第4話 ニュクス―――再び
初めて見る相手から、謂われなき殺意を向けられるシェラザード。
そして今回、自分の国を滅ぼした者達の前に引き出されるシェラザード。
その
それが「
『汚らわしい魔族め』―――
何を言っているんだ、こいつは……あんたも、魔族の一人じゃないか―――
魔族の一種属である
けれど、シェラザードにはこれと言って人族とは揉めるような覚えが何一つとしてない……その上でも、“別”の意味でも理解はしていました。
けれど……こいつらから感じる雰囲気は判る―――
『ラプラス』―――あいつらと一緒だ!
だとしたらこいつらは……?
そうした疑問も定まらないまま、目の前の“魔族”を害する為に振り上げられる剣―――。
早―――シェラザードの命運、ここに潰えたか……と、そう思われた時。
「―――お待ちになられて下さい……」
「―――どうした……」
「どうやらこの者が『グリマー』のようです。」
「なに―――? こいつが?あの??」
少し知力が高めの存在が、この者達の統率者と見られる男性に対し、自分が上位の人達から呼ばれていた“
『グリマ』―――「躍動せし光」……
しかし?なぜラプラスが自分の事をそう認識するのか。
「一説によると、グリマーはただ殺すだけではその意味を為しません。」
「そうだったな―――ただ殺すだけでは、その特性が中空を舞い、また新たなる可能性を求め依り憑くと……そう教会から聞いている。」
「―――で、あれば……手段は一つ。 その“信念”“信条”、いわゆる『魂の根幹』と言われているものを
「ふむ……ではどうすればいい。」
「手っ取り早い方法といたしましては、その名前を抜き、身分を奴隷にして、この場所に「奴隷市場」を建て、“目玉商品゜”として見世物にするのがよろしいかと……。」
「なるほどな―――『賢者』。 ではその役目は誰にやらせるのがいいか。」
「適任としましては、やはり『魔術師』がよろしいかと―――。
これ、我らが
聞き慣れない言葉―――
『勇者』―――? 『賢者』―――? 『魔術師』―――?
そうした疑問を晴らすのも赦されないままに、シェラザードの全身を激痛が
しかも一旦抜かれた“
恐らくは、このラプラス達の思惑には、魔族如きに自分達の様な絆の繋がりなどない―――ものと思っていた……。
なにしろ魔族は、『悪しき者達』なのだから―――と、
しかしそうした中で『勇者』なる者達の一党が施した策は、
* * * * * * * * * *
そして、これまで自分の身に降りかかった
「ねえ、ササラ……一つ聞いていい?」
「なんでしょう?シェラさん。」(ムヒ?)
「『勇者』『賢者』『魔術師』って言う連中、何者なの?」
シェラザードがその単語を口にした途端、黒キ魔女の
「それを……どこで―――? いえ……まさか―――?」
「エヴァグリムを滅してくれた者達か、どうかまでは判らない……けれど、逃走していた私を捕えたのは、間違いなくそいつらだよ。
けど……その反応―――知っているんだよね?」
「私も……師より聞かされた話の上でしかありませんが、ならば聞かれてみますか? 我が師ジィルガに―――」
「あーーーあの人なあ~~ちょっと苦手なんだけど―――この際仕方ないか……。」
ササラも、その名称だけは知っていた。
けれど詳細までは知らない―――……
だからこそ……
「何用かね?」
美少女の
しかしながらこの魔界に於いて5000年もの歳月を紡ぎ、これまでの
「ほう―――『勇者』……」
「はい―――。」
「ついに、“あやつら”が担ぎ出されて来おったか。」
「“あやつら”―――って?」
「エルフの王女よ……いや、今は違うな―――ではシェラザードよ。 あやつらは
「そう言えば……私の事を『グリマー』って―――」
「やはりな……それで?」
「『勇者』―――って呼ばれてたヤツは、エルフである私の事を魔族ってだけでこの首を刎ねようとした……。
けれど、その事を止めさせ、魂を
実際には、『賢者』ってヤツが言っていたんだけど、あの感じじゃ別の何者かに吹き込まれた―――って感じだったなぁ……。
ねえ―――ジィルガ様、私が『グリマー』って事は、この
けれど、若い二人には耳慣れないモノでも、若くはないこちらにとっては―――
「(……)なあ―――“お客人”? 何か言いたい事でもあるかね。」
「(……)フ・フ・フ―――成る程な、攻め方としては最善の判断だ……。 それに、お前の方でも把握しているのだろう?」
「いや―――“あやつら”の事に関しては、“あやつら”と同じ世界にいた
「ああ……その通りだよ、『
その
“高い”攻撃力―――“高い”防御力―――“高い”魔力に“高い”体力。
それに加え伝説級の武器や防具、優秀に過ぎるスキルを備えた“わたくし”達よりも一等化け物の様な化け物じみた存在……。
『勇者』を筆頭とし、『賢者』『魔術師』『弓兵』『僧侶』『格闘家』『盗賊』など、枚挙するに暇もない―――
ただ……こやつらには“
お前達も考えた事があるか―――造物主を妄信し、狂信した結果どうなるかを……。」
それに先般の侵略の件に於いても、かつての同じ世界の者達を裏切るなどして撃退させる事に手を貸していた……。
ただ、それだけならばまだしも―――
「まあ……その造物主とやらも、“善”であれば―――の話し……なのだがな。」
つづく
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