第3話 雨の聖堂
「……と言う
ラティナはついさっき、起きたばかりで朝食を食べに食堂へ来たリゼルにこれまでの
リゼルは「ふーん」とまた眠たそうな顔のまま、チーズ入りの硬いパンとオルタンシアで
「それで…あの……リゼル様はどうしますか?」
「どうするって?」
「私と一緒に
ラティナは付いて来て欲しいと望んでいる目でリゼルを見つめていた。ラティナとしてはリゼルを目の見えない所まで離れるのは色々と不安だと思っているからだ。
「……ん、分かった。一緒に
「ほ、本当ですが」
「ここで待ってもどうせ
(それとラティナは弱いし、へましたら報酬が
リゼルは食堂に着く前、ロトンに出会い、そこで報酬の約束をした。高額の報酬が
「ありがとうございます。リゼル様はやっぱり優しいお
「ん……所でお前のその
「ふぇ? あ~この
今のラティナは、いつもの神官服の上に紺色のマントを
「知事さんに頼まれまして太陽の神官の恰好をしているのです。今、オルタンシアでは伝統の仮面祭がやっておりまして陽光の精霊さんを呼んで天気を晴れにして
「はぁ~
つまり、オーロックの魂胆はラティナの人並み以上の
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ラティナと朝食を食べ終えたリゼルは目的地の聖堂に向けて出発を開始した。
屋敷の外ではロトンが待っていた。
「聖女様、リゼルさん、おはようございます。今日は聖堂まで私が車で案内します。何しろ聖堂は町の外にありますから」
「う~ん……ではお言葉に甘えさせて
「所で聖女様、車酔いの方は大丈夫でしょうか?」
「あ、はい、大丈夫です。酔い止め用の薬、飲んで置きますので」
「それなら心配する必要は無いでしょう。それと今朝、頼まれた物を用意しました」
ロトンは車から花束を取り出し、ラティナに差し出した。
「ありがとうございます」
「
「それは知事さんから次の依頼を受けた後の
リゼルの疑問にラティナは花束が必要な理由を語り始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
話はラティナがオーロックから次の依頼を聞き、承諾した後までに
「あの~知事さん、もう一つお聞ききしたい質問が
「はい、
「この国の教区長はいないのですか?」
教区長とは共和国外、つまり帝国領の容認地帯で
「
「そ…それは……」
ラティナの多くの疑問を解消したい余りの質問責めに圧倒され、オーロックは答えるのも
「実は……教区長を含むこの町の
「えっ?」
町長が重々しい口調で
「ジュリアが呪いにかかる前の日、八日前の夜、聖堂の
「そ…そんな……精霊さんの声を聞き、自然を操る
「
「それで先程の
「ポギーという若者で事故が起きる前の日、薬の材料を取りに
「まさか?」
「あ、いえ…こっちの話です。
そう言ってオーロックの目から涙が流れていた。本当に嬉(うれ)し泣きをする
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……と言う
「そうか……」
「……さぁ、行きましょう。聖堂へ向かい、ディアボロスを浄化して結婚指輪も取り返して、ポギーさんも探しに」
「……目的増えてね?」
こうしてラティナはリゼルと共にロトンが運転する車に乗り、オルタンシアの聖堂へ向かった。
「それにしてもオルタンシアは確かハイドランジアしか咲かないと聞いた
オルタンシアの町中の途中でラティナは花束として束ねられたガリア大陸の春の季節にしか咲ない白い花を見てロトンに聞いた。
「はい。今、帝国では室内の気温を
「ふぁ~それはすごいですね。お日様の光が無くても春の花が育つ
「
「はい、大丈夫です。私に出来る
「いえ、
「ロトンさんの娘さんにですか?」
「私の娘は自分も聖女になりたいと言い出す
「分かりました。私で良ければそのお願い叶えてましょう」
ラティナは仮面越しの笑顔でロトンの願い
「あ、ありがとうございます。娘も絶対に喜ぶと思います」
「喜ぶと
三人を乗せた車はオルタンシアの町を出て雨が降り注ぐ森の中へ走って行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
空は分厚い雲に
オルタンシアの聖堂は雨を防ぐ巨大天幕がある町の中ではなく、町の外に建てられているが、その見た目は雨によって不気味や哀愁を感じさせる物ではなく、壮大な美的印象は損なわれていなかった。
「
ロトンの車によって目的地の前に辿り着いた時、リゼルは、雨に打たれる居心地の良く無さに対しての不満と疑問を
「当時の精霊教会の
リゼルの
「……あそこに指輪を盗んだと言う化物がいるのか?」
聖堂の方に指差しながらロトンに聞くリゼル。
「はい……」
「一体、どんな姿をしていましたか?」
「姿は…白い花嫁のドレスを着ていますが、足が無く…顔も目や鼻が無く…黒い歯が生えた大きな口だけの……恐ろしい姿をしていました……」
ロトンは身を震わせながら化物について説明をする。
「わ、私は、さっきも言った通り、戦いは出来ませんのでお
(……要するに怖いんだな。まぁ、足手
「
「すいません……。ラティナ様、リゼルさん、どうかお気を付けを……」
ロトンは入口の前で待つ
かつて
「
「その
今は
「……いきなり何言ってんだよお前? まさか生きてる奴でもいるんか?」
「いえ、ひょっとしたら教区長さん達が幽霊になってまだここに
「……お前は幽霊が見えるというヤツか。ヤバい
「だって…
「はい。いくら雷に当たって火事になっても
「そうなのか?」
「
「はい。それです」
「そうか…つまり……って誰だ⁉」
いきなり話に割って入った第三者の声がした方向へ向くリゼルとラティナ。向いた先には砕けて壊れた残骸の壁しか見えなかった。
「見えない所から失礼します」
残骸の壁の裏側から
リゼルは隠れては突然現れた銀髪の少女に警戒していつでも硬化して攻撃出来る
「あっ。それは精霊教会の聖印」
金色の十字架に上が緑、右に赤、左に青、下に褐色のガラス玉がそれぞれの色が異なる
「もしや
「はい、お初にかかります聖女ラティナ様。空の国アステリオスから来ましたアリアと申します」
アリアと名乗った銀髪の少女は二人の前に
「アリアちゃんと言いますか。これはどうもご
「私の
「ラティナ様は聖女としても有名ですので」
「
「リゼル・バーンだ」
リゼルを紹介しようとしていたので自分から名乗った。
「アリアちゃんはアステリオスからどうしてここに
「私は巡礼の旅の途中で丁度この場所、オルタンシアの聖堂に
「じゅんれい…て、
リゼルがラティナの耳元に小さな声で聞いた。
「
「十一歳です」
見た目通りだった。
「ふわぁ~、その若さで。もしかしてアリアちゃんは優秀な天才少女とかですか?」
「はい。確かに聖学園に
「すごいですね~。アリアちゃんはまだ子供ですのに」
「いえ、私より幼い頃から
「……でも、私は巡礼の旅は……そ…それよりもさっきの話の続きですかアリアちゃんはここで
「今日、巡礼の旅の途中でオルタンシアに
「気になる
「
「……
「はい。とどのつまり、オルタンシアの
そう言うとアリアの両手の
「それがアリアちゃんの
「はい。これが私の
「あとよみし?」
「その場にある物から答えを導き出すのが得意な
ラティナの問いに
「聖堂の
「では教区長さん達はやはり
「それは
「それは……」
ラティナはアリアに自分達がオルタンシアに来た時、町長の娘が火を噴く奇病にかかり、その人に呪いをかけた犯人が聖堂に立て
「話は良く分かりました。それでは私もラティナ様のお手伝いをします」
「え、お前が仲間になるのか?」
「当然です。私も
「それは心強いです。よろしくお願いしますね、アリアちゃん」
「おい、大丈夫かよ…。知らない奴なんかと一緒で……なんか怪しいぞ……」
リゼルとしてはいきなり現れて同行しようとするアリアの
「私としては
アリアはリゼルの声が聞こえていた
「まぁま……。大丈夫です。アリアちゃんの持っていた聖印は精霊教会の
自信満々の笑顔で答えるラティナ。
「……あ…そう……はぁっ……」
リゼルは肩を落としてため息を吐き、これ以上反論するのを諦めた。
「それでは聖堂の中へ入りましょう、リゼルさん、アリアちゃん」
こうしてラティナとリゼルにアリアと名乗る不思議な少女が仲間に加わり、ディアボロスが住み着いている聖堂へと歩き出した。
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