第1話 雨の国
この地方で一部の関係者を除いた一般の住民達にとっては何百年も雨に打たれ続けながらも
それがある日の夜、突然と光り出した。
異変に気付いたのはこの辺りを担当する管理人の老人。町長からある命令を受けて
光の
管理人が三十歩進んで到着した時、
二人の出現により管理人は驚いて腰を抜かした。
「う~ん…ここは……?」
「ん……な、なんだ⁉ 一体
空間転送による一時的な酔いから立ち直った後、二人は辺りを見回した。
「……な…なんで俺達は…こんな所に?」
「……恐らくこれの
ラティナの右手に持っている鍵、マッド・ハッターから貰(もら)った【
ラティナとリゼルが互いに手を触れた時、【
「お前の
「ち、違います。私の
【
「あ、あの~」
ラティナが行き成りどこかに飛ばされて
「あ、はい」
「あ、あんた達…いや、あなた
「はい。私が……」
「あなたは…もしかして聖女様…ですか?」
「はい、そうですが」
「本物の聖女様ならば背中に翼をお持ちの
「今お見せします」
そう言いつつ、ラティナの背中に聖女にしてエンジェロスの
「お…おぉぅお~‼」
ラティナの光翼を見て大げさな感激の声を上げる。
「ま、間違いなく、あなた様は精霊教会の聖女様‼ お待ちしておりました! 私はここ、オルタンシアの
「分かりました!」
「おいおい……」
詳しい内容も聞かされていないのに一切の迷いも疑いも無く即答に答えるラティナに対して
「お、お~、ありがとうございますじゃ‼ まず、詳しい説明は町長が話します。お呼びしますので
「はい。それではお言葉に甘えさせて頂きます」
「ではこちらへ…あ、雨に濡れますので私の傘をお使い下さい」
「大丈夫です。傘なら代わりに自分の
ラティナは背中の《アンペインローゼ》を傘の形状に変えて右手に持った。
「おぉ~! これが
ラティナが《アンペインローゼ》を具現化する姿を見て管理人は再び感激の声を出した。
「リゼ……」
「いらん」
ラティナが「リゼル様、私と一緒に《アンペインローゼ》に入りませんか」と言う前にリゼルはコートに付いているフードを
「そ…そうですか…」
ラティナはリゼルが断った理由を察した。もしもリゼルが
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
管理人の家に入ったラティナとリゼルは管理人が町長に電話という機械で知らせたから迎えが来るまで中に待つ
「どうやら私達が飛ばされたこの場所はオルタンシアで間違いありませんね」
管理人の妻が用意してくれた
「どういう場所だ、ここ?」
「分かりやすい様に地図を見せて説明しますね」
ラティナは背中に背負っていた【
「この地図に描かれている大陸の名は“ガリア”。今、私達が
地図に描かれたガリア大陸の南の辺りに指を差すラティナ。
「雨の国……」
「はい、オルタンシアは一年でほとんど雨が降りっぱなしの地方国なのです」
窓の外を見た。外は今も空から雨が降っていて
「へー」
リゼルは理解した
「はい、オルタンシアは一年でほとんど雨が降りっぱなしの地方国なのです」
リゼルは窓の外を見た。
外は今も空から雨が降っていて
「へー……」
リゼルは理解したらしく納得の声を出し、木製のテーブルの上に腕を組んで乗せた。その時にラティナはリゼルの左手を見てある
「あれ? リゼル様、その左手どうかしましたか?」
「ん? 左手?」
「はい。リゼル様の左手の甲に赤い丸の紋様みたいなものがあります。前の時はありませんでしたが……。
ラティナの言う通り、リゼルの左手の甲に三日前には無かった血で塗られた
「あ~、これ……。俺も気付いたらいつの間にか付いていたんだ……」
「大丈夫ですか?」
「別に問題無い。気にすんな。……それより、
リゼルは警戒していた。聖女の
「そうですね……。分かりました、リゼルさん……」
ラティナはリゼルの左手の紋章の
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
管理人の家で待って十分後、町の方から迎えが来た。
「お待たせしました、私は役所で働いている職員のロトンと申します。知事の
ラティナとリゼルに笑顔で
「ちじ?」
「確か帝国から国の統括を任された国一番偉い人の
リゼルの疑問にラティナが解説する。
「はい、その通りです。本当は町長ですが何しろこの国はオルタンシアの町しかありませんので知事も兼任されています。それで
「はい。私がプランタンの聖女のラティナ・ベルディーヌです」
「ああ、
「証拠の翼を見せた方が
「大丈夫です。ラティナ様の
(ふ~ん、こいつって思ってた以上に有名人なのか)
「それで、あの……そちらの
ロトンは今度、ラティナからリゼルの
「ん? ああ、俺? リゼル……」
「えぇ⁉」
リゼル自身が名乗った名を聞いてロトンは目を丸くして驚いた。
「リゼル・バーン……です」
「へ? あ…もしかして“
「はい」
「リ…リゼルさんは“
「ラティナ様と同じ
「…はい…、間違いありません……」
「し、失礼しました!」
ロトンはリゼルに頭を深く下げて
「なんだよ……。俺……怪しまれているのか?」
「リゼルさんは目付きが悪いですからじゃないでしょうか?」
「うるせーよ……」
ラティナがリゼルの怪しまれる理由の結論を言った
(それだけではありませんが……)
この時、ロトンはリゼルのみならず常識が足りなそうなラティナにも不安と疑いを感じた。
ラティナがリゼルのどこからどう見ても悪そうな恰好に対して突っ込まないのは、彼が好き好んで着た服装だと思っているからだ。
実の所、共和国領の
「さ…さぁ、知事はこの先にあるオルタンシアの町の屋敷でお待ちしています。詳しい依頼内容は知事が説明します。ささ、こちらへお乗り下さい」
「ふわぁ~これが“じどうしゃ”ですか~。私、乗るのは初めてです。聞いた通り、この乗り物は牛さんや馬さんが引っ張っている訳ではないのに一人走るのですね、リゼルさん」
窓から移り行く光景を後部の座席に座って眺めながら生まれて初めて乗った自動車に目を輝かせて子供みたいに無邪気に興奮するラティナ。
「田舎者かよ……」
「あはは……確かに共和国領では見た
前部に運転しているロトンは無邪気なラティナの声を聴いて
「それにしても……本当にここは年中雨降りっぱなしなのか?」
窓から空から降り続ける雨の森を見てリゼルは
「ほとんどですので晴れる日も
解説するラティナの口調が徐々に歯切れが悪くなって来た。
「おい……」
ラティナの顔が見ると青くなっていた。
「うっぷ……すいません……。何だが……気分が……悪く……なって来まし……た……」
車酔いになっていた。
「こ、ここで吐くなよ⁉」
「い、今、速度を上げますからもう少しだけ
ロトンは走っている車の速度を加速させた。
(本当に大丈夫かな、この人達は~⁉)
ロトンはラティナとリゼルに対する不安さを思い出し、頭に痛みを感じた。
◇ ◇ ◇ ◇
車の走る速度を上げてからしばらくすると巨大な傘が見えて来た。ラティナ達は雨の国の中心地、オルタンシアの町へと辿り着いた。
遠くから見ればその姿は
案内人のロトンが運転するラティナ一行が乗せた車は町の中心地、巨大天幕の中心でもあり、それを支える
「うう~……やっと着きました~」
慣れない車から解放され、ラティナは酔いから気を落ち着かせようと、取り
オルタンシアは明るい。今の時間帯は夜でもあるが雨を降らす雲の影響でこの国は常に暗い。しかし、この町は明るい。その理由は建物の窓から
驚きながらも感激するラティナの言葉を聞いて上へ見上げるとリゼルもあるものを見て驚いた。
オルタンシアの町の空を
「
「その通り。ようこそ、オルタンシアへ!」
突然、声が聞こえた。ラティナの耳には喜びで
上空の人工の星空に目が奪われる
「お待ちしておりました、聖女ラティナ様と従者の
オーロック・クラインと名乗った男は右手を胸の下に置き、
「ささ、まずは家にお入り下さい。話は歩きながらになってしまいますが、今、どうしてもラティナ様に
「急ぎですか? 分かりました。行きましょう、リゼルさん」
「こちらへ……」
ラティナとリゼルはオーロックに案内されて屋敷の中に入った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
屋敷の主であるオーロックを先頭にラティナ達は豪華そうな油絵や壺、鎧等の
「それで私に治して欲しい人というのはどんな人ですか?」
「それは私の娘です。私の娘が医者ではどうにもならない奇病にかかってしまいました……」
「奇病ですか?」
「はい……それは医者も
オーロック知事の案内により、ラティナとリゼルは依頼人の娘が
「ジュリアの
オーロックはヘルメットを
「お変わりはありません……。熱の方は上がっておらず悪化になっていませんが、
「え?
「そうか……それではお
疑問符を浮かべたラティナが質問をする前にオーロックがドアノブに手をかけてドアを開けた。
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