マッド四国 怒りのお遍路ロード 4

4.

2208年4月9日(土) PM20:00


明日からの仕事に備え俺たちは荷造りに追われていた。

さすがにミトとムギは連れていけないので、明日からペットシッターが来てくれることになっている。

とはいえ、持っていくものはそこまで多くはない。

アメニティ関連は備え付きのナノマテリアルプリンタで製造できるし、食べ物も同様にフードプリンタで作ることができる。よって俺たちが持っていくものは着替えと持ち込みの武器ぐらいなものだ。

俺とハナはサバゲを嗜んでいるおかげで、ノステク銃はそれなりの数がそろっている。

今回は俺はMP-5、ハナはクリスヴェクターを選んだ。どっちも9mm弾仕様なので弾薬の融通が利く。

ちなみに残ったミクには戦闘が始まった時にはトラック内から出ないよう指示してある。

先方にもトラックのカスタム内容は発注済み、とは言っても俺が注文を出したのはトラックの塗装だけだ。

それよりも俺はあの説明会の日からずっと脳を破壊された時のリスクについて考えていた。

200年以上も生きているくせに、自分は未だに脳破壊童貞なのだ。

それに脳を破壊されることなんて、ゲームで残機一つ失う程度にしか俺は思っていなかった。

バックアップがあるから大丈夫、そう気軽に考えていた、しかし前回のスタッフが大きな心的外傷を患い現在も治療中と聞かされ、俺は自身の考えがいかに甘かったかを思い知らされた。

とにかく3人とも五体満足で無事に帰らなければ…

その日俺は数十年ぶりに不安でよく眠れない夜を過ごすこととなった。


5.

2208年4月10日(日) AM7:45


出発の日の朝、俺たちは集合場所となるメガロシティ郊外、ファクトリーエリアの倉庫に来ていた。

既にトレーラーへの荷物の積み込みは完了しており、アンドロイド達はトレーラーヘッドをトレーラーに連結する作業を行っている。

あとは待機している俺たちがトレーラーヘッドのキャビンに荷物を積み込めば、出発というわけだ。

他の2チームも、自分たちと同じく待機所の窓越しに作業を眺めている。

俺たちが持ち込む荷物は各人の着替えが入ったトランクケース、その他にガンケースが二つに弾薬箱が1箱といった具合だ。

マックスチームはさすがだ、二人とも大きめのミリタリーバッグ一つで納めている。

問題はエーリカだ…衣装ケースがちょっとした山といった具合に積まれている。

「あのエーリカさん、この量の衣服はさすがにキャビンに入りきらないのでは?」

「大丈夫ですわ、ベッドスペースとリビングスペースを小さくしてクローゼットに改装してもらいましたから。」

「とはいえ、そんなに服は必要ないでしょう。多目的洗濯機も装備されているのですし、それで洗濯すればいいじゃないですか。」

「わたくしの服は全て多目的洗濯機では洗えないんですもの…そうなったら一回着たら捨てるしかないですわ…そのためにも万が一も含めて3か月分準備いたしましたの。」

「それだと残りの二人が寝るスペースがないように思えるのですが…」

「彼女たちには運転席と助手席で寝てもらいますわ。」

どうやらエーリカにとってはA級アンドロイドも雑用メカやB級、C級アンドロイドと同じようなものらしい。

B級やC級アンドロイドであれば感情表現も疑似的なものだし、その扱いで問題ないのだろうが…後ろにいる二人を見ると既に死んだ魚のような眼をしている。ちなみに彼女たちが着ているのは白いタンクトップに迷彩ズボン、ジャングルブーツと説明会の時のような優雅さはまるでない。

服装に関しては、俺達3人もサテンレオタードの上につなぎを着こみジャングルブーツという、洗濯のしやすさを優先したいでたちなので似たようなものなのだが…

それに個人的にはつなぎなんて着たくはないのだが、四国は未だ200年前のカビの生えた道徳観で凝り固まっているのでやむなしだ。

ちなみにマックスチームは事前説明会と全く同じ格好だ。

そんなやり取りをしている間にトラックの準備が完了したことを作業アンドロイドの一人が俺たちに伝える。

俺たちの乗るトラックは雑用メカ、工事用ロボットなどの機械類、空いているスペースにナノマテリアル素材が詰め込まれている。トレーラーヘッドの色は赤と青、名前はオープライムだ。

エーリカ車の荷物はすべてナノマテリアル素材、トレーラーヘッドはピンク一色、名前はローゼンキャッスル。

マックス車はGリキッドを積んだタンカーを引いている。トレーラーヘッドの色は黒にメタル、そしてボンネット前に馬の頭蓋骨が取り付けられている。名前はイクサリグ。

こいつ、どれだけマッ〇マックス好きなんだよ。

ちなみにGリキッドというのは核融合発電を使用した膨大なエネルギーでワームホールを開き、そこからグラビトン粒子を取り出し液体状に変化させたものだ。このGリキッドはエネルギー転換装置を通すことで軽油、重油、ガソリン、ナフサ、天然ガスといった様々なエネルギー資源に変換することができる。

これのおかげで内燃機関は今も廃れずに生き残っている。

ちなみにこのGリキッドとエネルギー転換装置、量子コンピュータと量子テレポーション通信、ナノマテリアル粒子とナノマテリアルプリンタ、この3つが21世紀の三大発明とされている。

作業アンドロイドが待機所にやってきて準備が完了したことを告げた。

さあ出発だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る