マッド四国 怒りのお遍路ロード 9

12.

2208年4月12日(月) PM2:00


車列は高知漁業組合ことKGKの集落入り口に到着した。

やはり無法者に対しての用心として見張り台に銃を持った歩哨が立っていたのだが、TNCの時とは違い、こちらの車列に気がつくやいなや、大きく手を振る事で歓迎の意を表してきたことだ。

門もすぐに開き、中から地黒の180cmはあるであろう偉丈夫がこちらに向かって歩いてきた。

「ようこそ高知漁業組合へ!本当によく来てくれた!君たちを歓迎するためにちょっとした祝宴の準備もさせてもらった、さぁ中に入ってくれ!」

案内された場所もTNCとは違い集落の中心地と思しき広場へ案内された。広場に着くまでも集落の人たちはみんな笑顔で手を振って歓迎してくれている。

指定された広場に車両を止め、ここでも自分の仕事をするべく目録を手にして集落のリーダーの元へと赴く。

「初めまして、今回の輸送隊のリーダーを務めさせていただいていますルカと申します。どうぞよろしくお願いします。」

「こちらの方こそよく来てくれた!俺がリーダーの高島純平だ。他のみんなも歓迎してくれている。集会所に食事の用意をさせてもらった。土佐湾の海の幸を思う存分味わってくれ。」

荷物の積み下ろしとブースの設営をドロイド達に任せ、俺たちは純平氏と共に集落の集会所にやってきた。

「まぁ、このお魚さん達は全て天然ものですの?」

エーリカが机の上に並べられた料理を見て感嘆した。

「もちろんだ、客人にフードプリンターで成形した食事なんて出せないよ、ぜひともこの天然の味を味わってくれ!」

俺も机いっぱいに並べられた数の海の幸に目を奪われていた。

もしこれだけの天然物をメガロシティで食べようとしたら、相当のリソースポイントが必要になる。

「ここでは魚は天然物を食べるのが日常的なのですか?」

俺は純平氏に問いかける。

「もちろんだ、集落で消費する分を確保するのは大した労力じゃない、それにいくらかの魚はおたくらメガロシティの方にも卸させてもらっている。その収益でこちらはより多くの支援物資が手に入り、よりよい生活ができる。まさにwinwinってやつだな!」

事実KGKへの支援物資の量は他の集落と比べても頭一つ抜けて多い。

周りを見渡すと既に他のみんなは思い思いに様々な料理に手を付け始めている。

俺も今はこの海の幸を思う存分味わうことに専念することにしよう。


13.

2208年4月20日(火) AM10:00


朝から夕方まで仕事をして、夕食はコミュニティが準備してくれるうまい飯を味わう。

そんな楽しい生活もあっという間に過ぎ去り、出発の時が来てしまった。

TNCの時はVRに引きこもりっぱなしのエーリカお嬢様だったが、KGKでは特に集落内での移動の制限もなく自由に見て回れたので、連れのアンドロイド二人をお供にいろんなところにちょっかいを出していたそうだ。

マックスも海で釣りにチャレンジしたりとそれなりに楽しんできたようだ。見た目はともかく、心まで完全に世紀末仕様って訳じゃないらしい。

俺はTNCの時に手伝いを申し出た手前、こっちでは自由にさせてもらいますとは言えずミカさんと二人で技術支援にいそしんでいた。

ミカさんと一緒にいるのは楽しいのでそれは別に構わないのだが、ちょっとだけ残念である。

ハナとミクにはTNCでは同じ技術支援の手伝いをしてもらっていたが、こちらでは自由行動にさせてもらった。ハナとミクも魚を釣ったり、海岸を散歩したりと、とてもいい経験ができたらしく、ここを離れることを残念に感じている。

特にミクはここを本当に気に入ったらしく、俺にナチュラリストに転向しないか聞いてきたぐらいだ。

しかし楽しい時間はこれまで、これから今回の仕事で一番の曲者である松島城下町コミュニティーに赴かなければならない。

門を出たらどこで攻撃を受けるのかわからない。

昨日までとはうって変わってみんなピリピリしているのが肌で感じられる。

後ろ髪をひかれる思いと、これから待ち受ける困難に対する緊張感を感じながら、俺達は松島城下町コミュニティーに向かい出発した。

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