社会復帰録タマミ 4
6.
2208年9月20日(月) PM7:30
明らかに様子が変だ。
みんな、特に何も用がない時はこのリビングでくつろぐのが常となっているけど、普段のリラックスした様子はなく、何かを気にしているようだ。
「ちょっと疲れたし、少し自分の部屋で横になっているよ。」
明らかにとってつけた理由でルカさんがリビングから出て行った。
あたしはおそらくあの部屋に関係することだと気づき、仕掛けをいつでも使えるようにスタンバイしておく。
「私も同人誌のネームを書きたいので今日はお暇させていただきます。」
ハナさんもまた適当な理由で部屋を後にする。今まで自分の趣味をやる時にいちいち報告なんてしていなかったのに明らかに不自然だ。
「ミクもいっぱい走って疲れたから今日はもう寝るね。」
超ハードプレイにも対応、あたしより身体スペックが高いミクちゃんがやっぱりとってつけた理由で退室する。
あと一人、ミカさんが適当な理由をつけて出て行ったらそこが勝負だ。
「私ももう少し絵の続きをやりたい。」
やっぱりミカさんも適当な理由で部屋を後にする。
あたしはミカさんがリビングのドアを閉めたと同時に静かにダッシュ、例の部屋の方を見る。
ちょうどミカさんは例の部屋のドアを開けて、入ろうとしている所だった。
あたしはそこで仕掛けを作動させる。
仕掛けは簡単だ、あたしが信号を送ると薄い鉄板が下に落ちてくるだけだ。それでドアが完全に締まるのを防ぐ寸法だ。
半開きだとなにか警報が出るかもしれないと、念のため、あたしの部屋のドアでも試したが、さすがに室内の部屋のカギにまでにそこまでの機能はついていないらしく、普通にドアが閉まりきるのを防止できた。
あたしは忍び足で例の部屋の前に行く。予想通り、ドアは完全に締まりきっていない。
あたしはゆっくりドアを開き、隙間から中を覗き込んだ。
ソファーにルカさんが座っているのが見える。ミカさんとハナさんがその両脇に座り、ルカさんに甘えるようにしなをつくっている。
視線を少し左に移すとミクちゃんが土下座しているが見えた。しかもルカさんはその土下座しているミクちゃんを足置きにしている!
どういうことだ?A級アンドロイドの虐待、暴行は犯罪ではなかったのか?
ルカさんはミクちゃんを足置きにするだけでは満足せずに、片足をミクちゃんの頭の上に置き踏みつける。
これはもう黙ってみているわけにはいかない。
あたしは意を決して室内に飛び込んだ。
「ルカさん!A級アンドロイドへの虐待は犯罪じゃなかったんですか!?」
さっきまで漂っていた淫靡な雰囲気は消え去り、みんなきょとんとした顔であたしを見ている。
ミクちゃんまで、まるで何を言ってるんだって顔をしている。どういうことだ?
ミクちゃんがおもむろに立ち上がりトテトテとあたしの前に来てしがみつく。
やはりミクちゃんは虐待されていたのだ!ってちょっと待て!ミクちゃんの力が強すぎる。ここから動けない!
ハナさんとミカさんもやってきて私の両脇にきて両サイドからがっしりと脇を固める。
「あ~あ、タマミねぇ、見ちゃったんだ…」
「もうこうなったらあなたにも仲間になってもらうしかありませんね。」
「大丈夫、ルカは優しい、ルカが嫌なら私が相手してもいい。」
みんな何を言ってるんだ?ミクちゃんは虐待されていたのではないのか?
「なんでみんなミクちゃんが足蹴にされているのに笑っていたんですか?おかしいですよ!」
「ミクねぇ…ああいう風にいじめられるの大好きなの…」
ミクちゃんが今まで見せたことのない淫靡な笑顔で私を見る。
待て、あたし!ここはどうにかしてわが身の貞操の危機を乗り切るのが先決ではないか!」
「あ…あの、あたしの勘違いだったようで…ハハハ…今日の所はお暇させていただきますね。」
「もう今日は返しませんよ?」
「誰にでも初めてはある、タマミにとって今日がその日だっただけ。」
もはやあたしには選択の余地は残されていないようだ。
そのまま、3人に引きずられていき、奥にある黒いシーツがかかったベッドに押し倒された。
-記憶領域に重大な損傷、回復不能-
2208年9月20日(月) PM10:30
うう…穢されてしまった。
いや冷凍睡眠前のあたしなら、こんな展開ですら夢のまた夢であって、美男美女に押し倒されての初体験なんてむしろ幸せと思わないといけない。
「初体験が5連結なんて滅多にない事、誇りに思っていい。」
ミカさんがフォローになっていないフォローをする。
「あ~タマミさんこれも渡しとくね。」
ルカさんがあたしのインプラントにこの部屋のカギを送ってきた。
もうあたしも関係者だから隠す必要がないという事だろう。
多分あたし、今後も誘われたら行っちゃうんだろうなあ…
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