第5話 満月

6日目

朝には

彼女は依然と同じような笑顔に戻っていた

昨夜の事がまだ気になるけど

聞いていいものか?

もう過ぎた事なら

聞くべきではないのかもしれない

そう言う風に

自分の中で消化して

昼にかかるころまで

今までと変わらない会話をしていた


窓を開けると

珍しく

彼女が待っていた


「よかった、会えた」


ハルが俺に言った

嬉しかった

俺と会う事を

待っていてくれた

想いが同じに思えた


俺は照れ笑いを浮かべながら


「待っててくれたの?」


そう聞くと

彼女は、にこりと笑って

頷いた


「尚と話ができるの

今夜で最後だから

ちゃんとお礼が言いたかったの」


耳を疑った


”今夜で最後”


急な別れの報告に

俺の心はざわつく


「ありがとう

ココに来てとても寂しかったけど

尚がたくさんお話ししてくれたおかげで

心が楽になれた

楽しかった」


彼女は

この関係のエンディングに向けて話を進める

まだ俺は

頭の整理が付かない


時間はあると思っていた

こんなに早く

別れが来るなんて予想していなかった

だって

会ったばかりだったから・・・


だけど

思い出した


俺は、自分の話しばかりで

彼女の話を聞いてこなかったんだ


聞きたいことは

山ほどあった


何歳なの?

何してるの?

ココにいつからいるの?

いつまでいるの?

ココには何のために来たの?


だけど

舞い上がって

俺の話しばかりして

聞かなかった


固まる俺に

ハルはほほ笑む


今夜は満月


月明かりに映る君は

今日もやっぱり綺麗だった



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