第6話:労働、生きる目的
柊が入社した会社は、とにかく社員が真面目な印象だった。
入社のオリエンテーションを終え、柊は書類整理の仕事をあてがわれた。紙で提出された履歴書や入社関係書類をシステムに入力していき、それらをファイリングする。この仕事は障がい者チームでは柊だけが携わることになり、一日にこなさなければならない履歴書の分量は二十人程度だった。
その仕事に数日従事して分かったのは、入力後二回見直しをして、更に他の人にチェックを依頼したとしても、午後二時には終わる分量だった。定時は午後五時である。
柊は「障がい者」雇用枠で入社したので、上司を除きチーム全員が何らかの障害者手帳を持っている。みんな仕事が終わったら上司に仕事の報告をし、次の指示を受ける形になっていた。
「佐伯さん、入力の仕事が終わりました」
上司の佐伯は、柊より二、三才若く見え、いかにも普通のOLといった女性だった。柊はそういう女性がつけている腕時計を見る度に、あの小ささでよく何時かすぐに把握できるものだなと思った。柊からしたら、普通のOLの外見はそれくらいしか印象に残るところがない。
「御手洗さん、早いですね。ありがとうございます」
「この後はどうしたらよいでしょうか」
「ちょっと確認するから、自席で待っててもらえますか」
「承知しました」
天気のいい春の午後。柊が最も苦手な時間帯だ。眠くなる。とにかく眠いし、穏やかすぎて人生が間延びした気分になる。時間を有意義に使いたいのに、頭がぼーっとして、身体もシャキッとせず、そうしたくなくても気持ちがだらけてしまう時間。午後二時から四時を饅頭に例えるとしよう。倦怠感というずっしりとした厚い生地が、やる気というほんの小さな、ぼそぼその餡を覆い隠している。いっそ眠って夕方までショートカット出来ればいいが、会社ではそうもいかない。
柊は元々ハキハキした性分で、リラックスや、まったりという言葉は嫌悪していた。ましてはっきり意識を保っていたいのにそうできなくて、やることもなくただ時間をやり過ごさなければならないのは苦痛だった。それはまるで自分のこれまでの人生の様だった。やりたいことは山ほどあるのに、身体を思う様に動かすこともできず、ただ時間だけが過ぎていく。
柊は双極性感情障害、分かりやすく言うなら躁うつ病だった。双極性障害は、特に躁状態に注意を払わなければならない。躁状態の時は万能感に満ちる。クレジットカードを作りまくって返済出来ずに訴訟を起こされたのも、選挙に出馬しようとして母親に供託金をせがむため毎晩電話をかけていた時期も、全て躁状態の時だった。躁は周囲に迷惑がかかるだけではなく、その後のうつが一層重くなるのも非常に厄介だ。寝たきりで、排泄や呼吸、意識を保っていることさえも嫌になる。最悪のケースは自殺である。
しかし、精神疾患は個々人によって差がある。柊を例にとると、死にたい当人にとって死は最悪どころか大成功の道だが、そこまで辿り着くことが難しい。自殺にはそれなりの意欲が必要で、うつはその意欲すらも奪うからだ。だからうつの場合、自殺願望という積極的な意志よりは、「とにかく死なないかな、消えちゃわないかな」という希死念慮に支配されていると表現する方が近い。とにかく床に臥せって何にもしたくないのだから、自殺という大業を成し遂げる気力が湧かないのである。死にたいというよりは、消えたいのだ。
話を戻そう。とにかく、柊の場合、躁を防ぐことが第一であり、そのため精神安定剤を大量に飲んでいた。気分の高揚は薬によってシナプス活動の段階で抑え込んでいるので、落ち込んでも自力で気分を上げられない。退院出来たのは、躁がある程度落ち着き、周囲に被害を及ぼすレベルではないと分かったからだった。うつ状態も自殺になるほどではないと判断されたからだったが、それでも大体は暗い気分で、身体全体が浮腫み、倦怠感がつきまとって何もやる気が起きなかった。そのくせ「やらなきゃいけないのに、自分は駄目な人間だ」という自責の念はしっかり湧くものだから、自分を密室に監禁した上で痛めつけている様なものだった。
だが、思い返せば躁うつ病が発症した二十代前半より前も、つまり人生そのものが、何も成すことなく時間だけが過ぎて行ってしまっていたなと、柊は感じることがあった。そして「何も成すことなく」と思っているということは、「何かを成すべきなのだ」という意識の裏返しであることも、気付いていた。
……来ないぞ。
佐伯が来ない。佐伯の席を見ると、いない。社用携帯にもパソコン画面にも彼女からの通知は来ていない。チーム内で共有しているスケジュール表を見てみた。現在午後二時十五分。佐伯は午後二時から五時半まで外出、とある。つまり終業まで佐伯と会うことはないし、柊に仕事を出す人間はいない。
どうすんだよ……。
倦怠感が憂鬱に変わり始めた。周りはコツコツと、振られた仕事に没頭している。ひたすらエクセルに入力をしたり、印鑑を規則正しく押したり、延々と何かの紙を折り続けたり。会話はない。他の業務管理者に聞いてみても、佐伯の許可がないと仕事が与えられないとのことだった。メンバーに余計な負担をかけないために、ひとりひとりの仕事量はきっちり管理されており、柊の仕事量に関しては佐伯だけが把握しているのだ。
残り二時間半近くを、何もすることなく過ごさなくてはならない。とりあえず自販機のある休憩スペースにコーヒーを飲みに行った。だがあまり長く離席していると「御手洗さんが失踪した」みたいな騒ぎになりかねないのではと思い、十分かそこらで戻ってきた。
柊の会社は顧客情報を多く扱うため、パソコンに何重ものロックがかけられ、不要なネットサーフィンは禁じられており、ゲームなどをやることは論外だった。
この間も柊は「何かをしなくてはならないのに」という気持ちに襲われていた。実際、柊に責任はなく、この状態ではどうしようもないから適当にサボっていれば良かった。だが周りは黙々と作業をし、柊の席の背後に広がる人事部では大きな問題が発覚したのか、誰しもが慌ただしくやり取りをしていて、ピリピリとした会話が柊にまではっきり聞こえて来た。
聞き漏れるところによると、一部の新入社員への入社日の告知と人員配置に大きなミスがあったようで、こんなことは柊にひとかけらの責任があるはずもなかった。それでも柊は手持ち無沙汰で何もしていない自分が「何か悪いことをしているのではないか」という気分になりかけていた。うつ症状が出始めると、何でも自分のせいだと思い込んでしまう。自分が何もしていないことに、自分の存在そのものに罪悪感を覚える。こんな役立たずな自分は、ここに居ていいのだろうか。
自席のそばの人事部の会話が刺々しすぎるので、柊は自分の担当している履歴書が仕舞われているキャビネットに移動した。何度もチェックした履歴書を見直す。謂わば仕事をしているフリだ。
履歴書にはみな、それなりの経歴が載っていた。柊が扱うのは、ヘッドハンティングをされた管理職候補の履歴書だった。そのため一日にこなす人数が少なかったのだが、どの候補者も国内外二つの大学に通っていたとか、前職でMBA取得とか、錚々たる経歴だった。とは言え、柊と同じ大学出身の人も多かった。柊は高校生の時、受験勉強のため軍人の様な規律ある生活を送り、偏差値を三十台から七十にまで上げた。それなりに名の知れた大学の政治学科に入学したが、柊はその大学の入学式で「ここにいる人間は自分と同じかそれ以上に頭がいい」と悟ったため、学歴にむしろコンプレックスがあるくらいだった。ここに記載されている候補者達の年収と社会的地位を考えると、同じ大学を出たとは言え、それに相応しい人生を送って来たかといえば、大違いである。下流も下流。アルバイト先でもパートを三つ掛け持ちしている中年女性に「あなたって、この程度であの大学なんだ。学歴って実社会ではあんまり意味ないよね」と言われたことがある。これはある種の真理である。学歴が意味を持つ世界もあれば持たない世界もある。麗子は病気のせいだとか、柊が向いている場所は他にあるとか励ましてくれたが、柊自身からしたらガリ勉で試験の対策をしただけで、有能であるかと言われればそうではないと思っていた。
大学卒業後、やはり映像の道に入りたいと考えて映画学校に入ったが、そこに来ている人間が嫌でたまらなかった。教室の机を投げ飛ばして退学が決まった頃、たまたま新人映画監督の助監督の話を持ちかけられ、二つ返事で飛び込んだところ、心身共にボロボロになった。その頃からうつ状態になり、それでも「この業界はこういうものだ」と思って続けた。ある日突然身体が全く動かなくなり、数日家に篭って、監督から「お前はもう要らない」と電話を受けた瞬間に躁転した。その日から数日間、不眠でアパートの壁や床や天井に、油性マジックで支離滅裂な脚本を書き連ねた。タイトルは『罪人地層処分計画』。ただでさえ感情の起伏が激しい柊が「発症」したのは、この頃だった。
だが、そんな柊でもこのくらいの仕事は午後二時に終わらせられるのだ。ウィンドウズのキーボード入力が出来さえすればいいのだから。
その日から柊は、三十才にして初の会社勤めが出来た喜びよりも、自分の人生に対する焦燥感を覚える様になった。
「何か成さないといけないのに」
翌日。
佐伯はまた昨日と同じ分量の仕事を渡して来た。
「すみません、佐伯さん今日も外出だと思うんですけど、昨日いらっしゃらない間に終わっちゃって。もし仕事あれば、多めに頂けるとありがたいのですが」
佐伯の指示が不足していたことは措き、控えめに頼んでみると、佐伯は一瞬手帳を確認した。
「分かりました。ただ今からミーティングなので、それが終わってからでもいいですか。私からお声掛けしますので」
佐伯は少し落ち着きがなかった。手帳には文字がびっしりで、どうも手一杯な様子だったので、柊は承知しましたと伝え、またエリート達の履歴書を持って自席に戻った。
慌ててやるから良くないんだ。誰も急かしていないんだから、ゆっくりやろう。
システムを起動して、書類番号を確認して、ミスのないように入力して行く。ネット通販の購入者情報の入力に近い作業だ。
「清水賢太郎、三十三才。東京都世田谷区成城……在住。推薦者・吉田修専務。慶應義塾大学在学中にイギリスに短期留学。卒業後、大誠証券入社。社費にてボストン大学に留学。複数の海外プロジェクトのマネージャーを務める。在職中……」
なんか、しんどくなって来た。
単なる文字列として一気呵成に入力するなら気にならないが、一つ一つの項目をゆっくり確認していくと、清水賢太郎氏の人生を想像してしまう。私大に入って留学。留学するだけの資金が実家にあるか、もしくは彼が学生だてらに留学資金を貯めるほどのやる気とバイタリティがあったか、もしくは成績優秀で費用が免除されたか。住所が成城で建物名も部屋番号もない。この歳で自分で戸建ての家を買うとしても成城はあんまり選ばなさそうだから、実家住まいでお金持ちなのかもしれない。社費にて留学……お金払ってでも伸ばすべき人材、幹部候補だ。それを引き抜こうっていうんだから、もしうちの会社に来るなら相当なボーナスが支給されるはず……
柊は逞しい想像力の持ち主だった。そしてそれを表現するだけの器用さも持ち合わせていた。大学では政治哲学を専攻していたが、大学一年で履修した課外授業の映像制作では講師として来た有名監督に褒められたことがあった。柊と麗子の父・御手洗悟は、映像作家である。悟はコマーシャルの製作現場にいて、映画監督としては寡作ではあったが、映像関係者の中では独特な存在感を放つ監督として支持されていた。柊はそのことを黙っていたが、御手洗という姓から、その授業で悟の娘だと気付かれてしまい、大学の映像関係の教授や学生に一目置かれるようになっていた。
だが、柊は父親に言及されることを快く思わなかった。悟は柊が中学二年生になる直前の春休みに、失踪していた。そして、十五才の時に死んでいることが分かったのだ。
おいおい、たかがデータ入力の作業で人生の暗黒面に触れるなんて勘弁してくれよ。こっちは折角真人間になって会社員として地道に仕事してるのに、伝説のクリエイター御手洗悟、a.k.a.無責任クソ親父の話はやめろ。
柊は愚にもつかない考えを打ち消すように、吉田専務による推薦文をキーボードで叩き込んだ。やはり、集中して取り組むのが一番だ。
昼休みになった。起床に精一杯なので朝食抜きだったのと、ストレスの発散も兼ねて大量に買い込み、いっぺんに掻き込んだ。それが、良くなかった。
午後二時前。睡魔。圧倒的な眠気が柊の心身の上にずっしりとのし掛かっていた。意識はほぼ途切れそうで、生温い空気と人事部の女性のヒステリーに近い愚痴だけがうっすら認識できる。頭が重いのが一番辛い。作業どころか、座っていることさえ辛い。横になりたい。もうとにかく横になりたい。そう思ったところで、佐伯のことを思い出した。佐伯、また来ねぇじゃん。
残りの履歴書は三人分。通常なら一時間もかからず終わる分量である。一人に一時間かけるならちょうどであるが、そんなペースで入力していたら間違いなく眠りこけてしまう。
佐伯の席を見ると、やはりいなかった。更に、彼女のカバンとコートもなかった。柊は目をこすってから、別の業務指示者の席に向かった。
「お忙しいところすみません。佐伯さん、外出されてますか」
「ああ、そうだね。同行するマネージャーの予定が変わって、早めに出たみたいよ」
「そうですか……」
「もしかして、また仕事終わっちゃったかな」
「そうですね、あと三人分はあるんですが」
「御手洗さん、早いからなぁ。とりあえずそれやって、終わったら俺に声かけて。あと、俺からも、佐伯さんに御手洗さんの仕事のペースのこと話しておくから」
柊は頭を下げて、自席に戻った。話していれば眠さは消えるが、席に座った瞬間、眠気は柊の全てを支配した。それは「うとうと」というようなかわいらしい存在ではない。いつもなら油を注した車輪のように回転する柊の脳味噌にネバネバとした膜を張り、酸素を奪い、頭痛を引き起こし、肩と首を締め付け、瞼と頭が重力に屈服する。眠気は毒素だ。
何とか資料の内容を入力しようとするが、もうモニターを見る目も塞がりそうだった。気力でやろうとしても、この強大な睡魔に打ち勝つためのやる気さえ、眠気が吸収している。
後から気付いたことだが、食べ物の消化のために血液が胃の方に集中するため、脳に酸素が行き渡らなくなり、眠くなってしまうそうだ。柊はデスクワークの女性がほんの少ししか昼食を摂らないことを常々不思議に思っていたが、あれは作戦なのだと痛感した。また、柊が服用している薬全七種類のうち六種類に「この薬には眠気が起こりやすくなる成分が入っています」と記載がある。普通の人より、日中の眠気という悪魔に誘惑されやすいのだ。
気付いたら、柊は眠っていた。目覚めると三時過ぎ。悪魔も少しだけ影を潜め、候補者三名のデータを何とか入力した。先ほどの給与担当者の席を見ると、いない。柊は彼を待ったが、なかなか来ない。またコーヒーを飲みに行く。帰ってきても彼はいない。周囲のメンバーは黙々とデータを入力し、印鑑を押し、紙を折り、作業に没頭している。会話はない。午前中と変わらない。昨日とも変わってない。そういえば、柊が入社した時から風景が変わっていない。また今年は花粉の飛散量が酷いようで、チームのメンバーの半数以上がマスクをかけていた。眼鏡の男性陣などは、みなノーネクタイのシャツ姿なので、区別がつかない。
機械的労働の風景にゾッとした柊は、これは自由時間だと考え直し、地名を検索するなど怪しまれない範囲でネットサーフィンをし、会社支給の文房具を自分の机に結集させ、全てのペンの書き味を試してみたりした。
業務指示者は、他の部署でトラブルがあったらしく、四時半に戻ってきた。柊が指示をもらいに行くと、もう定時近いし、明日の準備をしてくれとのことだった。明日の準備といえば、佐伯が優秀な人材の履歴書をくれるだろう、と想像することくらいだった。あとは眠気対策だ。そう思い、柊は退勤準備をした。そして五時。みんな一斉に退社した。人事部の女性の声が聞こえた。
「こんなんじゃ今日も終電だわ。もう、この会社おかしいでしょ」
柊の会社は、破竹の勢いで採用人数を増やしていた。一方、法定雇用率により、障害者の割合が一定数を下回る会社は、納付金を徴収される。優秀な人間を大量採用するのは良いが、その分会社での業務を遂行出来る障害者手帳保有者を探さなくてはならなかった。佐伯が忙しいのも当然だった。彼女はチームメンバーに仕事を割り振りつつ、外部で「障がい者」採用もこなさねばならないのだ。なおかつ、新しいメンバーが増える度に、そのメンバーが出来る作業を社内で調達して来なければならない。また、人事部の女性がヒステリーを起こすのも当然なのだ。営業や技術者など、所謂「稼ぐ側」は大量採用されてくるのに対して、人事や経理などのバックオフィスの採用はうまく行っていなかったからだ。稼いでくる側に高い給与を払う一方、バックオフィスは派遣社員が三分の一近くを占めていた。仕事が定着しないまま離職する人が多く、結局は正社員にしわ寄せが行く。
誰も悪くなかった。確かに佐伯の指示が的確でないこと、チーム内の連携がうまく行っていないこと、メンバーの業務量が測れていないこと、バックオフィスの人員が不足していること、オフィスの空気が険悪であることは問題だった。だが、この内情を入社後一週間で理解した柊は誰も責める気にならなかった。柊は常に落ち着かなかった。
こんなに忙しい人がいるのに、私は暇で仕方ない。
私はこんな風にしていていいんだろうか。
私は何をしているんだろう。
何かしなきゃいけないのに。
何かって……仕事。でも、仕事もない。
でも雇ってもらえてる。
自分の経歴考えると、雇ってもらえているだけでも充分有り難い。
でも、何のために仕事してるんだろう。
何もしてない自分は、何のために仕事しなきゃいけないんだろう。
何かをしなきゃいけないのに。
何かを成さなきゃいけないのに。
何かって……。
私は何を成したいんだろう。
柊には、やりたいことがあった。映画を撮りたかった。でも、向いていなかった。何も考えないで生きればいいのだと思っても、何の役にも立たない自分が生きることを許せず、自分は死ぬべきだと思って何度も死のうとしても、死ねなかった。とりあえず麗子に迷惑をかけたくなくて食い扶持を稼ぐところまで行ったけれど、それでもまだ何のために生きているのか分からなかった。クズ親父がクズババアに着床させたという理由は分かっても、それを前向きに捉えて生きることの意味がわからない。人生の見通しは、真っ暗というか、無だ。
ラッセルは『怠惰への讃歌』で労働の価値に疑問を投げかけた。柊だって、労働に価値など全く見出せない。そもそも生きること自体に価値を見出せないのだから。だが、柊がいくら仕事をさっさと終わらせて時間を持て余して思索に耽ったとしても、生にまつわる思想を後世に残せるほどの知性はない。せいぜいこの言葉にぶち当たって、悶々とするのが関の山だ。
「私は何のために生きてるんだろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます