2208年1月11日(月)祝日 6

6.

2208年1月11日(月)祝日 PM15:20


いまだに眠気由来の気怠さを感じながら俺は二人とともに家へ帰ってきた。

玄関の前に立つと家が俺と二人のタグを検知し、ロック解除、ドアが横にスライドして家の持ち主を迎え入れる。

3人そろってクローゼットルームに入ると、朝と同様に無造作に服を脱ぎ捨てる。

すると部屋の隅にある透明なパイプのシューターが繋がった装置から、30cm程の円筒形の筒が6個吐き出され、内部に格納されていた細長い有機体の手足を展開し、3人の脱ぎ捨てた服を回収、使用済みのトレーニングウェア類が入っている鞄からも使用済みの衣類一式を回収していく。

彼らがこの家の雑用を一手に引き受ける雑用メカだ。一応製品名はちゃんとあるらしいが、自動的に改良されたモデルに置き換わるため、いちいち製品名を覚えるのも面倒なので俺はそう呼んでいる。

彼らはこちらに入ってきた時のシューターは使わずに、使用済みの衣類をもって洗濯場へ歩いて移動して行った。

これらの使用済みの衣類は服に内蔵されたメタタグと雑用メカに内蔵されたセンサーで材質、汚れ等の状態を判断し、雑用メカの手と洗濯場にある多目的洗濯乾燥機を使い、最適な方法でクリーニングが行われる。

Nラバー製の衣服は日常で着れる程度には快適さが確保されてはいるが、洗濯に関しては旧来のラバー素材と同様に洗濯機厳禁、手洗いでしか洗濯できない。

もしこれを自分の手で洗濯しなければならなくなったら、日常的に着ることなんて到底できないだろう。

俺は朝と同様に大きめのTシャツにトランクスタイプのパンツ、ハナも今朝と同様の布製のヴィクトリアンスタイルのメイド服に、ミクは…子供向けの動物パジャマを着ていた…

「ミク、これから夕飯の準備があるというのに、なんですかこの格好は?」

「え~…ミク、今日はもう疲れたし、ミクはミクでルカにぃにくっついて癒しを与えるって大事な仕事があるからこれでいいの!ほら、ルカにぃもハナねぇに言ってやってよ」

「ミク、ハナの事手伝ってやりな」

「しょうがないなぁ…」

しぶしぶといった感じでミクは動物パジャマを脱ぎ捨て、メイド服に着替えなおす。

ミクの方は今度は朝のヴィクトリアンスタイルではなく、さっきまで着ていたラバーメイド服の布版といったデザインだ。

ミクが再度着替えているその間にまた雑用メカがやってきて、ミクの脱ぎ捨てた動物パジャマを回収し、去っていった。

俺はリビングに戻り、インプラントを使ってテレビの電源を入れた。

選んだチャンネルは24時間、世界のパノラマ映像と落ち着いたクラシック音楽が流れる、BGV向けのチャンネルだ。

わざわざノステクなテレビなんてインプラントを使えば不要なのだが、インプラントで見るのと実際のテレビで見るのでは自身にインプットされる情報量が全然違う。

この場合だとテレビの方がインプットされる情報量が少ないわけだが、何かをやりながらのBGVとして利用するのであればこっちの方が都合がいい。

キッチンの方を見るとハナとミクが夕食の用意をしている。ミクの方はお菓子を食べながらハナが準備しているのを眺めているだけだが…

しかし俺もハナもそのことを咎めない。ミクの使用しているLolandテクノロジー社のボディは小さいボディでいかなるハードプレイにも耐えられる強靭さと回復力を両立させた結果、燃費がすこぶる悪いのだ。

ミクの場合はそれだけでなく、ただ怠け者なだけなのもあるのだが…

そんないつもの日常を眺めながら、俺はリビングの机に置いてあったタブレット端末を手に取り、ソファーに寝ころび、すり寄ってきた猫たちを撫でつつ昼間読んでいた冒険者ボーダンシリーズの続きを読み始めた。

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