改めて辺りを見渡してみる。箱の数はざっと500個くらい。1番大きいもので腰くらいの高さ、小さいもので手に乗るくらいのものか。とりあえず最も色が暗いものを探すことにする。


なぁ、お前の力で箱の位置を整理することは出来ないのか?狙ったのを探すってなると時間がもったいないと思うんだが


それくらいならできるよ。どういう箱を開けたいんだい?


助かる。とりあえず1番色が暗いのを開けようと思う。自殺ってことは嫌なことが原因だと思うから


確かにね。1番暗い色ってなるとこれだよ


俺の潜在意識は両手を合わせて祈るようなポーズをとった。そんなに遠くない場所でカタカタと音が鳴る。音が止んだかと思えば目の前に限りなく黒に近いネイビーの箱が現れた。大きさは膝下くらいか。


これが1番暗い箱だね。開けると意識だけ箱の中に吸い込まれる。そのときの擬似体験ができるんだけど視覚と聴覚以外の感覚はないし、記憶をなぞるだけだから体を動かしたり喋ったりは出来ないからね。もしこれじゃないと思ったら頭の中で僕のこと呼んでくれれば僕が君の意識をこっちに戻すよ


わかった。じゃあ早速開けてみる


箱に手を当ててゆっくりと開ける。意識がまどろんでいき瞼がおもくなる。


これ、が、正解だと、あり、がたい、、


ドサッ


体の力が抜けて箱を抱きかかえる形で倒れこんだ。


よし。行ったようだね。この箱じゃあ納得する確率は低いかな…


箱に倒れている体を優しく持ち上げて仰向けの状態になおす。


ここまではおおむね順調だけど、この後はノープランなんだよねぇ


仰向けの体の横で体育座りになりじっと顔を見つめる。


君のことを僕はよく知ってる。君がなんで自殺を図ったのかも、その原因である喪失した記憶も…


ゆっくりと目をつむり自身の両膝に額をつける。


君をよく知ってるからこそ僕はどうしたらいいかわからない。正義感の強い君は自分の罪を許すことはしない。心の支えになっていたリンとカオルもいない


両膝を抱き背中を丸めて縮こまる。拳を弱々しく握りスーッと目元から涙がこぼれる。


不条理だ…理不尽だ…どうしてこんなに世界は優しくないんだ…


絞り出すかのような消え入りそうな声でつぶやいた。


それでもね


溢れ出た一筋の涙を拭い立ち上がる。


僕は最後まで絶対に諦めない。君が死んでいいわけがない。君は生きてていいってことを解らせてあげる


弱々しく握っていた拳を強く握りしめる。


暗闇だった空間が淡いオレンジ色に染まっていった。

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