第13.5話 天使のひみつ




 グダリエルはお風呂が嫌いです。


 これでもかと丁寧にママはグダリエルを洗いました。

 ごしごし、ごしごしと。

 ごしごしと洗われるのが痛いので、グダリエルはお風呂が嫌いです。

 シャンプーが目に入るのも痛いので嫌いです。


 そして、何よりも嫌いなのは、グダリエルのお腹のひみつを誰かに見られる事でした。


 お腹のひみつを見せると、ママにもパパにも怒られました。




 そんな嫌いなお風呂に、今、魔王の秘書のエンゲに入れられています。

 最初はいやいやと抵抗しましたが、エンゲに無理矢理入れられました。


「…………このお腹のはなんですか?」


 パパとママには誰にも見せてはいけないと言われていた"お腹の模様"。それをエンゲに見られてしまいます。

 また、パパとママに怒られる。そう思って泣きそうになっているグダリエルに、エンゲは優しく微笑んで言いました。


「言いたくない事なんですか?」


 こくりと頷くグダリエル。エンゲは怒らずに言いました。


「じゃあ、言わなくていいですよ。魔王様にも黙っていますから。」


 エンゲがそう言うと、グダリエルはほっと安心しました。

 



 エンゲはグダリエルを洗う間、ウリムベルの話を聞かせてくれました。

 グダリエルの知らない子供の頃のウリムベルのお話でした。

 洗われるのが嫌いなグダリエルでしたが、エンゲの手は優しくて、ほとんど痛いと思いませんでした。

 そして、目に入るのが嫌いなシャンプーも、エンゲのお話に耳を傾けていると、あっという間に終わるようでした。


「続きのお話は……そうですね、今度のお風呂の時にしましょう。」


 グダリエルはお風呂が嫌いです。

 しかし、エンゲがお話をしてくれるのであれば、ほんの少しだけ我慢できると思いました。


 その後もバスタオルでごしごしされるのが嫌で逃げ回ったり、見た事もない熱い風がでるものにびっくりして逃げ回りましたが……。


「良い子にしてたらいいものをあげますよ!」


 それに釣られてグダリエルはエンゲの言う通りにしました。

 身体を拭かれて、髪を熱い風で渇かされながら、櫛をかけられながらグダリエルは聞きます。


「いいものってなに?」

「普段、何もしないでいるのは退屈だったりしませんか?」

「うん。」

「面白い本をあげましょう。」


 ウリムベルのいない時間は退屈でした。本を読もうと思ったけれど、観光ガイドくらいしか読めるものがありませんでした。


「どんなご本?」

「見てのお楽しみです。」


 グダリエルは本を読むのが好きです。自分の知らないお話が好きです。だから、ウリムベルの昔のお話も楽しく聞けました。

 どんな本を見せて貰えるのだろうと、グダリエルは楽しみになりました。


「私が本を見せる事はウリムベルには内緒にしてくださいね。」

「どうして?」


 不思議なお願いにグダリエルが首を傾げます。


「とにかく内緒です。それと、さっきお話ししたウリムベルのお話も内緒です。」


 何が何やら分からないグダリエルでしたが、「うん」と答えます。


「エンゲもぐだのお腹のことはないしょ。ぐだもエンゲのお話はないしょ。」


 エンゲはあっさりグダリエルの話を内緒にしてくれました。

 なので、グダリエルも同じように内緒にしようと思いました。




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