第3話 王国消滅の経緯

時間を少々さかのぼりり―――

ときはエヴァグリム滅亡の頃まで…………


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突如として、何の前触れもなく“何者”かにより襲撃されてしまったエヴァグリム城、その事に、またもや“あの国”の事が―――と、皆の頭の中をよぎったものでしたが。


違う……アウラはこんな事はしない―――

それに、あの頃から比べると想像以上にこの国はに戻った―――

優れた軍略家であり政治家でもある彼女アウラなら、今この国を攻めるのは自分達の為にもならないことくらい判るはず。

なのだとしたら―――今この城を攻めているヤツ……って、“何者”?



ただ、王女シェラザードだけは姫将軍アウラの可能性を否定していたのです。

そうした疑念もさながらにして何かの対策を練らない事には―――と、今では立派に国王の役割を果たしているセシル……に?



バカな?!もう城門を突破されて、城の第一階層まで侵入を許していると言うの?

信じられない……今の常備兵の練度ならば、アウラ率いる軍団にもこうると言うのに……だとしたら考えられる事は一つのみ、今この城を攻めてきている連中は、エヴァグリムやネガ・バウムの軍団よりも―――強い。


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シェラザードは、魔王カルブンクリスよりの依頼を、仲間達と協力者達の助力を得てこなす事が出来ました。

そしてまた、その成果により破格の報酬を得て、あまつさえ『英雄』として讃えられ、そこでようやくにして自分の願望は叶えられた、しかし自分がかかげていた目標は達せられた……とはしても、彼女自身は元のまま―――今では城から出奔できているとはいえ、彼女はれっきとした『王女様』なのです。


「あ゛あ゛あ゛~~~気が滅入るわあぁぁ……」

「どうかしましたか?シェラザード様。」

「あ~~シルフィ……一応な、私が目標としてかかげていた事は達せられちゃったわけよ、け~ど~なあぁ~~おやぢセシルあのヤローグレヴィールの前で言い切っちゃった訳よ、『目標達しちゃったら戻ります~』って。」



そう……自国に巣食う“身中の蟲”共を退治する為、一時帰国はしたものの、緋鮮の覇王ロード・オブ・ヴァーミリオンやヘレナの手助けもあり、その身柄はまたもや城の外へ……こうして自由は得たものの、依然として『王女』の身分までもは失っておらず、ある機会をして溜まりに溜め込んだ公務を処理する為に再び一時帰国をした王女、そしてまた三度みたび自由の空へとは羽ばたこう―――としたものの、さすがに今度は“手助け”はなく……そうした時に苦肉の策として打ち出したのが、王女自身が最初に目標として掲げていた『英雄に成りたい』―――そしてそれが、紆余曲折うよきょくせつて達せられてしまった。

以前、自分の“身代わり”にと仕立て上げたシルフィに愚痴を垂れていたのは、そうした事でもあったのです。


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けれど今―――王国を襲っている未曽有の危機……

今現在この国を攻めているのが、ダーク・エルフの国『ネガ・バウム』ではないとしたら、この国を奪う事で利を得るのはどこの国か……とも思ってしまったのでしたが、それがふとしたきっかけで知れてしまう―――



えっ―――…………



今現在、エヴァグリムこの国を攻めている“集団”―――



なんで……こいつら―――『ラプラス』が!?



そう……正確を期するなら、この魔界の存在ではなかった者達の仕業、しかも―――



―――ッ!?

今まで見てきた……知ってきたヤツらと明らかに違う!?



自分達が魔王カルブンクリスの依頼により討伐した、その時点でのラプラスを率いていた者―――ただそれでも、『魔獣』であり『人外』の類だった……けれども今、エヴァグリムこの国を攻め立てているのは……


「お父様―――早くお逃げになって!もうこの城は陥落します!!」

「シェラか……いや、逃げるのはお前だけにしなさい。」

「(え?)けど……この国の王たるお父様が―――」

「私はな……シェラ、伯爵の飼い犬だった―――伯爵家の後ろ盾……援助がなければ、我が王家の存続すら危うかったのだ、私が愛した妻―――ヒルデガルドとの政略結婚……あれは、妻ヒルダの行き過ぎた行為を抑制―――或いは監視する為の手立てだったが……私とヒルダは、例え仕組まれたモノ政略結婚であったとしても、愛し合ったものだ。 だが、現実とは非情でな―――愛した女を『殺せ』と、伯爵から命令が下された……そして次には、娘であるお前を『監視せよ』との事だ。 私は……娘であるお前に、父親らしい事は何一つとしてやれていなかった。 しかしな―――シェラ、お前が伯爵たちを粛清してくれたお蔭で、私は自由と成れたのだ、だから今度は、お前が自由になりなさい―――そして、こうしたかたちでしか父親らしさを示せない私を―――……」


今生こんじょうの、精一杯の子への愛情を示して見せた父セシル―――

そしてその意を汲んだものか、シェラザードは涙も見せぬままに父の下を去り―――そして陥落おちゆく城から脱出しようとした道すがら……


「グレヴィール!」

「シェラ様―――お父上は?王はどうなされたのです。」

「おやじは……死を覚悟した―――」

「―――なんと……」

「けれどこれは、おやじが私にくれた最期の時間稼ぎチャンスだ。 だから私は、何がなんでもこの城から脱出し、各地に散らばっているかつての仲間達を集め直す、そこでだ―――あんたも生き延びろ……何が何でも生き延びてみせろ!私の夫になりたければ、せめてそのくらいはやってみせろ!!」

「(―――)判りました。 けれど無理はしないでください、あなた様は私達に残された唯一の希望なのですから。」


こうして―――自分の許嫁いいなずけでもある侯爵グレヴィールと別れ、王女は単身森の中へと潜みました。


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ところが―――……



なんなんだ―――こいつら……

いくらこっちが気配を断って移動したとしても、きっちりと尾行てあとをつけてきてる……

いつもの―――いや、以前私達が相手としていた者達とは、明らかに違う!



シェラザードの生き残り術サバイバルは、不承不承ふしょうぶしょうながらも仲間であるヒヒイロカネやクシナダも認めていた事でした。

高い潜伏能力ハイディングはマナカクリム内でも随一を誇り、そのスキルを多用しての狩猟ハンティング狙撃スナイピングは、最早彼女の代名詞の様なものだった……なのに、この時ばかりは通用しない高い潜伏能力自分のスキル……

そして潜伏場所が割れてしまうと、実にあっけなくシェラザードの身柄は捕らわれてしまったのです。


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その後……自分を虜獲りょかくした者の『責任者』の前に引き出されるシェラザード…そこで見る―――今回自分の国を攻め込んできた者達の正体……

その者の正体とは、外見上みかけのうえではヒヒイロカネやクシナダと、そう違わないように見えました、そう―――この魔界に於いての、最弱種の一つとされている……


「ヒト?人ヒト…ヒト族、だね?あんた達―――」


けれど相手は……一言も返さない―――

ただ、口を真一文字に結び、自分を見下す目も実に憎々しげであった……

けれどシェラザードは初見である者に対し、ここまで嫌われる理由などあろうはずがありませんでした。

しかし―――向こうからの“憎悪”が、次第に伝わって来る……


「汚らわしい魔族め……お前は、魔王にくみする者―――魔族だな。」

「(……)ああ―――そうだよ……それが何だって言うの?第一今の魔王様は……」

「黙れ!!魔王にくみする者は、総て滅するまで!」


自分の言葉を遮られ、突如として謂れのない殺意を向けられたシェラザード……

果たして彼女の運命や―――いかに?




つづく



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