでもどこか恥ずかしそうに答える。
「俺の方がサイドバックは向いてそうだ。雪さんの本職は左サイドハーフなんでしょ。左サイドハーフは本職の雪さんがして欲しい。本職は左サイドバックなんだ。いくらでも走るし、空走りだっていとわない」
雪さんは微笑んで答えてくれる。
「そうですか?。左サイドハーフは良いのですか?。花形のポジションだから努めたくは無いのですか?」
「良いんだ。左サイドハーフとしては縦に走れても試合を作ったりできないからね。自分に嘘はつきたくない」
「分かりました。でしたら私が左サイドハーフを務めます。もう一度一緒に戦ってください」
「もちろん。雪さんの背中は俺が守るよ」
「そう言って信治は右手を差し出す」
少し照れた感じで雪は信治の手を取った。
「よろしくお願いします」
うつむき加減で照れ臭そうに握手を信治とする。
「試合中にいちゃつくな。試合再開だ。早くスローインをしろ」
ゴブリンの主審の怒号が響き渡る。
「みな正しいポジションを取れ。いつもの台形で戦うぞ」
アレックスの指示が出る。
「はい」
信治はそう言い左サイドバックの位置についた。
円は自分の目の前でボールをカットしようとするゴブリンの左サイドハーフを無視して、後方にいる環にスローイングする。
ゴブリンのフォワードは二人と信治のチームのセンターバックに張り付いており、ゴブリンのディフェンシブハーフはセンターバックの前の位置であるバイタルエリアから動こうとしない。
そのために環はまったくのプレッシャーがかかっていないナターリアにパスを渡す。ここでゴブリンのサイドハーフたちの混乱が始まる。
一番警戒をしないといけないプレイヤーは雪と王子だが、円のドリブルを見ている。
そして、円は良い位置にいて、パスを受ける動きをしている。誰をマークすべきか分からない。雪は誘うように王子のいるゴブリンのディフェンシブハーフに近づいていく。
ゴブリンの右サイドハーフとゴブリンのディフェンシブハーフの一人とゴブリンの右サイドバックはそれにつられた。致命的と言えないけど、防御体形に少しの狂いが生じた。
信治のマッチアップすべき対象はいない。今の自分の脚力が生かせる広大なスペースができたと感じる。
そして、一閃、信治は走り始める。ナターリアさんか雪さんからパスが来ると信じて、パスが来なくても相手を混乱させらえると思って信治は走る。
ナターリアは少しドリブルをして信治が高い位置を取ったのを確認すると、ゴブリンたちのディフェンスラインの後ろ側にロングフィードを行う。そのボールに向かって全力で信治は走る。
そのボールの意図にゴブリンたちは虚を付かれる。
そして信治はボールに追いつく。
オフサイドを心配したけど、第四の審判の威圧感がすごいのか、明らかゴブリン側に有利となる無理やりなオフサイドの判定はとられなかった。
ここで状況を理解したゴブリンたちは焦り始める。
信治はゴブリンのサイドバックが戻ってくるのを見て、グラウンダーの早いクロスをゴブリンのゴールキーパーとディフェンスラインの間に入れた。
シュタールがセンターバックから消える動きをしてファーサイドに動く。その動きを見てゴールキーパーは動けなくなり、センターバック二人に慌てて指示をだした。センターバックが動きスペースができる。少しあいたスペースに王子が走りこんで来た。ゴールキーパーは飛び出してボールを取るか一番危険なシュタールに対応するか迷う。それが命取りだった。
完全にフリーになっていた王子がゴールキーパーの手前でボールを押し込んだ。
ゴールネットが静かに揺れる。
虚を突かれたゴールキーパーは動けなかった。
「・・・・・・」
審判は押し黙っていた。
「新入り良くやったぉ。でも僕を走らせなるなだぉ」
王子が息を切らしながら、喜びの声を上げた。
王子は一生懸命にマークから消えて、一生懸命走ってゴールを決めた。
戦術的に正しい事は体の負担が超えても動くタイプみたいだと信治は思った。
でもゴブリンの審判は点数を入った事を認めない。
何かノーゴールの言い訳を考えている。
「人間の10番オフサイドぎゃ」
「うそだぉ!長い距離を走ってきたぉ。オフサイドじゃないお」
「ゴブリンの審判、一点です。」
「ノーゴールぎゃ。主審の判定は絶対ぎゃ」
静かに天使の審判は良い、マジックボードに得点を掲げた。
審判の天使は落ち着き払った声で告げた。
「時間管理と得点の確認については天使の審判に全権が与えられています。そう言ったはずです。得点を認とめないと審判能力の喪失を判断して私が主審を務めます。主審どうしますか?」
「人族一点だ」
ゴブリンは悔しそうに声を出した。
むぎゅうううう
「やったぁ。すごいね。信治さん」
円さんは点を取った興奮で抱き着いてきた。
それを見た環さんも来る。
「やるわね。良いクロスだったわよ。信治」
抱き着いてきてばしばし叩かれる。
「皆さん、はしたないですよ」
そう良いながら控えめに信治に雪が抱き着いてきた。
むぎゅ
雪さんの大きな胸が左腕に当たる。
女なの子はなんで根柔らかいのだろう。
転生して良かったなぁと思う信治だった。
でもゴブリンは二点取らないと行けなくなった。
苦しい展開が続くかもしれないなと信治は思う。
アレックスは言った。
「早くポジションにもどろう、ゴブリンは二点取りにくるぞ。みんな落ち着け、時間がかなり残っている。ゴブリンも死にもの狂いで来るだろうから打ち合いになるかもしれない。いつもどおり平静に、全てを出し切ろう。今度こそ後悔無く走り切ろう」
アレックスが号令をかける。
そうだ。まだたくさんの時間があるのだ。
続く
誤字を見つけましたのでていせいしました
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