マッド四国 怒りのお遍路ロード 6
8.
2208年4月11日(日) AM8:00
俺達はホテルを出発し、最初の目的地、徳島を目指して走っていた。
俺達輸送スタッフのトレーラー3台の他に、技術支援スタッフが乗る電源車とタンクローリー、バスタイプのキャンピングカーが2台、医療支援スタッフが乗る移動診療車とバスタイプのキャンピングカーが2台、全部で10台の車両で構成されている。
俺はインプラントで出発前に配布された支援隊のメンバーリストを呼び出し、医療支援隊のリーダーであるトオル氏にコールする。
「輸送隊のリーダーのルカです。おはようございます。」
「ああ、おはよう。医療支援隊のリーダーをやらせてもらっているトオルだ。」
「昨日の懇親会ではお話できなかったので今連絡させていただきました。」
「ああ、構わんよ。俺はああいうのは苦手でね、早々に退散させてもらっていたんだ。」
「あれにはびっくりしました…懇親会が乱パも兼ねているなんて聞いていませんよ。」
「その割には技術支援隊のリーダーとは仲良くやっていたようだけど?」
「あれは成り行きで…自分はああいうのは嫌いじゃないというのもありますけど。」
「ハハハ…正直者は俺は好きだよ。それで話したい事はなんだい?まさか昨日の懇親会の事を話すためにコールしたわけじゃないだろ?」
「ええ、前回の支援隊が襲撃された件と今回の仕事の内容についてです。今回の車両の重装甲化に移動ルートの変更、さらに空挺ドロイド部隊が即応待機している件、どうも襲撃される事前提で物事が進んでいるように思えて仕方がないのです。」
「ああ…おそらく襲撃はあるだろうね。今回のルートは最初に比較的穏健派のTNCこと徳島ナチュラリストコミュニティー、4つある中では一番の穏健派、高知漁業組合ことKGK、先日、先代リーダーが死んで、新リーダーが就任してから急速に先鋭化しつつある、松島城下町コミュニティー、MJC、そして香川ミカン連合ことKMR、この順で回るんだが、どうやらMJCが何かを企んでいるらしい。」
「ミカさんが言うには今回の車両は重装甲化されているので、襲撃されたらとにかく車内に引きこもっているのが正解だと言ってましたが…」
「ああ、俺もその意見には賛成だ、管理者も言っていただろ?襲撃を受けた段階で最優先事項は俺たちの生命確保に変更されるって。」
「つまり管理者としては僕達が襲われることは織り込み済みだということですか?」
「恐らくだけどな、管理者様が何を考えているのかは知らんが、前回の支援隊の連中みたいな事になるのだけはまっぴらごめんだ。」
「自分もそう思います。」
「まったく、不老不死だといっても何も変わらんな。」
「実のところ、僕はこの仕事に参加するまで死んでも、バックアップからすぐに再生できるから死ぬ事は大したことじゃないと思っていたんです。でも今は死ぬのが怖いです。」
「それが正しい反応さ、大抵の連中は死んで再生してから後悔するんだ。死ぬ前にそれに気が付けただけ君は運がいい。」
トオル氏との会話を終了して、椅子にもたれかかる。
車列はちょうど鳴門大橋に入ったところだ。
ミクは窓越しにみえる渦潮を見て興奮している。
彼女達も死んだら後悔するのだろうか?
そもそも人間とは違い、アンドロイドは正気を失ったら廃棄処分だ。
狂っても生かされ続けるのと処分される、どっちがマシなのだろうか?
車列は順調に進み続け、四国本土に入った。
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