マッド四国 怒りのお遍路ロード 10
14.
2208年4月20日(火) PM2:00
KGKからMJCまでの道中は心配された襲撃もなく、順調に進み俺達は松山城下町コミュニティの入り口に到着していた。
無法者への用心としてバリケードを築き、歩哨を立てるのはこれまで訪問したコミュニティでも同じだったので気にはしないのだが、問題はその歩哨だ。
「なんだあのチンピラ、21世紀初めでもあそこまで露骨なのは絶滅危惧種だったぞ」
「何と言いますか知性というものが感じられませんね。」
「ミクもここ好きじゃない…」
車列の後ろの方にいるミカさんとトオル氏にもこの異様な雰囲気について連絡しようとした矢先、管理者からコールが入る。
『コミュニティ内部に武装した勢力がいるのを確認しました。ドローンで撮影した映像解析の結果、前回の車列を襲った勢力と同じとみて間違いないでしょう』
自分の視覚にドローンによってマークされた武装勢力の動きがハイライトで表示される。
『武装勢力はこの先のすり鉢状のエリアの周辺に展開しています。恐らくそこで一斉攻撃を行い一網打尽にする計画なのでしょう。』
トオル氏が管理者に質問をする。
『それじゃあ予定通り俺達は亀のようにトラックに引きこもっていればいいのかい?』
『相手が攻撃しない限り我々は手を出せません、しかし一発でも撃つことがあれば直ちに行動を起こす予定です。すでに空挺ドロイド部隊はコミュニティ上空に待機、狙撃ドローンも展開済みです。皆さんが車内からでなければ武装勢力の一斉攻撃を受けたとしても受ける被害は0%です。皆さんがパニックにならず冷静に対処されることを期待します。』
さっきから門の前で停車したまま沈黙している俺達を変に思ったのだろう。歩哨に立っているチンピラがこっちに対してなにかわめいているようだ。
ここでだんまりを決め込んでも話は進展しない。俺は拡声器を使い、チンピラに話しかける。
「本土から来た支援隊です。開門お願いします。」
ようやく返事が来たことに満足したのか、それともこれから俺達を一網打尽にして物資をあさる事に対してなのか、チンピラはニヤニヤしながら開門するよう指示をする。
門を開けると正面にこれはまた絶滅危惧種としか思えない男が立っていた。
見た目は30代半ば、身長175cmぐらいに頭よりも体に栄養がいったと思われる軽い肥満体、21世紀初めまでに見られたヤンキー漫画に出てくるテンプレのようなヤンキーがそこにいた。
「おう、俺がここのリーダーやっている愛沢正義だ。これからとめる場所に案内するからちゃっちゃと仕事してくれや、コンピューターの下僕くん。」
誘導に従い集落内に入る。TNCの時もあまり歓迎された雰囲気ではなかったが、こっちの方はさらに顕著だ。みんな建物の中に引きこもっていて外には誰もいない。
そんな異様な雰囲気の中、誘導された先は管理者から連絡があった例のすり鉢状の底だった。
三方は切り立った崖、入り口は壁でふさがれており車両が入ったら入り口の門を閉める気満々だ。
誘導に従いすり鉢の底に停車する。崖上の連中は見えていないつもりなのだろうが、俺達にはいつでも発射できるように待機している事が丸わかりだ。
最後尾のタンクローリーが門を抜け停車した刹那、ロケット弾が発射される音が聞こえ、そしてほとんど間を置かずそれは爆発音に変わった。
俺達の車両にも2発のロケット弾が撃ち込まれた。着弾と同時に大きな爆発音が聞こえる。
ハナとミクは当たっても大丈夫だとわかっても怖いらしく俺にしがみついている。
俺はまるで動じていないように二人には見えているのかもしれないが、俺も怖かった。
いくら安全だと言われたところで見た目はただのトラック、わかっていても怖いものは怖いのだ。
しかし管理者の言う通り、トラックはロケット弾の着弾による爆発で車体が揺さぶられはしたものの俺達の乗る全ての車両の装甲は貫徹されることなく、無事にロケット弾の攻撃を防ぎきった。
ロケット弾の攻撃が効かなかったことでチンピラどもが慌てふためいているのがこちらでもわかる。
そして間髪を入れず、狙撃ドローンによる狙撃が行われる。
狙撃はチンピラどもの持っているロケット弾の発射機に寸分たがわず命中し、その機能を喪失させる。
次に円柱の形をした降下ポッドが空から降ってきた。
降下ポッドはほとんど減速せずに地面に突き刺さる。
突き刺さった降下ポッドからドロイド兵たちが放たれチンピラどもを制圧していった。
結局5分も経たずに愛沢正義を含めた襲撃者のチンピラどもは制圧された。
管理者から通信が入る。
『襲撃者は全て制圧いたしました。死者は襲撃者を含めてゼロ、皆様のご協力に感謝します。今回の襲撃により四国の特区指定をはく奪、政府の管理下に置かれることが決定されました。それに伴い、他の各コミュニティにも治安維持のためドロイド兵を派遣することが決定されました。支援隊の方々は支援業務を再開してください。』
リーダー不在となったMJCについては暫定的に管理コンピューターが管理を行うらしい。最終的にはメガロシティ同様に、形だけの人間の指導者が選定されることになるのだろう。
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