第13話 私を惨めにしなさい
エレステレカはリリアの首を絞めていた。
すぐに顔が赤くなり、青白くなっていく。
周囲から悲鳴が上がり、怒声が聞こえてきた。
リリアは腕は力なく下がり・・・
エレステレカは手の力を緩めた。
「リリア、どうしてあなた、抵抗しないの」
彼女は喉を押さえ咳き込む。
「普通、首を締められれば暴れるわ。なのに、どうして素直に殺されるわけ?」
倒れ伏していたリリアの胸ぐらを掴み、持ち上げる。
「あなた、記憶があるわね」
服の中に隠れていたペンダント、赤い剣がぶら下がっていた。エレステレカは力づくでそれを奪う。
「いえ・・・そう、これはお前の仕業ね」
時間が戻っている2人。
エレステレカは時間が戻る心当たりがない。
それなら、彼女の仕業になる。
「リリア、お前、何をした? リリア!!」
「エレステレカっ!」
彼女は突然掴みかかってきた。
彼女は奪った赤い剣のペンダントを取り返そうとしているようだ。
「返して、ボクは、エレステレカ様のっ、殺した、ボクの、ボクのエレステレカ様!!」
正気を失った力でエレステレカの腕を掴み、皮膚から血が滲み出てくる。
エレステレカは抵抗せず身をゆだねると、彼女はナイフを抜き苦戦しながら胸の制服を切り裂いていく。はっきり言って下からまくり上げた方が早い。
「傷跡はないわよ」
火傷も、何もない。
綺麗な胸を食い入るようにリリアは乳房を見つめ、震え始める。
「き、きれい、だったんです」
虚ろな目から、ボロボロ、ボロボロと涙が零れ落ちてきた。
「何度も、何度も殺されそうになったのに、心からあなたを憎んでいたのに」
炎を背にし、剣を持つあなたは、とても美しかった。
とても美しかった。
「ああ、そうか、そういうことか」
なるほど、それはそうだ、当たり前だ。
このエレステレカが全身全霊でぶつかったのだ。
彼女だって平気なわけがない。
エレステレカは、リリアの涙をぬぐった。
「私のリリア、あなた、壊れてしまったのね」
泣きながら震える彼女を優しく抱きしめ、胸に押し当てた。
それでも、彼女は涙と震えが止まらない。
ああ、聞きたがった声。
見たかった顔。
さすが極上の女、想像以上だ。
今の彼女はヒビだらけのガラス細工、触れるだけで砕け散る。
「私は誇りなさいと言ったのよ」
それならどうしましょうか?
ええ、答えなんて決まっている。
「このエレステレカの全身全霊を打ち破ったのよ」
「ボクは、あなたを、殺した。殺した、殺した」
「ええ、よくぞ殺して見せたわ。完敗よ」
今ならもっと上手にできる。
今後も輝かしい未来に変えることができるだろう。
だけど、あの時、あの瞬間が真骨頂。
あれ以上はない。
「あなたは勝者、この私を倒した勝者なのよ。勝利者は王子さまに抱きしめられて幸せな人生を送らなければいけないのよ。なに壊れてるのよ、許さないわよリリア」
私を惨めにしなさい。
私を笑いなさい。
私が憎しみの炎が吹きあがるほどに繁栄しなさい。
灰の中から、小さな火の芽が生まれた
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