マッド四国 怒りのお遍路ロード 8

10.

2208年4月12日(月) AM9:00


朝食を取り、ミカさんと一緒に技術支援の仕事をするために外に出るとそこには既に結構な人だかりができていた。

ナチュラリストコミュニティの警備が四苦八苦しながら住民を抑え、列を形成するように促している。

トオルさんの方を見ると医療支援の方は既に準備ができているようだ。

こちらの技術支援も準備が完了したので出入り口を抑えているコミュニティの警備に連絡をする。

警備の人が封鎖を解くと住民たちは我先へと俺達の元へかけてきた。

俺達がいる技術支援の方には、小さいのは時計から、大きいのはトラクターまで様々なものが運び込まれてくる。

これらをスキャナーで走査し異常のある部品を交換していくのが大まかな流れだ。

とはいっても修理を実際にするのは人間ではない。トレーラーに積載してきた組み立て式の修理装置に壊れた物を置くだけだ。

あとは修理装置がオートで壊れている部分を特定、ナノマテリアルプリンタで交換部品を作り上げ、それを組み込めば終わりだ。

しかし見ていて面白いのは、例えばトラクターのエンジンのクランクシャフトが壊れていると診断するやいなや、壊れたエンジンをもいで新しいエンジンに載せかえてしまうところだ。

壊れ具合によっては、元の部品は1割も残っていない。

ちなみにもがれた壊れた部品はリサイクル炉に送り込まれナノマテリアル素材として再生される。

医療チームの方は病気に苦しむ人相手にメディステーションで作成した薬を処方している。

また彼ら医療チームは病気診療のブースの他に、新生児受付のブースがあり、そこではコミュニティ内で生まれた新生児達に予防接種とメタタグ埋め込みを行っている。

このメタタグを持った人々の人数がコミュニティに配給される支援物資の量に直結するため、どこのコミュニティもこの新生児達へのメタタグ埋め込みに対しては積極的だ。

技術支援チームを手伝っている俺以外の輸送隊の面々はどうしているかというと、マックスはこの様子を遠巻きにずっと観察している。

何となく楽しそうに見えるのは、自分の好きな作品みたいな世界が目の前に広がっているからだろう。

エーリカお嬢様は広場より外に出られないと聞くやいなや、トラックの中に引きこもってしまった。食事やトイレ、睡眠の時以外はずっとVRに潜っているらしい。

ちなみにコフィンユニットがあれば食事やトイレに睡眠等もVR内に潜った状態で行えるが、インプラントのみのVRではこれらは現実でこなさないといけない。

それと俺達はミカさんのキャンピングカーに泊まる事になったので、余った自分のトラックのベッドをユーミさんとナターシャさんに提供したらすごく感謝された。

二人曰くお嬢様は悪い人間ではないとのだが、とにかく自分の事を最優先とするので、こういう限られたリソースをやりくりしなければならない環境ではどうしても自分達にしわ寄せが来てしまうらしい。

朝から夕方まではひたすら持ち込まれた機械の修理を行い、夜はミカさんと気持ちのいいトレーニングに励んでいたら、あっという間に撤収の日となった。


11.

2208年4月12日(月) AM10:00


機材の片づけ、積み込みも完了し、俺たちはTNCを離れ次の支援地である高知漁業組合へと出発した。

四国の道は各コミュニティーを繋ぐ道路は支援物資を積んだ大型トレーラーを通すため、それなりに整備されている。

しかしそれ以外の道路は全く整備されておらず、周囲を見回すと旧世紀には使われていたであろう道路に朽ち果てた集落が目に入る。

今の日本は五つのメガロシティ、そして京都、奈良、富士山周辺といった観光都市を除けばどこもこんな感じだ。

俺は年齢がまだ二桁台だったころの郷愁にふける中、車列は自動運転で次の目的地へ向かっていくのであった。

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