21世紀喪女 9
13.
2208年9月16(金) PM6:00
ルカさんの家があるという住宅街のエリアは一言で言えば高級住宅地であった。広い敷地を贅沢に使った大きな平屋建ての家が多い。
その中でも一際目立つ大きなガレージがある家がルカさんのお宅らしい。
あたしは家の前で先に車から降り、ルカさんがガレージに車を駐車して戻ってくるのを待っていた。
そんな中、丸みを帯びた、卵を横にして半分に割ったようなデザインの車が静かに、ルカさんのお宅の隣の家に停車した。
どうやら、こういう車がこの時代本来の車らしい。
男が一人と年若い女の子が二人、車から降りてきた。
男の方は…あのボディ忘れようがない、わからっせ社製のボディだ!
わからっせ社製のボディの男は白い無地のトレーナーに、トランクスという、ルカさん曰く部屋着スタイルだ。
女の子の方は、本来隠すべきおっぱいと股間が全く隠れていないとんでもない痴女スタイルだ。
私自身、今着ている水着としか思えない服を痴女スタイルだと思っていたが、23世紀ではこの程度は普通。本当の痴女スタイルとは彼女らの事を言うらしい…
おっさんがいやらしい笑みを浮かべながら女の子二人を侍らしている。
女の子の方も嫌がる様子はなくむしろノリノリだ。
「あれ、カオルさんじゃないですか。」
ルカさんがあたしの後ろに立っていた。
どうやら、今しがた車を駐車場に戻して帰ってきたところらしい。
「ルカさんも今お戻りになられたところですか?」
「ええ、ちょっと色々ありまして…ああ、この娘が今日から僕の家で一緒に暮らすことになるタマミさんです。」
「た、タマミといいます。よろしくお願いします。」
「こちらの方こそよろしくお願いします。何か困ったことがあったら何でも言ってくださいね。」
このおっさん、状況次第ではセクハラにしか思えない言葉なのにやたら紳士的に感じる。
「カオルさん、このお二方は?」
「今日行ったMZRKランドで仲良くなりましてね、どうやら園内だけでは物足りなかったらしくて…ハハハ…」
「もう、おじさん早くお家でパコパコしようよ~」
信じられないが女の子ふたりはこのおっさんに夢中らしい。
おじさんと、女の子二人はそのまま隣の家に消えていった。
ルカさんが家の鍵を開け玄関に入る。
玄関もかなり広々として豪華なつくりだ。
「おっと、これを渡すのを忘れていた。」
ルカさんはそう言って私のインプラントに何かを送ってきた。
「これはなんですか?」
「うちの家のカギだよ、これをインストールしておけば次からは僕がいなくても自由に出入りできるから。」
靴を玄関で脱ぐと、再生センターでも見た奇妙なメカの小さい版がやってきて、靴をシューズロッカーに入れている。
この奇妙なメカは思った以上に一般的らしい。
そのままルカさんと一緒にクローゼットルームに入る。
先に送っておいた洋服達は既に部屋の衣装棚の一角に収まっていた。
他の同居人の衣服らしきものもかかっている。
「着ていた服は適当に脱ぎ捨てておいて、雑用メカが回収して洗濯してくれるから。」
そういってルカさんは当たり前のようにあたしの目の前で服を脱ぎ始めた。
「ちょっと、ルカさんまだあたしがいるんですよ!」
「ああ、この時代じゃ更衣室も男女同室だし、誰もみんな気にしないよ。」
みんなが気にしなくてもあたしが気にするのだ。
しかしこれが23世紀の当たり前なら郷に入るなら郷に従え、受け入れるしかない…
できるだけ体を見られないようにコソコソと着替える。
一方でルカさんは本当にみられることになんら羞恥心を感じていないようだ。
御立派様が丸見えにも関わらず気にするそぶりがまるでない。
あたしもなんとか着ていた服を脱ぎ、棚にあったついさっき買ったばかりのTシャツとパンティを穿く。
ルカさんもTシャツとトランクスだけしか身に着けていない。
どうやら本当にこれが常識のようだ。
ふと足元を見ると例の奇妙なメカがさっきまで着ていたあたしの服を回収している所だった。
しかし一人暮らしでならともかく、共同生活でこの格好は少し気恥ずかしい。
家族に紹介すると言ってルカさんはあたしをリビングに連れて行った。
部屋の中にはメイド服を着た高校生ぐらいと小学生ぐらいの女の子、そしてTシャツとトランクス姿の中学生ぐらいの銀髪の女の子が各々くつろいでいる所だった。
「みんな、今日から家で一緒に暮らすタマミさんだ。」
ルカさんがあたしをみんなに紹介する。
「初めまして、ハナと申します。」
「ミクだよ~よろしく~それとこの子たちがミトとムギだよ!」
高校生ぐらいのメイドはハナさん、小学生ぐらいの猫を抱えている方はミクちゃんというらしい。
この二人がルカさんの家のA級アンドロイドらしい。
「私はミカ、よろしく。」
ミカさんの方は人間だ。年齢は75歳、ひと昔前ならおばあちゃんだ。
ん?まってトランクスを穿いている?
「あの~差支えなければでよろしいのですが、ミカさんってその御立派様というか、男性器もつけられているのですか?」
「ついている。それがどうかしたの?」
「いえ…特に何もないです…」
今日一日でカルチャーショックをどれだけ受けたであろうか?
あたしはこの23世紀の世界で生きていけるのか、不安に押しつぶされそうだった。
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