第7話


「なんでこんなのも普通にできないわけ?」


「すいません」


「あなた何年目よ?この仕事辞めたら?普通に考えてできるでしょ。普通出来るから」


 お局の言葉は、私の心を鋭く刺し、ドクドクと濁らせ殺していく。


「す、すいません……」


 心を殺す鋭い言葉の釘は、もう、何本刺さってしまったのだろうか、いや、何百本か、もっとか。

 皆が言う〝普通〟という、当たり前の言葉は、私にとって、毒のように胸を締め付ける凶器だ。

 

 普通ってなんだ、なんなんだ。誰がそんな言葉を作った。誰が決めた。どういう意味なんだ。

 

 私はそんなに普通でないのだろうか。毎日どうして、普通でない事をこんなに責められ続けるのだ。


 どうしてだ。


 そんなにいけない事か。

 

 どうして、勝手に、誰も喜ばぬ普通の線引きなんか引いてしまうんだ。


 この社会は。




 私は今日も、苦しく濁った社会という檻の中で藻掻き続けていた。



 何度目かわからぬ、深夜の残業を、死んだ目で今日もひとり、終わらせるのだ。



 誰も認めてくれない、世界。


 勝手な普通を押し付けられる世界。





 でも、私には彼がいるから。


 だから、生きていけるのだ。

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